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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 私のだ

 


 「お前か!! 私の婚約者を奪ったのは!!」

 



 突如、その様に言葉を荒げる女性。


 そんな女性の肌は、血が全く通っていないかの様に色白く、唇にも血色がない。表情はとても恐ろしく、人間と言うよりは、人ではない〝何か〟の様に思える。




 泉凪の顔ギリギリに、恐ろしい表情を浮かべ近づき、長い髪の毛は泉凪の首や体に巻き付く様に纏わりつく。



 そんな状況下でも、泉凪は(凄い邪気だ……やはり、怨霊になってしまっていたか)と冷静だ。




 「返せ……私の婚約者!!」




 そう叫ぶ女性の怨霊に、泉凪は「私は貴女の婚約者を取ってなどはいない」と返す。


 だが、そんな言葉を信じるはずはなく、纏わりつく髪の毛に力が入る。




 「こうやって、関係のない人たちをここに招き入れては、捕まえ、婚約者を奪ったのだと決めつけているのか?」


 「ここにやって来た、他の者たちはどこにやった?」




 普段の人当たりのいい雰囲気から、想像できないほど、思わず震え上がってしまう様な怖い表情で泉凪は女性の怨霊にそう問いかける。


 だが、女性の怨霊は全く話を聞いておらず「私の……私の……」とぶつぶつと呟いている。




 泉凪は一つため息をつき「私とともにここへと来た彼は、貴女の婚約者ではないし、私は貴女の婚約者を取ってなどいない」と呆れた様に怨霊に言う。



 すると、怨霊は「違うわ……! あれは私のよ……!」と更に纏わりつく髪の毛に力を入れ、泉凪は首に纏わりつく髪に締め付けられ、息ができなくなる。



 その時だった。




 「泉凪!!」




 突如、そう名前を呼ぶ声が聞こえて来たかと思えば、首から髪は離れ、薄暗い空間からどこかの部屋の中に変わったのだ。



 泉凪は息を吸えるようになり、その場に手をつき咳き込む。




 「泉凪!! 大丈夫か?」




 そう言って、泉凪の肩を支えたのは、はぐれてしまった筈の悠美だった。




 「火翠の……よく、居場所がわかったね……」


 「一瞬、声がしたからな。無事でよかった」




 そう言う悠美の額には汗をかいており、声は若干震え、安堵の表情を浮かべている。


 二人がそう話をしている時「……私の……私の婚約者……!!」と女性の怨霊は悠美を見て手を伸ばしている。




 悠美は咄嗟に、泉凪を庇う形で泉凪の前に自身の体をやり「……怨霊になっていたか」と呟く。




 「やっぱり、お前が取っていたのか……よくも、よくも……私の婚約者を……」


 「私の婚約者を返せ!!」




 そう怨霊が叫ぶと、長い髪の毛が泉凪たち目掛け、伸びてくる。



 

 「これは私のだ」


 「え……」




 だが、泉凪の言葉により、怨霊と髪の動きは止まった。


 かと思えば、みるみる邪気は抜けてゆき、先程までの怨霊の姿とは変わり、普通の女性の姿へと変わったのだ。




 「元の姿に、戻った……? 亡くなってはいなかったのか?」


 「いや……既に亡くなってはいる筈だよ。けど、真正面から自分の婚約者ではないと突きつけられ、邪気が払われたのかも」




 泉凪は、大人しくなり、真っ直ぐ一点を見つめ正座をする女性を見ながら、冷静にそう言う。



 すると、女性は恨みながら語るでもなく、悲しみながら語るでもなく、ただ静かに自身のことを話し始めた。

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