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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 悪夢



 部屋の中に入って来た藍良をチラリと見ると、手元の書類にもう一度視線を戻し「わざわざ、私の部屋まで来るとは、珍しい事もあるもんだな」と悠美は言う。


 悠美にそう言われた藍良は「火翠の若様にご挨拶申し上げます。悠美様にお伝えしておきたい事がございまして。お会いしてからでは遅くなると思い、参りました」と胸に手を当て、お辞儀をする。




 そんな藍良に、悠美は「挨拶はいい。用件を話せ」と部屋に来た理由を話すよう促す。


 藍良は「……かしこまりました。」と悠美の部屋までやって来た用件を話す。




 「……泉凪に毒を刺したと思われる娘が死んだ、か。」




 藍良の話を聞き、悠美は眉を顰め、着物の袖に両腕を入れそう呟く。




 「この件について父上は何と仰られているんだ? もう報告はしているんだろ?」


 「はい。つい先程、報告したところ他殺の可能性があるとも考えておられるようです」


 「やはりか」




 悠美の言葉に藍良は頷く。


 しばらく考え込んだ後、悠美は「また何か分かれば教えてくれ。もう下がっていいぞ」と藍良に言う。



 だが、藍良は「一つ、よろしいでしょうか?」と悠美に尋ねる。


 悠美は眉を顰め「何だ?」と聞き返す。




 「悠美様が、月花様と親しくされているところを見たと、耳に致しましたが、本当でしょうか?」




 唐突にそんな事を聞く藍良。


 そんな藍良に「それが何か問題でも? 神力者同士、親しくするのは普通のことだと思うが?」と返す。




 「いえ……悠美様が、同じ神力者の方々含め、誰かと親しくなされているのはあまり見たことがなかったもので、少し気になったまでです」


 「ほぉ……? まさか、私の行動を気にするとは……お前が関心があるのは、父上だけだと思っていたよ」


 「私は皆様に平等に接しているつもりですが」




 藍良の言葉に「それは失礼した」と眉を顰め笑みを浮かべる。




 「いえ。私の方こそ、いきなりこのような話をしてしまい申し訳ありません。私はこれで失礼致します」




 そう言って藍良は、部屋から出て行こうとするが、足を止め悠美の方を振り返る。


 そして「悠美様。ご友人をつくられるのは、大変喜ばしい事ですが、くれぐれも相手には注意してくださいね。かつてのご友人のような事が二度とないよう」と言う。



 藍良の言葉を聞いた心温は、いつもの柔らかい雰囲気から一変し、冷たく恐ろしい表情を浮かべ「その話をするのは、悠美様どころか陛下に対しても無礼だと言うことがお分かりですか?」と言う。



 藍良は「無礼をお許しください、心温様。悠美様のことが心配でつい、口走ってしまいました」と頭を下げ謝罪する。




 「謝罪なら、悠美様に」


 「いい、心温。」




 悠美は「謝罪はいいから、今すぐ出て行け」と藍良に向かい言う。


 悠美にそう言われ、藍良は胸に手を当てお辞儀をし、部屋から出て行く。


 心温は、先程までの冷たく恐ろしい表情から変わり、心配そうに「悠美……」と伺う。



 そんな心温に、悠美は「そんな顔をするな。私は大丈夫だ」と眉を八の字にし笑みを浮かべる。




 「さぁ。湯浴みに行くとするか」


 「……用意するよ」


 「あぁ、頼んだ」




 そう言う悠美を心温は、じっと見つめる。


 一見気丈に振る舞ってはいるが、やはり気にしていることが心温には分かったが、悠美は大丈夫と言うので、心温もいつも通りに振る舞う。







 その日の夜、悠美は夢を見ていた。




 雨が降り薄暗く、何処か、不穏な空気を漂わせている。


 辺りは何故か血に塗れ、自身の手も血で真っ赤に染まっており、そんな手で一人のまだ年端もいかないような倒れ込んでいる男子を、膝に乗せ抱えている。



 その男子の口からは血が流れており、何かを呟いている。


 そんな男子の言葉を聞こうと、悠美は必死に耳を傾ける。




 だが、聞こえて来た言葉はとても胸を抉られる事だった。




 『お前が……大嫌いだった……』




 「っは……!」




 悠美は飛び起き、いつもの自身の部屋が目に入ってき、先程までのは夢だったのだと分かる。


 悠美は前髪をくしゃっと掴み「くそっ……」と呟く。



 そんな悠美の額には大量の汗が流れており、顔色も悪く見える。

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