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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 突然に

 


 再び、月花邸へと向かうため、歩みを進める泉凪と悠美。


 その途中で、それぞれの郷について話をしていた。




 「火翠の郷では、火翠家の名前の由来の、赤く中で炎が燃える翡翠が沢山取れるんだよね?」




 泉凪の言う通り、火翠の郷で取れる翡翠は、赤く中が燃えており、火翠の人間の神力に触れると更に激しく燃え、その力で周りにある火翠も燃え出し、あたり一面まるで赤い炎に囲まれたようになり、何とも幻想的な光景なんだとか。



 

 泉凪の言葉に悠美は「月光花のように、火翠では沢山取れるぞ」と頷く。




 「そうなんだ。ぜひ一度、見てみたいものだね」


 「なら、今度火翠の郷に招待するよ。」




 そう笑う悠美、泉凪も「それは楽しみだ」と笑う。







 「何だか穏やかな場所だな」




 月花邸にやって来た泉凪たち。


 庭が見える開けた部屋を見渡しながら、悠美はそう呟く。




 「皇宮と違って、狭いところだけど」




 悠美は火翠の人間だが、郷ではあまり過ごしたことはなく、ほとんどを皇宮で過ごしていた。


 泉凪にそう言われ、悠美は「皇宮より落ち着くよ。穏やかな空気が流れて、とてもいい場所で育ったのだな」と優しく微笑む。




 そんな悠美を、ハナは見つめたかと思えば視線を逸らす。




 「何だか甘い香りがするな。もしかして、月光花の匂いか?」




 悠美の言葉に、悠美の分のお茶を淹れている泉凪は「そうだよ」と手を止める。




 「邸の庭に沢山咲いているからね。部屋の中まで香ってくるんだ。月光花の香りには、心を落ち着かせる作用があるから、月花の郷の人は皆、よく戸を開けっぱなしにしているんだよ」




 「そうなのか」と頷く悠美。


 ふと、近くの家の柱が目に止まり見てみると、そこには何やら文字が彫られていた。




 「いずな、こと……」




 彫られてある文字を読み上げる悠美。


 そんな悠美の隣に並び、泉凪は「懐かしい〜」と目を細める。




 「もしかして、幼い頃の身長か?」


 「そうだよ。私も花都も幼い頃、身長があまり変わらなくて、よくどっちが高いか競っていたなぁ……」




 「今は、花都の方が遥かに高いけど」と懐かしそうに話す泉凪。


 そんな泉凪を見て、悠美は「いい思い出だな」と優しく微笑む。




 その時、何やら庭が騒がしくなり「泉凪お姉ちゃん! 遊ぼー!」と子どもたちが縁側に集まって来た。


 泉凪は「皆んな、久しぶりだね」と庭に降りる。




 「皆んな、何して遊んでいたの?」


 「んーとね、影踏み鬼してたの〜」


 「影踏み鬼〜?」




 そう楽しそうに子どもたちと話す泉凪を見て、悠美は「泉凪と話している時の郷の人たちは皆、楽しそうですね」とハナに言う。


 ハナは「……泉凪の存在は希望ですから。郷のものにとっても、私にとっても」と返す。




 そんなハナは何とも言えない、微笑んではいるが、どこか切なく見える表情をしており、悠美は言葉を詰まらす。



 その時だった。




 「泉凪ちゃん! お師匠さん! 大変だよ!!」




 慌ただしく、どこか焦った様子の一人の女性が泉凪たちの元にやって来た。


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