当主継承編 皇都へとー2ー
「それでは師匠。私や花都がいないからと言って、お酒は飲みすぎないようにして下さいね」
皇宮へと立つ日になり、泉凪たちの元にはハナだけではなく、月花の郷の人たちも集まっていた。
泉凪が一番心配していることを、ハナに告げるとハナは「その言い方では師匠がまるで大酒飲みみたいではないか。誤解を招くからやめなさい」と返す。
「何を今更隠しているのですか。師匠が大酒飲みなことくらい、郷の皆んなは知っています」
「何? 師匠はそんなに有名であったか」
「大酒飲みとしてですよ」
ふざけた事ばかりを言うハナに、冷静に返す泉凪、そんな二人を呆れながら側で見る花都。
その光景は見慣れたものだが、そのやり取りは郷の人たちからしたら平和な証拠で、自然と皆笑みを浮かべている。
月花の郷が滅ぼされた時、郷を離れていたものたちが郷に戻ってき、人数は少ないが皆で協力し合いながら郷を立て直してきた。
泉凪や花都のことも幼い頃から面倒を見ており、月花の郷の者たちは、まるで本当の家族ように強い絆で結ばれているのだ。
「大丈夫よ、泉凪ちゃん。お師匠さんのことは私たちがきちんと、見とくから」
「そうそう。だから心配しないで行っといで」
郷の人たちの言葉にハナは「やれやれ……一体師匠のことをなんだと思っているのやら。私は子どもではないんですよ。」と眉を八の字にする。
「何言ってるの! お師匠さんも私たちからしたら子どものようなもんよ!」
「そうよ!」
ハナと郷の人たちのやりとりを見た泉凪と花都は、お互い顔を見合わせ笑う。
「それでは師匠、皆んな。行ってきます」
泉凪の言葉に続け、花都は皆んなに頭を下げ挨拶をする。
そんな二人に、郷の人たちやハナは「気をつけてね!」「元気にやるんだぞ!」と手を振り見送る。
二人はこれから約一週間ほどかけ、神守の国の真ん中にある皇宮へと向かう。
◇
「ここの拝謁室の壁はいつ見てもやはり地味だなぁ!」
神守の国の皇都の真ん中に聳え立つ、城、神守城。
その中の拝謁室に、各家の神力を持つ者たちが、座学を行うため集まっていた。
やはり、神力を持つだけあるのか、皆、只者ではないと言う事が雰囲気だけで伝わってくる。
一人の黒に近い茶色の髪をした者の発した大きな声に、そのものを取り巻いている者たちはガハハッと大口を開け笑う。
その様はとても品が良いと言えるものではない。
どうやらその者たちは神力を持つ者たちらしく、皆に聞こえるように大きな声で「我々のような神に選ばれし者を招くのであれば、やはりもっと派手ではないとな!」と威張っている。
そんな男たちに一人の白銀色の長い髪を、頭の高い位置で一つに束ねた男性が近づき声をかける。
「これはこれは。地星の若君じゃないか」
「あぁ?」
「あまりにも騒がしいから、どこかの非常識な者が拝謁室に猿でも連れてきたのかと思ったのだけれど、どうやら違ったみたいだね」
そう言って笑う白銀色の髪の男性。
美しい白銀色の髪がよく似合う、まるで女性のような可愛いらしい顔立ちから想像できないほど、棘のある言葉を吐く。
皮肉を言われ、肩を振るわせ怒っているのかと思えば、何も言い返さずに「行くぞ」と取り巻きに声をかけどこかへ行ってしまった。
「全く……神聖な場所をなんだと思っているんだか」
白銀の男性は手に持つ扇子を広げ、口元にもってゆき、そそくさと逃げる地星の若様の背中を見ながらそう呟く。
その時、どこからか「記念すべき日の朝から神力者同士が揉めてしまうんじゃないかとヒヤヒヤしたよ」と男性の声が聞こえてきた。




