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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 覚えておくんだな

 


 文月の話を聞き終えた時、丁度、騒ぎを聞き駆けつけた藍良が座学室にやって来る。




 「話は聞きました。今日の座学は中止致します。月花様は怪我をしていないかお医者様に診て頂いてください」


 「他の神力者様方は、宮に戻られるようお願い致します」




 藍良の指示を聞き、花都は「泉凪……医務室まで行こう」と、泉凪の背に手を添える。


 花都の表情は、怒っていると言うよりは、酷く傷ついているかのよう。




 「泉凪っ……」




 座学室から出て行こうとする泉凪に、悠美は声をかける。


 悠美の表情も、眉を顰め、何処か苦しそうだ。



 そんな悠美を見た泉凪は「大丈夫だよ。だからそんな顔しないで」と笑みを浮かべる。


 いつもなら、泉凪たちが話をしている間には、入らない花都だが「泉凪行こう」と間に入り、泉凪を誰にも近づけさせないようにする。




 つい今しがた、泉凪が傷つけられたのだから無理もない。


 花都と一緒に部屋を出て行く泉凪を、悠美は見つめる。




 「悠美様。私たちも宮に戻りましょう」




 心温は、悠美にそう声をかける。


 だが、悠美は「心温は先に戻っていてくれ」と出口に向かい歩き出す。


 そんな悠美に向かい「ゆ、悠美様? どちらに……?」と尋ねる。



 悠美は、後ろを振り返らず「少し野暮ようだ。すぐ戻る」とだけ残し、座学室を後にする。


 そんな悠美の事を、千季はただ黙って見つめていた。







 「くそっ、くそっ……!! 何でこうなんだよ……!!」




 地星宮の自身の部屋で、そう苛立ちながら、物に八つ当たりをする晃。


 皇帝に呼ばれるまで、自室で待機しているよう言われた晃は、どんな罰を受けるか分からず、怯えていた。



 その時だった。




 「あああ、晃様! い、今、部屋の前にひ、火翠の若様がお越しになられていて……!」




 そう慌てた様子で、晃の従者が部屋に入って来た。


 従者の話を聞いた晃は「火翠が? 絶対に通すなよ!!」と声を荒げ言う。




 「で、ですが、許可を貰わなくとも入らせてもらうとおっしゃっていまして……」


 「は?」




 晃の従者がそう言ったのと同時に、悠美が部屋の中に入ってき「やぁ、地星の若君」と晃に挨拶をする。


 一見、笑みを浮かべているように見えるが、怒りが見え隠れしており、晃は思わず息を呑む。


 だが、晃は平然を装い「これはこれは、火翠の若君が、俺の部屋にやって来るとは……一体どう言った要件で?」と悠美に尋ねる。



 晃の言葉に「自分でわかっているだろう? 何をやらかしたか。そして、何故私がお前の部屋に出向いて来ているのか」と答える悠美。



 晃は「月花の姫君の事だろ? 月花の姫君には申し訳ないと思っているよ。ただ、あそこで私の従者何かを庇ったりするから起きた事故だ。」と、少しも反省をしていないと言った態度を示す。




 「皇宮内で許可なく神力を使うのは禁止されているが破り、神力を持たない者に、私情で神力を使用したのにも関わらず、従者を庇った泉凪に対してそのような物言いとは……同じ神力者としても天と地の差だな」




 そう鼻で笑う悠美に、晃は苛ついたのか、先程までの平然とした態度から変わり、少し声を荒げる。




 「大体、俺と従者との事に、部外者が勝手に口を挟んできたんだ。自業自得だろ!!」


 「他の者達が大勢いる前で、従者に向かい、神力を使ったのはお前だろう? 止めに入る事くらい予想できたはずだが?」




 悠美に淡々と返され、益々頭に血が昇る晃。


 先程より更に声を荒げ「髪の毛を切られたくらいで、一々うるさいんだよ!!」と思わず本音が出てしまう。



 そんな晃の言葉を聞き、悠美は「髪の毛を切られたくらいで?」と呟く。


 その声と表情は、思わず息を呑んでしまうほど恐ろしく、晃は後退りをする。



 その瞬間、晃の周りが炎で覆われ、晃は「あっち……!」と声を上げる。




 晃を囲む炎は悠美の神力によるもので、悠美は晃に近づき言う。




 「女性にとって髪は、命と呼ばれるほど大事な物だ。それをお前のしょうもない私情のせいで切られてしまったのに、一々うるさいだと? 調子に乗るのも大概にするんだな」




 悠美がそう言うと、晃を囲む炎は更に威力を増す。


 悠美の怒りの感情が、炎に反映されているようだ。


 そんな悠美に「おい!! この炎を今すぐ消せ! 許可なしの神力の使用は禁止されてるとさっきお前も言っていただろ!!」と焦った様子で訴えかける。




 「あぁ……だからこれでおあいこだ。」




 悠美の言葉に、炎は晃を包み込むように燃え盛り、晃は「早く消せ!!」と叫び声を上げる。


 だが、悠美はそれを無視し、部屋から出ようとする。


 僅かな炎の隙間から悠美の事が見えた晃は「いくら同じ神力者とて、このような仕打ち。陛下はお許しになられないぞ!!」と声を上げる。



 そんな晃に悠美は冷めた表情を浮かべ言う。




 「同じ神力者? 何を勘違いしている? 私は神力者でも、皇帝の息子だ。当主の息子と皇帝の息子とでは立場が違う」


 「なっ……!」


 「それを、忘れずに覚えておくんだな」




 悠美はそう言って部屋から出て行く。


 そんな悠美と入れ替わるように、晃の従者が部屋に入ってき「あ、晃様……!」と声をかけ、晃は従者に自身の周りの炎に今すぐ水をかけろと命令する。



 だが、従者は「炎、ですか? 一体どこに……?」と不思議そうな表情を浮かべる。


 確かに、晃の周りは炎で覆われている。



 だが、晃が瞬きをした瞬間、その炎は跡形もなく、姿を消したのだ。


 晃の身は、火傷しているような感じもない。




 「くっそ……!」




 晃は、悠美が作り出した幻影の炎に踊らされていたのだった。

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