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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 気にするな


 

 笑う泉凪を見て、悠美は「前にも似たような事があったな……」とボソッと呟く。


 聞こえていなかった泉凪は「何か言った?」と優しく笑う。



 その顔があまりにも優しく見え、見惚れる悠美に「悠美? どうしたの?」と泉凪は声をかける。


 ハッとした悠美は「いや……」と視線を逸らし「泉凪は凄いな」と微笑む。


 そんな悠美に泉凪は「何? 藪から棒に」と言う。




 「この前の視察の時、月花の郷に行っただろう? 泉凪と話す郷の人たちは楽しそうだった。皆んなが幸せそうに笑っていて、いいなって思ったんだ。きっと泉凪がさっき言ったように、郷の人たちのことを大切に思い尊重しているからこその光景なんだろうなって」


 「私には到底、出来るかどうか」




 そう呟く悠美に、泉凪は「出来るかどうかはともかく。そこまで、皆んなを幸せにしたいって考えてくれているんだ。その思いだけでも充分に嬉しいと思うけどな」と言う。




 「そう、か?」


 「そうだよ。誰かを思う気持ちは、相手にちゃんと伝わるもんなんだよ」


 


 「まぁ、これは花都の受け売りだけどね」と笑う泉凪。


 


 「それに、悠美ならきっと良い当主になれるよ」




 泉凪に真っ直ぐ言われ悠美は、ふっと笑みを浮かべ「泉凪が言うなら、なれる気がして来たよ」と言う。




 「……やはり、月花前当主に似ておられますね、泉凪様は」




 近くの泉凪たちからは死角になる場所で、泉凪たちの話を聞いていた仁柊は、同じく隣で泉凪たちの話を聞いていた皇帝に、そう言う。



 毎日、皇后のお墓の前に手を合わせに来ている悠美を気にかけ、皇帝も毎日、隙を見ては悠美の様子を見に来ていたところ、たまたま、泉凪と悠美が話しているところに出会し、そのまま去るわけでもなく話を聞いていたのだ。




 仁柊の言葉を聞き、皇帝は「……そうだな」と呟くと、泉凪の事をじっと見つめる。


 そして、眉を顰め、何処か辛そうな表情を浮かべたかと思えば「行くぞ仁柊。立ち聞きしてたと悠美にバレたら、大変だからな」といつもの調子に言う。



 一見、いつもと同じように見えるが、仁柊には辛そうな表情を浮かべたのを隠そうとしていると言う事がわかった。


 だが、何も言わずに皇帝の後を仁柊はついて行く。







 「心温! 早く行かなければ、座学に遅れるぞ! 早くしないと、先に行くからな」




 翌日、座学に行くため用意を終えた悠美は、座学に行く時間だと言うのに、まだ用意をしている心温に、痺れを聞かせる。


 そんな悠美の声を聞き、慌てて悠美の元にやってくる心温は「お、終わったぞ」と声をかける。




 「遅いぞ」


 「すまない」




 悠美は「さっさと行くぞ」と部屋から出ようとする。


 そんな悠美に、心温は「悠美、もう大丈夫なのか?」と声をかける。



 ずっと様子がおかしかった悠美を、心配していた心温。


 だが、昨日、部屋に戻ってきたと思えば、いつもの調子に戻っており、何かあったのか聞こうと思ったが聞けずにいたのだ。



 悠美は「あぁ、大丈夫だ」と笑う。


 そんな悠美に「月花様か?」と何となくだが、泉凪が悠美の心を軽くしてくれたのだろうと思い、そう尋ねる。




 「まぁな。泉凪の話を聞き、気持ちが楽になったよ」と言う悠美に、心温は「全部話したのか?」と聞く。




 「いや、あの事はまだ話してない」


 「そうか……何か月花様にお礼をしないとな」


 「お礼?」




 「うちの悠美がお世話になりましたってな」などと、いつものように冗談を言い合いながら、部屋を出、悠美と心温は座学へと向かう。




 「おはよう、悠美に心温」




 その途中で、同じく座学へと向かう泉凪と花都に会い、悠美は嬉しそうに泉凪の元に寄る。




 「泉凪たちも今からなのか?」


 「うん。師匠に宛てた手紙を書いていたら、ギリギリになってしまってね」




 二人はそう話しながら自然と並んで歩く。


 そんな二人の後ろを、花都と心温は並びついて行く。




 その時「これはこれは、悠美様に月花様」と言う声が前から聞こえてきた。


 泉凪と優美の目の前には藍良がおり「ご挨拶申し上げます」と胸に手を当て、お辞儀をする。


 そんな藍良に「おはよう、藍良」と泉凪は挨拶をする。




 「おはようございます。これから、お二方は座学ですよね? 一緒に向かわれるとは仲がよろしいようで」




 そう言う藍良を心温は睨みつけ、悠美は黙って見つめる。


 そんな悠美に藍良は「もう、良いのですか? 気分が優れないと陛下から聞いていましたが」と言う。



 心温は「貴方が悠美様に余計な事を言ったんだろ」と言いかけたが、悠美の言葉により遮られる。




 「あぁ、泉凪のおかげでな。それに、大神官が心配する事でもない。だから、もう気にするな」




 そう言って悠美は笑うと、座学があるからと止めていた歩みを進める。


 そんな悠美たちの後ろ姿を藍良は、ただ何も言わずに見つめるのだった。

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