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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 馬丁の少年



 「本当に、この作戦でうまく行くのか?」




 襖は開ききり、何畳にも広がる畳の部屋。


 そこでは数人の屈強な、お世辞にも綺麗とは言えないボロボロになった服を着た男性と、そんな男性たちとは逆に、品があり華やかな着物を見に纏い、すらっと背筋の伸び、艶やかな髪が美しく伸びた男性が何やら話をしていた。



 屈強な男性たちの真ん中に座る男性の問いかけに、品のある男性は「もちろんです。何せ、私が考えたのですから」と穏やかに笑う。


 

 穏やかな口調に、ゆったりと丁寧な仕草、そして、野心がこもった瞳。


 そのどれもが、この人が言う事なら〝絶対大丈夫〟と思わせる。



 そんな魅力が彼にはあった。




 「にしても、何であんた見ないな人が、俺たちみたいなのに手を貸してくれるんだ?」




 不思議そうにそう尋ねる屈強な男性。


 そんな彼の問いに、品のある男性は言う。




 「ここ数百年もの間、皇帝の座には火翠の者が就いています。つまり、同じような考えの者がずっと国のトップにいると言う事。そうなれば、同じ政治しかせず、国内の問題になっている事は一向に改善しません」


 「例えば、あなた方のような貧しい方達がいつまでも貧しい生活をしなくてはならない、とか」




 品のある男性の話を聞き、屈強な男性たちは「そうだ! 火翠が皇帝の座に着くようになってから、俺らみたいな奴は貧しい思いをしなくちゃならなくなったんだ!」と激しく同意する。




 「やっぱり、神力者の中で俺たちのことをよく、考えてくれているのは貴方だけだ!!」




 そう興奮気味に話す屈強な男性。


 ちょうどその時、何処からか「父上」と幼い子どもの声が聞こえて来た。



 声のした方を振り返っては「おや、若菜。どうしました?」と穏やかな口調で子どもに問いかける品のある男性。



 少し暗めの灰茶色の長い髪をし、幼いながらも知性を感じられる彼は、幼い頃の地星若菜。


 そんな若菜は、部屋に入ってくるなり「当主様が来られました」と品のある男性に伝える。




 「わざわざ伝えに来てくれたのですか? ありがとうございます、若菜」




 品のある男性はそう言うと、屈強な男性たちに「と言うわけで、決行は一週間後に致しましょう」と言う。




 「一週間後!? 早くはないか?」


 


 そう驚く屈強な男性たち。


 そんな男性らに品のある男性は、ふふっと笑みを浮かべる。




 「一週間後は丁度、月花家ご当主様の命日で、陛下は月花の郷にある、ご当主様のお墓へと行かれます。つまり、陛下が直ぐに戻ってくる心配はないと言うこと」


 


 そう言う品のある男性の話を聞いてもなお、何処か納得のいっていない表情を浮かべる男性たち。


 そんな彼らに品のある男性は、諭すように言う。




 「そんなに怖がらなくても大丈夫。何せこの私が大丈夫と言うのですから。この、地星家副当主である地星夏彦ちせいなつひこが」







 「やっと心温を撒くことができた」




 その日も、宮から脱走していた悠美。


 しつこく追いかけて来た心温の事を、何とか撒くことができ、足軽々に本宮内を散策する。




 (そう言えば、父上が新しい馬を宮に迎えたと言っていたな)




 ふとそのような事を思い出すと、普段は大して興味がないが、何故かその日は興味を惹かれ、馬を見に行くため馬小屋へと足を進める。




 「ゆ、悠美様! このような場所にどうされたのですか?」




 突如現れた悠美に驚きが隠せない様子の、三十代くらいの男性の馬丁ばてい


 そんな馬丁の男性に、悠美は新しく入って来た馬を見せてくれと頼もうとした時だった。




 「わっ!!」




 突如、そのような声がしたかと思えば、悠美の目の前で一人の少年が、思いっきり転け、手に持っていた桶の水がその場に溢れる。


 その少年は「やっちゃった……」と泥まみれになった自身の、体を見、立ちあがろうとする。



 だが、転けた場所に丁度、石があり膝を擦りむき痛みから立ち上がれなくなる。


 その時、少年の目の前に小さな手が差し出され、少年は驚き顔を上げる。



 そこには、心配そうな表情を浮かべた悠美がおり「大丈夫か?」と手を伸ばしている。


 そんな悠美を見た馬丁は「い、いけません! 悠美様! お手が汚れてしまいます……!」と言いかけたが、男の子は差し出された悠美の手を取り馬丁は「直ぐに拭くものを……!」と血相を変える。




 「そんなに慌てなくとも大丈夫だ。それより、彼の手当てが先だ」




 自身の手が汚れることも厭わず、それでいて、怪我の手当てを優先させる悠美を見た少年は、驚いた表情を浮かべ悠美を見つめている。


 そんな彼に、悠美は「手当てをしに行くぞ」とまたしても、汚れる事は全く気に留めず、少年の手を引くのだった。

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