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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 鍾乳洞へと

 


 櫻子と呼ばれる女性に、泉凪は「もちろん、調べさせていただきます。貴女のお名前をお聞きしても?」と尋ねる。




 「あ、自己紹介がまだでしたね。私は、この町で医者の見習いをしている、櫻子と申します。そして、こっちのツネさんは、私の家の近所に住んでいる方です」


 「私は、医者の見習いとして一年前にこの町にやって来たのですが、ツネさんは生まれも育ちもこの町なので、分からないことがあればツネさんに聞いて頂くと、何でも答えてくれますよ」




 櫻子に紹介されたツネは、泉凪たちを見て「まぁ、分からぬこともあるがな」と呟く。


 そんな櫻子とツネに「症状を訴えた方々は今、どのような状態なんですか?」と尋ねる千季。



 櫻子は神妙な面持ちで答える。




 「地山の者たちは皆、まだアザのようなものが身体中にありますが、体調不良を訴える者はおらず、普通に生活を送っています」


 「ただ、そのアザが身体にどう言った影響を与えるか分かっていないため、中にはアザができた人たちを見て、近寄るなと嫌がる人もいたり、外に出るのを嫌がったりする者もちらほらと出てきています」


 「その噂が広まり、地山の町には観光客は誰も来なくなったので、被害に遭われているのは、初めに症状が出た観光客の方と、地山の町のものだけです」




 櫻子の話を聞き、今度は悠美が「初めに症状を訴えたと言う、観光客の方は?」と聞く。



 そんな悠美に対して「それが……」とどこか言いにくそうな櫻子。


 だが、ゆっくり口を開き言う。




 「体調が悪化し、毎日医者にかかっているから、お金を払ってくれと仰っていて……」




 そう言う櫻子に、泉凪は「症状は?」と聞くも、櫻子は首を横に振り「それが、体調が悪化したとしか仰られなくて」と困ったように言う。




 「他に体調不良を訴える者は?」


 「体調、不良ではないのですが……アザのようなものができている方の中で、一人、亡くなられた方がいます」




 櫻子の言葉に、三人は顔を顰める。


 そんな三人に櫻子は「ですが、元々持病を持っていたおじいちゃんで、それが原因と言われれば難しいです。そのおじいちゃん以外には、体調不良を訴えている方は今のところいません」と言う。




 「とにかく、鍾乳洞を見てみないと分からないな」




 悠美の言葉に、泉凪と千季は頷く。


 櫻子は「案内致しますね」と言い、ツネの目線に合わせるように前屈みになる。



 その時、胸元から綺麗な緑色の石が取り付けられたかんざしが落ち、それを泉凪が拾う。




 「綺麗な簪ですね」


 「ありがとうございます。亡くなった祖父に貰ったんです。元々祖母の物だったらしいですが、祖母が亡くなった後、祖父がずっと大事に持っていて。それを私に渡してくれたんです」




 そう簪を大事そうに撫で、愛おしそうに見つめる櫻子。


 そんな櫻子に「宝物ですね」と泉凪は言う。


 泉凪の言葉に、櫻子は頬を赤らめ嬉しそうに「はい!」と笑う。







 「鍾乳洞まで行くのに、橋を渡っていくんだね」




 櫻子に鍾乳洞まで案内して貰っている泉凪たちは、鍾乳洞へと行くまでにある屋根の付いた石橋を渡っていた。




 「はい。鍾乳洞の中まで続いているんですよ。中に入り、しばらく歩くと開けた鍾乳石が氷柱のようになった場所が出てくるんですが、何故か青白く光っていて、とても神秘的なんですよ」


 「そこに惚れて、私はこの町に医者見習いとしてやってきたんです。それに、祖父の出身地でもあったし」




 少し照れくさそうに話す櫻子に泉凪は「慣れない町で医者の仕事は大変だったでしょう?」と聞く。


 すると、櫻子は懐かしそうに笑い話す。



 「私、医者だった祖父に憧れて医者を目指したんです。どんな患者さん相手にも寄り添って、それでいてとても腕の良いお医者さんで。心の底から尊敬していて、私も祖父のようなお医者さんになりたいと思いました」


 「分かっていましたが、その事を家族に伝えると女で医者は無理だと言われたんです。ですが、祖父だけは応援してくれて」


 「そんな尊敬している祖父と同じお医者さんの仕事を、祖父の生まれ育った町でやりたいと思っていたのが叶ったので、慣れないこともありましたが、全く苦ではなかったんです」




 「まぁ、女の医者見習いは私以外いないので、大変な事は今もありますけどね」と笑う櫻子はとても逞しく見え、泉凪は「かっこいいね、櫻子さんは」と微笑む。


 そんな泉凪を悠美と千季は見つめる。




 「鍾乳洞の入り口が見えてきたな」




 泉凪たちが話をしているうちに、鍾乳洞の入り口近くまでやってきていた。

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