当主継承編 反撃開始と行こうか
「おい、おい! 起きろ……!」
「ゔっ……」
巨大な妖の炎を直撃した千季だが、ギリギリの所で自身の神力で身を守ったため、何とかかすり傷程度で済んだものの、衝撃が強く、しばらくの間気を失っていた。
そんな千季を近くで隠れていた、小物の妖が小さな声で起こす。
小物の妖を連れて行く暇はないと、小物の妖は身が隠せる場所に置いていかれていたのだ。
小物の妖の声を聞き、目を覚ました瞬間、再度攻撃をしてくる巨大な妖。
咄嗟に千季は攻撃を避ける。
先ほど、炎の直撃から自身を守った時に、かなりの神力を使ってしまい、立っているのもやっとの状態。
息を切らしながらも、巨大な妖に向け、神力を放つ。
だが、その力は弱く、巨大な妖はびくともしない。
千季は、その場に力無く座り込み「ここまで、かな……」と呟く。
その様子を見ていた小物の妖は「おい! 立たなきゃやられるぞ!」と必死に声をかける。
だが、千季には立つ力も残っていない。
そんな千季に目掛け、無慈悲にも巨大な妖から炎が放たれようとし、千季は覚悟を決め目を瞑る。
だが、いくら経っても巨大な妖の炎が当たることはない。
不思議に思った千季が目を開けると、予想外な光景が目に映って来た。
千季の目の前にいる巨大な妖は、必死に身体を動かそうとしているが、何かにそれを阻止されているような動きを取る。
よく見てみると、巨大な妖の身体を緑色の蔦が、纏わりついていた。
その蔦を見た千季は「あれって……」と呟く。
その時「千季!!」と、千季の事を呼ぶ声が聞こえて来た。
その声に直ぐに反応する千季。
「何で、ここにいるの……? 泉凪」
千季は、力なくそう呟く。
千季の言う通り、何故かそこには鍾乳洞の外へと助けを呼びに行った筈の泉凪が立っていた。
ボロボロになっている千季を見るなり、泉凪は「酷い傷だ……」と申し訳なさそうな表情を浮かべる。
なぜ、鍾乳洞の外へと助けを呼びに行った泉凪がここにいるのか、理解が追いつかない千季。
まさか、死ぬ間際に都合のいい夢でも見ているのかと、瞬きをする。
すると、そんな千季のことを誰かが支え、立ち上がらせ「よく耐えたな」と言う。
「ひ、すい……?」
自身の事を支える人物の顔を見て驚く千季。
何故なら、泉凪と一緒に鍾乳洞の外へと助けを呼びに行った筈の悠美が、自身の事を支えているのだから。
千季は戸惑いながら「二人とも、どうしてここに……? 助けを呼びに行ったんじゃ、」と尋ねる。
そんな千季に泉凪は頷き「安心して。伝書鳥は飛ばしたし、住人たちの避難は今行われているから」と言う。
泉凪の言う事だ。
それが嘘ではないことは分かる。
「泉凪がどうしても、鍾乳洞へと戻ると言うから戻って来たんだ」
そう言う悠美に、泉凪は「またそんな事を……。悠美も心配していたのは知っているよ」と苦笑する。
そんな二人に、千季は「どう、して……応援を要請したからと言っても、危険なことには変わりないんだよ」と眉を顰める。
泉凪は「どうしてって……」と言ったかと思えば、真っ直ぐ千季を見つめ言う。
「私も千季に死んでほしくないからだよ」
「っ……。」
目を見開き驚く千季に、笑みを浮かべる泉凪。
千季は、ははっと小さく笑うと「敵わないなぁ……ほんと」と呟く。
「わかったなら、私たちで応援が来るまで、あの化け物の相手をするぞ」
泉凪と千季のやり取りを見ていた悠美は、少し不貞腐れたように言うも、ボロボロな千季を支え続ける。
そんな悠美に千季は「ありがとう、助けてくれて」とお礼を言う。
悠美は「勘違いするな、泉凪のためだ。泉凪に言われなければ、お前なんか放っていた」と言う。
その言葉に千季はまたもや、ははっと笑みを浮かべる。
そんな二人を見て泉凪は「早速、反撃開始と行こうか」と言い、悠美と千季は頷く。




