当主継承編 真実
「お前の目的はなんだ?」
悠美にそう聞かれ、充はふっと笑い言う。
「復讐だよ!! 僕の家族を殺したお前ら皇宮の人間に対するね!!」
充の言葉を聞き、悠美は顔を顰める。
先ほども言っていた、皇宮の人間に殺されたと言う事。
それが引っ掛かり、悠美は更に充に問いかける。
「さっきも言っていたけど、皇宮の人間に殺されたと言うのは? 何のことを言っているんだ?」
そう問いかける悠美に、苛立ちを隠せない様子の充。
「……お前は何も知らないんだな」とボソッと呟いたかと思えば、悠美の事を睨みつけ言う。
「僕が五歳の時だ」
その日、いつものように家で、母親と父親が仕事から帰って来るのを待っていた充。
だが、いつもの時間になっても帰って来ず、心配していたところ、誰かが家にやって来たのだ。
しばらく、その相手と母親は話しており、母親の「そんな……!」と言う大きな声がしたので、充は玄関へと見に行く。
そこには、一人の刀を腰に差したこの辺では似つかわしくないような、綺麗な着物を着た男性と、そんな男性の前で項垂れるようにその場に座り込み、まるで子どものように泣きじゃくる母親の姿があった。
その男は、充の方に視線をやると、母親に何かを言い家から出て行った。
その後落ち着いた母親に話を聞いた充。
最近、巷でとある植物が流行っていた。
その植物は、摂取すると高揚感で体が包まれると言う物らしい。
だがそれは、人体に悪い影響をもたらす物でもあったらしく、それを摂取することで、とある者はまるで獣のように凶暴化し、とある者は突如自決したと言う。
その事が皇宮でも問題になり、皇帝はその植物を全て回収させ、栽培を禁じた。
だが、それを守るどころか、陰でこそこそと栽培し、あろう事か高値で取り引きする者が出て来た。
そして、今朝、皇帝含め皇宮警備隊は、組織レベルでその植物を密輸と売買している者たちを、一人残らず斬り殺したのだ。
その密輸と売買が行われていたのは、普通の町の団子屋で、たまたま団子を買いに来ていた充の父親が、殺されたとのことだった。
父親、そして夫を亡くしたため、母親は毎日、朝早くから夜遅くまで働いた。
だが、今の世の中、女性が子どもを食べさせていけるほどのお金は、どう頑張っても貰えなかった。
父親が死んでから数年経ったある日、母親は、その辺りで有名なお金持ちの男に求婚をされた。
その男は、母親と二十も離れていたため、充はその結婚を反対した。
だが、お金に困っている事や、充の事を脅され母親は、その結婚を承諾した。
のはいいものの、毎日、その男から暴力を振るわれ、家の者からは犯罪者の嫁だと嫌がらせを受けた。
そして、母親は心を病み、体を壊し、町のお医者さんの元で暮らすこととなり、一ヶ月前、亡くなったのだ。
◇
充の話を聞いた悠美は、言葉を詰まらせる。
その植物の密輸、売買の件は、多くの犠牲者を出しここ最近で、最も大きな事件だった事から、悠美も話を聞かされていたからだ。
「それからあの事件に関わっていた者たちの身内が、皇宮の奴らに復讐するために集まったってわけ」
「まぁ、僕とは違って他の奴らの父親は、本当にその植物を密輸して売買してたらしいし、父親を殺され貧しい生活をしなくちゃならなくなったのは自業自得だけど」
近くで充の話を聞いていた仁柊は「その件の身内らに、陛下は生活に困らないよう支援をしているはず。一部の者はその支援を受け取らなかったと聞いたが……それがお前たちなのか」と言う。
仁柊の言うとおり、皇帝は家族に罪はないと、貧しい思いをさせないため、残された家族らに支援をし、今もそれは続いているのだ。
「陛下はお前らに慈悲をかけ、支援をすると言ったのに、それを断り、逆恨みをしてまた人を殺そうとするとは……哀れだな」
仁柊の言葉に充は「こいつらはな!! 僕の父は、勘違いで殺されたんだ!! 父のことを殺した奴に何で支援してもらわなければならないんだ!!」と激怒する。
その時、何処からか笑い声が聞こえて来た。
そちらを見てみると、証言のため、捉えた男がおり、ゲラゲラと充を見て笑っていた。
そんな男に充は「何がおかしい?」と睨みつける。
「いや……嘘を信じ続けてるお前を見たら、笑いが止まらなくなっただけだ」
「嘘?」
充は更に、男を睨みつける。
すると、男は君の悪い笑みを浮かべ言う。
「お前の父親は、たまたま団子屋にいたんじゃない。植物を密輸し、売買するためにいたってな」
「は……?」
男の話に充は目を見開く。
そんな男に悠美は「どう言うことだ?」と問いかける。
「そのままの意味さ。こいつの父親は、俺たちの父親と同様、植物を密輸し売買していたんだ。それどころか、その密輸と売買をし始めたのはこいつの父親だぜ?」
男の言葉に悠美らは驚き充を見る。
充は信じられないのか「嘘だ……だって母さんは……!!」と言う。
「嘘じゃねぇよ。お前の母親がお前に本当のことを教えないために咄嗟についた嘘だったんだよ。俺たちの間では周知の事実だぜ?俺たちの父親は雇われてただけだけど、お前の父親は首謀犯だからお前の父親はどうしょうもない極悪人だってな」
そう笑う男に仁柊は刀を向ける。
「馬鹿げたことを言うのも大概にしろ。我々からすれば首謀犯だろうが雇われていようが、悪人には変わりない」
「おー怖」
その時、充が何か呟いた気がした。
かと思えば「そんなわけない!!」と叫ぶと、悠美目掛け走り出す。
仁柊は悠美の前に立つも、刀を構えるのが間に合わない。
そう思った時、充の動きが突如止まり、その場に倒れ込む。
その後ろには、息が上がり、焦った表情を浮かべる心温がいた。
心温の手には刀が握られており、刀の先は血で濡れている。
どうやら、間一髪のところで心温が充の背中を刺したらしい。
そのおかげで仁柊も悠美も怪我をすることはなかった。




