第一章 月花家の亡霊
「こ、これは驚いた……」
目が開けれるようになり、大臣や神官らは目の前の光景を見て、動揺が隠せない様子。
「陛下」
「あぁ。緑の光……植物を司る花神から力を授けらし家、月花家の神力だ」
皇帝陛下は落ち着いた様子でそう言うも、表情から動揺を隠せないのが窺える。
それも無理もない。
植物を司る花神から力を授けられし家、月花家は五年前に突如、何者かにより滅ぼされたのだから。
月花家に後継者が生まれる前に滅びてしまい、また、月花家の人間は全滅し、当時月花の郷に住んでいた者も皆、亡くなってしまった。
だからこの様に、月花の血を受け継ぎ、月花の神力を扱える者は居ないはずの状況で、何千年の間、神力を持って生まれるはずがない女子が神力を持ち、その上五年前に滅びたはずの月花の力を持った者がいると誰が信じようか。
だが、目の前の目を見張るくらい鮮やかに光り輝き、初夏に咲く新緑の様な緑色の光が。これまで何千年もの間、神力を持つ子を証明してき、神の国で採れたとされる神石が、それら全てのことを事実だと証明している。
「ほ、ほんとうに女子で神力を持つ者がいるとは……」
「月花の郷は五年前に滅んだはずでは?」
「一体どうなっているんだ?」
これまでにない事態に、思考が追いつかず、騒つく神官や大臣ら。
そんな中、一人の丸い眼鏡をかけた者が狐の面の男に問いかける。
「確かに五年前に月花家の人間含め、月花の郷の者は皆、亡くなったはず。なのに何故、今になって神力を持つ子が?」
「簡単な事です。ただ、生きていた。それだけの話ですよ」
「ただ生きていた、とは。五年もの間、誰にも気づかれる事なく?」
尚、質問をしてくる眼鏡の男に、狐の面の男は挑発するかの様な口調で「大神官様は随分と疑深くあられるのですね。まるで月花の人間が誰一人として生きているはずないと確信でもしているようだ」と言う。
「いえ……ただ、女子な上に滅んだはずの家の力を持つものと聞けば、皇宮に支えるものとして、疑うのは当然かと」
「それもそうですね。このような優秀なお方が支える神守の国はなんとも心強い事でしょう」
狐の面の男の言葉に眼鏡の男は「いえいえ。」と謙虚に返すも、その目は笑ってはおらず、二人の間にとても穏やかとは言えない空気が流れる。
そんな空気を変えるかの様に、陛下は一つ咳払いをし「私からも質問させてもらって良いか?」と尋ねる。
「えぇ、もちろんです。皇帝陛下」
「感謝する。その子は月花の当主の子なのか?」
「はい。月花家の前当主の実の娘でございます」
「それを証明することは?」
「それは難しいことです。何せ全て滅んでしまいましたから。」
「そうか。その子は今何歳なのだ?」
「陛下の御子息と同じ、五歳でございます」
皇帝からの質問に、何なりと答えていく狐の面の男。
そんな面の男の隣で、女子は退屈そうにしている。
皇帝は更に質問を続ける。
「五歳と言ったな。大概のものは三歳の頃に神力を発動するはずだが、何故二年もの期間が空いているんだ?」
神力を持って生まれてくるものは、大概、三歳の頃になると力を発動し、一週間以内に皇宮入りするのが慣わし。
だが、狐の面の男が連れてきた子は、皇宮入りするまでに二年もの月日が空いているのだ。
皇帝の質問を聞いた大臣らは「確かに妙だな」と口々に言う。
「二年もの時間が空いた理由、ですか。一つはご存知の通り、月花の郷は何者かにより滅ぼされています。そんな中、神力を持つ子がいると言えばまた、命が狙われてしまうのではないかと考え、公表が遅れました。」
「もう一つの理由としては、皆様がおっしゃる通り、女子が神力を持って生まれることなど前例のないこと。そんな状況下で皇宮に放り込むなどこの子からしたら酷なことこの上ありません。なので、自から皇帝になりたいと申してくるまでこの子に神力があることは秘密にしておこうと思ったまでです」
「納得していただきましたでしょうか?」と皇帝に尋ねる面の男。
それに対し、皇帝は頷き「最後に良いか?」と最後の質問を面の男に投げかける。
「お前は一体何者だ?」




