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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 少し気になるな

 


 その日も、馬小屋に遊びに来ていた悠美。


 楽しそうに、充と談笑していると「悠美」と名を呼ぶ声がした。



 その声に悠美は、嫌そうな表情を浮かべると「心温。また来たのか」と目の前に立つ、心温にそう言う。




 「また来たのかって、もう直ぐ稽古の時間だからな。帰るぞ」




 何日か充がいる馬小屋へと通っていたところ、いつの間にか心温にその事がバレており、稽古や食事の時間になれば、こうして心温が馬小屋まで迎えに来るようになったのだ。




 「今日の稽古は休む。」




 そう言って、馬小屋から離れようとしない悠美。


 そんな悠美に「だーめーだ!」と怒る心温。




 「悠美、稽古は休まずに行った方がいいんじゃないかな?」




 悠美と心温のやり取りを見ていた充は、悠美をそう説得する。


 だが、悠美は「嫌だ」と決して動こうとはしない。



 そんな悠美に困り果てる心温は「困ったな……今日の稽古は、他の神力者方も来られるのに」と呟く。


 その言葉を聞いた途端、先まで意地でも戻ろうとしなかった悠美が「月花の姫君も来るんだった」と言うと「稽古に行ってくるよ、充」と充に手を振る。



 その代わりように心温は「えぇ……」と驚く。


 そんな心温に「早く行こう、心温」と言い走り出す悠美。




 「あ。走るな、悠美!」




 心温はそう言うと、駆け足で悠美の後を追う。


 そんな二人を見送る充の表情は、何処か曇って見えた。







 「陛下、少しお話よろしいでしょうか?」




 皇帝の執務室へとやって来た皇后は、何処か真剣な面持ちで、執務椅子に座る皇帝にそう問いかける。


 皇帝は、動かしていた手を止め、皇后の方を向くと「どうした? そんな怖い顔をして」と優しい笑みを浮かべる。


 

 そんな皇帝に皇后は「そんなに怖い顔をしていましたか」と頬に手をやる。




 「あぁ、珍しくな。話してみろ、美桜」




 そう言う皇帝に皇后は頷き、執務室へとやって来た要件を話す。




 『あ。走るな、悠美!』




 そう言って、駆け足で悠美の事を追い掛ける心温と、その先を走る悠美の姿を見つけた皇后は、立ち止まり微笑ましそうにその光景を見ていた。


 すると、その近くで二人のことを同じく見ている少年がいた。



 確か、心温が言っていた最近、悠美と仲良くしてくれている男の子がいると言っていた事を思い出す皇后。



 彼の事なのかと、その少年に皇后は声をかけようとしたがやめる。




 何故なら、少年の悠美らを見る表情が、何処か曇って見えたからだ。


 少年は、悠美らが見えなくなると、そっと馬小屋へと入って行く。



 そんな少年に皇后は何故か違和感を覚えた。




 『おい、聞いたか? 昨晩この馬小屋の塀の裏から、人の声がしたらしいぞ』


 『人の声って、ただ単に誰かいたんじゃないのか?』


 『何言ってんだ! 馬小屋の塀の裏は普段は人が寄りつかないんだぞ。絶対幽霊かなんかだって!』


 『はぁ? 幽霊?』




 そう大声で話をしながら、馬小屋へとやって来た馬丁の男性二人組。


 そんな二人に皇后は『すみません』と声をかける。



 突如、皇后に声をかけられた男性らは『こ、皇后様……!!』と今にも腰を抜かしそうな勢いで驚く。




 「……それから、馬丁の方と心温にも少年について、話を聞いて見ましたが詳しい事は分からないそうで」




 皇后の話を聞き、皇帝は「なるほど。少し気になるな」と顎に手をやる。




 「皇后がそこまで気にするのは初めてだしな。仁柊に調べてもらおう。私も、時間がある時に馬小屋へと顔を出してみる」




 皇帝はそう言うと「早速、仁柊に頼むか」と立ち上がる。


 何かお願いや、不安な事を言えば直ぐに行動してくれる皇帝。


 そんな皇帝に皇后は「ありがとうございます、陛下」と礼を言う。



 だが、皇帝は「礼を言うのは私の方だ。よく悠美や皇宮内の事を見ていてくれてありがとう。いつも助けられている」と笑みを浮かべる。


 素直にお礼を言われ、皇后は嬉しそうに「いえ……陛下のお役に立てて、幸いです」と言う。

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