第二章 当主継承編 皇都へと
神守国には七つの郷を守る家がある。
火を司る神、火神から力を授けられし家、火翠家。
水を司る神、水神から力を授けられし家、水園家。
風を司る神、風神から力を授けられし家、風音家。
地を司る神、地神から力を授けられし家、地星家。
氷を司る神、氷神から力を授けられし家、氷彩家。
雷を司る神、雷神から力を授けられし家、雷林家。
そして、植物を司る神、花神から力を授けられし家、月花家。
この七つの家の先祖はそれぞれ、神から直々に力を授けられ、先祖代々、神守国の七つの郷を守ってきた。
そして、その子孫らもまた、力を授かり郷を守り続け、やがて、その中の一人のものが神守の国を守る皇となるのだ。
ただ、皇になるのには神力を持ち得る以外にもう一つ、条件がある。
それは、各家の当主だと言う事。
当主の座につき、そこでやっと―皇位継承権を受け取ることができるが、その権利は十七人のうち七人にしか得る事は出来ない。
そして、選ばれし十七名が皆、十七の歳を迎えた時当主を決める座学が開かれるため、再び皇宮へと集められ、約一年間学び、訓練をする。
「心配だなぁ。やはり師である私も行くべきだと思わないかい? 泉凪」
濃い桔梗色の頭をし、目を見張るほど美しい見た目をしている長身の男性は、顎に手をやり何やら身支度をしている女性を見ながら心配そうに呟く。
戸が開け、美しい花々が咲く庭が見える少し広い畳の部屋。
外も部屋の中も穏やかな空気が流れ、鳥の囀りとともに、花の甘い香りが漂ってき、なんとも落ち着く場所である。
先程の男性同様濃い桔梗色の頭をし、これまた目を見張るほど美しい見た目の女性──泉凪は、男性の方を見向きもしないで「はいはい、そうですね。師匠」と身支度をする手を動かす。
初めて皇宮入りをした日から十四年経ち、幼く愛らしかった泉凪は、大人になり、長く綺麗な髪を高い位置に一つに束ねた姿がよく似合う美しい女性と成長していた。
「花都も、師である私も行くべきだと思うだろう?」
泉凪に軽くあしらわれたのにも関わらず、もう一度同じ質問を、今度は自身の隣に立つ男性に問う師匠と呼ばれる男性。
彼は泉凪の言う通り、十四年前泉凪を皇宮へと連れて行った、狐の面の男で泉凪の師であるハナ師匠だ。
そんなハナの隣に立つ、ハナよりも若い男性──花都と呼ばれるものは、月花の郷出身で泉凪と一緒にハナに育てられた、泉凪の兄弟子であり従者だ。
花都はハナに「師匠は泉凪と私が皇宮へと行っている間、月花の郷を守って頂くと言う仕事があります。大人しく留守番していてくださいよ」と呆れたように言う。
つい先日、一番年下のものが十七歳を迎えたことにより、神力を持つものらに当主を決める座学を開くからと皇宮へと収集がかかり、泉凪は皇宮に向かう準備をしていた。
その座学には、従者を一人連れて行くことができるため、花都とともに向かうことになったのだが、収集がかけられた日から師匠であるハナが何かと理由をつけては泉凪について行こうとしているのだ。
「そうですよ、師匠。それに私はもう子どもではありません。師匠が心配せずとも大丈夫です」
泉凪の言葉に続け、花都も「それに、私も居ますので」と笑う。
「はぁ……いつの間に私の弟子たちはこんなにも立派になったのやら。」
寂しそうに、だが嬉しそうに笑うハナ。
そんなハナに泉凪は「それより師匠。そこ邪魔です」と冷たくあしらう。




