当主継承編 地山の町
「神守の国で最大と言われているだけあるね。凄く大きな山だ」
地山の町へと視察にやって来た、泉凪、悠美、千季の三人。
町に入る前から見えていた山を目の前にしては、驚いた表情を浮かべる泉凪たち。
泉凪の言葉に続くように千季も「ほんと……この大きさなら、皇宮まで見えそうだ」と呟く。
「……だが、思ったより人がいないのだな。聞いた話によると、日々、観光客で溢れかえっていると聞いていたが」
「思ったより、というか全くいないけど」
悠美と千季の言う通り、地山の町は、美しい鍾乳洞と最大の山が有名で、観光名所になっており、日々、町中は沢山の人で賑わっている。
のだが、泉凪たち以外、誰一人として町にはいないのだ。
「陛下が仰っていた事と何か関係があるのかな?」
そう言う泉凪のことを、悠美と千季は見る。
泉凪たちが地山の町へと、視察に向かう直前のことだった。
突如、皇帝が玄関で牛車を待つ泉凪たちの前に現れたのだ。
かと思えば、何やら神妙な面持ちで、泉凪たちに調べごとをして来てほしいと言うのだ。
『丁度、二週間ほど前。地星家警備隊から手紙が届いたんだ。最近、地山で何か起きているらしいが、変死体の件で追われ、地星家の警備隊だけでは調べきれぬから、皇宮警備隊に来てもらいたいと、書かれてあった』
ぴたりと起きなくなっていた、変死体の件。
それが最近、また起き始め、地星の郷付近で多発したため、地星家警備隊は捜査に追われていた。
皇帝は、話を続ける。
『その手紙を読み、私はすぐに皇宮警備隊を地山に向かわせた。だが、地山に向かった警備隊は特に変わった様子はなかったと、傷一つ付けずに戻ってきた。』
『それ以上、捜査を行われていなかったのだが、今度は地山の町から直々に手紙が届いてな。何やら妙に気になってしまい、もう一度警備隊を向かわせようとしていたのだが……何せ今、例の変死体の件で警備隊は手一杯でな。』
『お主らが行くのなら、お主らに頼みたいと思う』
『本当に、何もなかったのなら、なかったでいいが』
そう呟く皇帝を、泉凪たちはじっと見つめる。
◇
「まずは、人を探さなければな」
悠美がそう言った時、背後から「お主ら!! ここに来てはならない!!」と言う女性の声がした。
三人は驚き、後ろを振り返ると、そこには八十代くらいの老婆が物凄い形相で立っていた。
悠美は「何だ?」と呟くと、その老婆は「さっさと帰れ!! お主らも巻き込まれるぞ!!」と三人に向かって持っていた杖を振り回す。
「もの凄い力強い婆さんだ……」
何とか老婆を落ち着かせることができた三人。
だが、落ち着かせた頃には、三人の息は上がっており疲れ切っていた。




