当主継承編 様子がおかしいと思わない?
「最近、何だか悠美の様子がおかしいと思わない?」
ある日の座学の日。
座学を行う為に、座学室へとやって来ていた泉凪たち。
座学室の入り口で、心温と話す悠美を見ながら、泉凪は唐突に千季と心大にそう話す。
千季は「唐突だね」と言い、心大は「何だか顔色も悪いよね」と頷く。
「まぁ、確かに。本人は隠しているつもりだろうけど、何だか思い詰めてるように見えるね」
「だよね……」
そう悠美を見ながら呟く泉凪に、千季は「そんなに気になるなら、直接本人に聞いてみたら?」と言う。
千季の言葉に「もう聞いたよ」と泉凪は答える。
「早いね。で、何だったの?」
「何もないって」
「あぁ……」
(まぁ、素直に話すような性格ではないか)と心の中で呟く千季。
未だ、心配そうに悠美を見つめる泉凪を見る千季。
そんな泉凪に千季は「そんなに彼が心配?」と聞く。
突然、千季にそう聞かれ泉凪は、少し驚き「……まぁね。友人だから」と言う。
泉凪の言葉を聞いた千季は「友人ね……」と何処か含みのある言い方をする。
そして、一つ軽く息を吐き、眉を八の字にし言う。
「彼の従者に聞いてみたらいいんじゃない? 何か教えてくれるかもよ」
千季の提案に「そうだね」と泉凪は頷くと「ありがとう、千季」とお礼を言う。
千季は「お礼を言われるほどのことじゃないよ」と眉を八の字にし、笑う。
そんな千季の心の中は、何処か複雑な感情で溢れていた。
◇
皇宮内にある石碑に向かい、悠美は手を合わせていた。
その石碑には、花が供えられ誰かのお墓なのだと言うことがわかる。
悠美は手を合わし終え、石碑を見上げる。
その表情は何処か悲しそうに見える。
その時「やはり、ここ最近花を供えていたのはお前だったか。悠美」と言う声が聞こえてくる。
悠美はその声にハッとし、声のした方を見る。
そこには、手に花束を持ちこちらに向かって来ている皇帝の姿があった。
悠美は立ち上がり「父上」と呟く。
「藍良から聞いたぞ。あの件に触れられ、思い出していたのだろう?」
皇帝にそう言われ、悠美は「……まぁ」と曖昧に返事をする。
そんな悠美に皇帝は、眉を顰め口角を軽くあげ言う。
「あれからもう七年も経った。それにあれは、気付けず、守れなかった私の責任だ。お前がそこまで気負うことはない」
そう言う皇帝に、悠美は「……いえ。あれは私の責任です。私が彼の気持ちを理解できていたなら起きなかったことです」と力なく言う。
そして「そろそろ座学の時間なので、失礼します」と歩いて行く。
そんな悠美を見送る皇帝。
「私達の息子は、まだまだ青いな。そう思わないかい? 皇后よ」
そう言って、皇帝は先程まで悠美が手を合わせていた石碑に、自身が持って来た花を供えるのだった。




