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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 借りは返したよ

 


「悠美さんと一緒に回っていたんだね!」




 心大は、泉凪達の元にやってくると、何やら両手に大量の食べ物を持ちながら、泉凪と悠美を見てそう言う。


 そんな心大の言葉に頷き「心大は、千季と回っていたんだね」と返す。




 「ううん。僕と千季さんは、ついさっきそこで会ったんだよ! 僕も千季さんも、従者と一緒に回っていて……」




 「ほら! あそこに僕たちの従者が!」と後ろを振り返る心大。


 その視線の先には、心大の従者と、千季の従者がこちらに向かって来ていた。




 泉凪は、なるほど。と頷くと「ところで……」と心大の手元を見る。




 「凄い、食べ物の数だね。それ全部買ったの?」


 「そうなんだ! 見つけたら皆さんにも、あげようと思って」




 そう言う心大に続け、千季は自身が手に持つ大量の食べ物を見せながら「因みに、僕が持ってるのも全部心大がくれたものだよ」と笑う。


 そんな千季の手元を見ながら悠美は「そんなに食べられるのか?」と尋ねる。




 「流石にこれ全部は無理かなぁ……あ、そうだ。これを悠美にあげるよ」


 「あげるってこれ、お前が苦手なものだろ」




 そうわちゃわちゃと騒ぐ悠美と千季。


 例の鍾乳洞の一件以来、何だか距離が少し近くなったような気がする二人。



 互いのことを、名前で呼び合うくらいには親しくなったのだ。




 「そうだ。悠美に良い物をあげよう」




 千季はそう言って、千季達の元にやって来た、自身の従者の方を振り返る。


 そんな千季に悠美は「どうせ、苦手な食べ物だろ」と呆れた様に言う。


 悠美の言葉を聞いた千季は「疑い深いなぁ、悠美は」と言い、悠美は「日頃の行いのせいだ」と返す。




 「今度は本当に良い物だよ。泉凪もおいで」




 そう、心大と話す泉凪にも声をかける千季。


 「どうぞ」と泉凪と悠美に出されたものは、桜の形をした饅頭だった。




 「桜の形だ。可愛いね」




 泉凪はそう言って、もらった饅頭をじっと見つめる。


 そんな泉凪の饅頭を見た心大は「あ、それ。僕もさっき、千季さんから貰ったよ」と嬉しそうに話す。




 「可愛いでしょ? これを見た瞬間、泉凪が好きそうだなって思って買ったんだ。ついでに皆んなにも渡そうと思って」




 そう言う千季に「私たちはついでか」とつっこむ悠美。




 泉凪は、植物の神力を使うため、花などを模した物には目がないのだ。


 千季の言う通り、泉凪は嬉しそうに饅頭を見つめると、千季の方を見て「ありがとう、千季」と笑みを浮かべる。



 そんな泉凪に、一瞬、ドキッと心臓が鳴るも平常心を装い「どういたしまして」と千季は笑みを浮かべる。







 しばらく、千季と心大と屋台を見て回っていた泉凪たち。


 だが、泉凪はある事を思い出し、悠美に「そう言えば、何処かに行きたいと言っていたけど、いいの?」と耳打ちをする。



 千季らと会う前に、悠美は泉凪に「一緒に行きたい場所がある」と言っていたのだ。


 だが、泉凪と秋月夜の会を回れて楽しそうにする心大を見た悠美は、どうしようかと悩む。



 すると、泉凪たちの話が聞こえていたのか、千季が「そうだ、心大」と心大に話しかける。




 「向こうの方に、最近、巷で流行っている氷菓アイスと言う物が売っているらしいんだ。一緒に買いに行かないかい?」




 千季にそう誘われた心大は「それだったら、皆んなで」と言うも、千季はそれを遮る。




 「そこの店主は生粋の美形好きらしくてね。火翠の若様みたいな方が行ったら、下手をすれば帰してくれなくなってしまう。だから、僕と二人で行こう」


 


 そう言う千季に、驚きながらも「それなら、千季さんも帰してくれないんじゃ……」と心配そうに言う。


 だが、千季は「蘇芳色の頭をし、名前に美という文字がつく美形が好きらしくてね。だから僕と心大が行っても大丈夫だよ」と心大の背を押し「だから早く行こう」と言う。




 そんな千季を「何言っているんだ?」と見ている悠美に、千季は片目をぱちっとさせる。




 「これで鍾乳洞の件の借りは返したよ」


 「っ……!」




 その言葉で、千季が気を利かせてくれたのだと悟る悠美。


 千季は、鍾乳洞で千季のことを助けた事を借りだと言っているのだろう。



 悠美は、ははっと笑う。


 そして、千季と心大を見送ると「泉凪。連れて行きたい場所があるんだ。一緒に来てくれるか?」と言う。




 「もちろん」




 そう言って泉凪が頷くと、悠美は花都と心温に「少し外す」と声をかけ、泉凪を悠美が連れて行きたかった場所まで案内する。

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