当主継承編 似た物同士
「泉凪。一緒にご飯を食べに行かないか?」
座学を終え、昼食の時間になり、悠美は泉凪の元に行くとニコニコと笑みを浮かべ、泉凪を昼食に誘う。
悠美が誰かと食事を摂る、ましてや誰かを誘うことなど、今まで一度も無かったため、泉凪を食事に誘う悠美を見ては、他の神力者たちはざわつき出す。
泉凪もそのうちの一人で、まさか、食事に誘われると思っておらず、目をまんまるにし悠美を見る。
「……いいけど、先約がいてね。心大と千季も一緒で構わない?」
悠美はちらっと、千季の方を見てはすぐに泉凪のことを見「もちろんだ」と笑みを浮かべる。
泉凪は心大と千季に「そんなわけで、いいかな?」と悠美と一緒に食事を摂ってもいいかと聞く。
心大は「僕は大丈夫だよ」と笑い、千季も「大丈夫だよ」と笑みを浮かべる。
そんな千季に悠美は「水園の若君と一緒に食事を摂れるとは、光栄だな」と話しかける。
千季は一瞬、悠美のことをじっと見つめ「僕の方こそ」と笑う。
二人とも笑みを浮かべているが、何処となく、その笑顔が胡散臭く見えるのは気のせいだろうかと、泉凪は思う。
◇
「泉凪、これすごく美味しいぞ。」
「泉凪は甘めの味付けは嫌いなんだよ。こっちの辛口の味付けの方が好みだと思うよ。まぁ火翠の若君は、一緒に食事をした事がないから知らないだろうけど」
食事処にて。
泉凪たちは、席につき昼食を摂っていた。
何やら、いつも以上に周囲からの視線を感じる中、悠美は隣に座る泉凪に、自身が食べている物を勧める。
そんな悠美に、泉凪の前に座っている千季が、泉凪の好みの味付けではないと言う。
「水園の若君に話していないんだ。黙っててくれないか?」
「あぁ、すまない。目の前で勧めているものだから、ついね」
二人とも笑みを浮かべているが、何処か不穏な空気を漂わせている。
そんな二人を苦笑しながら、見る心大と、一つため息をつく泉凪。
「少しなら甘い味付けでも食べれるから、悠美のも頂くよ」
泉凪はそう言って、二人からお勧めされた料理を口にする。
そんな泉凪を見て二人は「美味いか?(美味しい?)」と声を揃え聞く。
「あ、あぁ……美味しいよ」
泉凪がそう言うと、二人は「こっちも美味いぞ(美味しいよ)」とまた別の料理を勧める。
泉凪は「……頂くよ」と笑っているが、何処か戸惑っている様子。
その時、何処からともなく「二人ともやめないか。泉凪が困っているだろう?」と二人を止める声がする。
声のした方を見てみると、心大の隣に座る文月がおり、眉を顰め悠美と千季を見ていた。
そんな文月に千季は「文月も食べる?」と泉凪と同様に料理を勧める。
「いらないよ。というか、それは君が苦手な物じゃないか。どさくさに紛れて、渡そうとするんじゃないよ」
「これを食べると背が伸びるよ」
「身長は今関係ないだろ!」
そう文月と千季が言い合っている横で、尚、泉凪に食べ物を勧める悠美。
そんな二組の光景を見て(何だか今日は賑やかな食事だな……)と他人事のように見ては、心大は食事を続ける。
「所で、火翠の若君はあまり人と関わるのは得意ではないと思っていたのだけれど、そんな事なかったようだね?」
食事を摂り終えた頃。
文月はお茶を一口飲み、唐突にそう口にする。
そんな文月の言葉に心大も、湯呑みを持ちながら「あ、僕も同じこと思っていました! それに、泉凪とそこまで親しいところを見た事がなかったので、驚きました」と言う。
「確か、視察先が同じだったね」
「もしかして、その時ですか? 仲良くなったの」
文月と心大の言葉に悠美は「まぁね」と笑みを浮かべる。
心大は「そう言えば千季さんも、あまり他の神力者と話をしているところをあまり見ませんよね」とこれまた唐突に言う。
千季は「唐突だね。そうかな?」と笑う。
「他の神力者とあまり話さなくて、だけど実力は神力者たちの中でも上位に入り、女性に人気がある……火翠の若様と千季さんって似ていますね!」
悪気ない笑顔で、キラキラとした目を浮かべそう言う心大に、悠美と千季は「一緒にしないでくれるか?(もらえるかな?)」と声が重なる。
「真似しないでもらえるか? 水園の若君」
「それはこっちのセリフだよ、火翠の若君」
そう言い合う二人を見て「……僕、何かまずいことを言いました?」と慌てる心大と、呆れてため息をつく文月。
そんな光景を見て、泉凪は苦笑する。




