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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 宮女の暇つぶし



 「どうかな、泉凪」




 月花宮に戻った泉凪は、花都に片方の長い髪を短くなってしまった髪に合わせ、整えてもらっており、花都はそう言って泉凪に手鏡を渡す。


 

 初め、花都は泉凪の髪を切ることに躊躇っていたが、泉凪に頼まれ断れず、整えることになったのだ。




 鏡に映る、短い髪を見て「うん、いいね。」と笑う。




 「これからどんどん、暑くなって来るから丁度いいね」


 「そう、だね……似合ってるよ。泉凪」




 そう、真剣な表情で言ったかと思えば、優しく微笑む花都。


 そんな花都を見て、泉凪も「ありがとう」と笑う。







 「そう言えば、例の血が全て抜かれてたって言う変死体の犯人、まだ見つかってないらしいわよ」




 翌日、座学室付近の廊下を歩いていた三人の宮女のうちの一人が、今朝、官人らが噂をしていたのを思い出し、他の二人にその事を伝える。




 「えぇ! まだ、見つかってないの?」


 「確か、噂によると妖の仕業じゃないかって言われてるのよね?」


 「そうそう。最近、妖が関わる大きな事件はなかったのにね」




 滅多に、皇宮の外へと出られない宮女らからすれば、この手の話はいい暇つぶしになる。


 対して、気にはしていないが、隙間の時間に話すにはもってこいの話題だ。




 「どうする? 皇宮にも入って来たら!」


 「馬鹿ね。皇宮には皇帝陛下の結界が張られているから、妖は入れないことになってるのよ」


 「それに、今は神力者様方がいらっしゃるしね……」




 一人の宮女は、話をしている途中で、前方から歩いて来る人物に目を惹かれ、意識がそちらに持っていかれる。


 その事に気がついた他の宮女達も、前方から歩いて来る人物に目を向ける。



 かと思えば、驚いたような表情を浮かべ、頬を赤く染めるのだ。




 前方から歩いて来る人物は、二人おり、そのうちの先を歩く人物は、宮女らを見るなり「おはようございます」と挨拶をする。


 それに続け、後ろを歩く人物も会釈をする。




 宮女たちは、まさか挨拶をされると思ってもいなかったのか「おお、おはようございます……」と小声になる。


 そんな宮女らを見て、その人物はフッと笑みを浮かべ歩いて行く。



 その瞬間、小声で「いいい、今のお方は!?」「最後の笑みは何!?」と黄色い歓声が上がる。




 「あのようなお美しい殿方居られたかしら?」


 「神官様かしら? でも、綺麗な桔梗色の髪が素敵だったわ〜……」




 一人の宮女が、そこまで言ってある事に気づき「桔梗色の髪?」と三人の声が重なる。



 この国で、桔梗色の髪を持つものは、月花家の人間のみで、皇宮内で桔梗色の髪を持つものも、ただ一人しかいない。




 「えっ、もしかして今の、月花様!?」


 「まさか〜」


 「でも、桔梗色の髪は月花家の方しかいないわよ? それに、地星の晃様が誰かの髪を誤って切ってしまったって言っていたから……」




 一人の宮女の話に他の二人は「え! 何それ! 聞いてないわ」「誤ってだとしても、髪を切るだなんて、やっぱり地星の晃様は酷いわね」と、暇を持てる宮女達の話題は変わり、もう誰も妖の話を覚えているものは、居ないのだった。

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