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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 約束

 


 今日もまた、いつものように充に会いに、馬小屋へと向かう悠美。


 だが、今日はやる事が多くあり(いつもより、遅くなってしまったな……)と駆け足で馬小屋へと向かう。




 馬小屋へとやって来ると、馬小屋の付近にある、木でできた柵に充が腰をかけており、そんな充を見つけた途端、笑顔を浮かべる悠美。


 「充!」と嬉しそうに声をかけようとした悠美だが、充の表情を見て声をかけるのをやめ、動かしていた足を止める。



 充は、ただ黙って空を見上げており、その表情はいつもの穏やかに笑う充とは違い、何処か大人びて、それでいて何処か思い詰めた表情だった。


 その瞬間、強い風が吹き、悠美と充の髪を揺らす。



 充は、風から顔を庇うように、顔を手で覆うと、ふと悠美と目が合う。


 すると、先ほどの何処か大人びて思い詰めた表情とは違った、いつもの年相応な笑みを浮かべ「悠美」と名を呼ぶ。



 充に名を呼ばれた悠美は、一瞬、何か言おうとするも言葉を飲み込み「おはよう、充」と充の元に駆け寄る。




 「おはようって、もうお昼だよ」




 そう言って可笑しそうに笑う充を見て、いつもの充だと、安心する悠美。




 「中々、師範が部屋から出て行かなくて、宮を脱走できなかったんだ。もっと早く来るつもりだったのに」




 いたずらっ子なような笑みを浮かべながら、そう言う悠美に、クスッと笑いながら「悠美がいつも脱走するから、見張られてたんじゃない?」と言う。




 「今日は何する? 皇宮探検は昨日やったし、おやつにはまだ早いし」


 


 充と何をして遊ぶか、真剣に考える悠美。


 そんな悠美を見た充は「……今日は、ゆったりとしながら話でもしていようよ」と提案する。


 悠美は「いいな」と頷く。




 二人は、木でできた柵に並んで腰をかける。


 優しい風が吹き、陽の光もあたり、心地よい空気が流れる。




 「何だか眠くなって来るな」




 悠美はそう言って目を閉じる。


 そんな悠美を見た充は、優しく笑みを浮かべ「ちょうど一週間前、悠美とここで会ったんだよね」と言う。



 だが、悠美は「そうだっけ?」と返す。




 「何だかもっと長く一緒にいたような気がするよ」


 「確かに」


 


 充はそう言って、話を続ける。




 「初めはね、皇宮で働く人や皇族や神力者は皆んな、傲慢で自分勝手な人が多いんだって思ってたんだ」




 突然の充の告白に、悠美は目をまんまるにして驚く。


 そんな悠美に「驚きすぎだよ」と笑う充。




 「いや……あまりにも悪い印象だったから。まぁ仕方がない事だけど」




 そう言って苦笑いを浮かべる悠美。


 充は、ははっと笑うと「でも」と話を続ける。




 「悠美と馬小屋の前で出会って、泥だらけなのにも関わらず、僕の手を取って立たせてくれて、手当てもしてくれた。その時、こう言う人もいるんだ。悪い人ばかりじゃないんだって思ったんだ」




 そう真っ直ぐ悠美を見て、笑みを浮かべる充。


 「悠美と出会ったことで、考えが変わったんだよ」と続ける充。


 そんな充に悠美は「充……」と呟く。




 「悠美と出会って毎日本当に楽しかったよ」


 「あぁ、僕もだ」




 そう言って笑う悠美。


 そんな悠美が、充には眩しく、太陽のように見えた。







 「もう宮に戻らなきゃ」




 陽が落ちかけ、悠美は宮に戻る時間になったので、充にそう言うと、充は「そうだ」と言う。




 「今日の夜、宮を抜け出せないかな?」




 突然の言葉に悠美は「宮を……? 何で?」と聞く。


 充は「悠美に見せたいものがあって……塀の外なんだけど、だめかな?」と言う。




 悠美は、基本、夜に宮を抜けること、ましてや塀の外に出ることは許されていない。


 なので、断らなければならないのだが、その時の悠美は充が初めて自分に頼み事してくれたのが嬉しく、そして、充が自分に見せたいものが、どんなものなのか見てみたいと言う気持ちが勝ち、承諾してしまったのだ。




 「じゃあ今晩、この馬小屋に集合ね」


 


 悠美は頷くと「また後で!」と宮へと帰って行く。


 そんな悠美の後ろ姿を、充は見えなくなるまで見つめていた。



 その表情は、何処か辛そうな、だが覚悟を決めたような表情だった。

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