当主継承編 思うこと
彩の町。
月花家が統治し、綺麗な花々が鮮やかに咲き乱れ、沢山の出店が並び、活気にあふれている。
彩の町で造られる彩の酒が酒飲みの中で有名で、幼い頃か、月花家が統治していると言うこともあり、何度もハナに連れて行かれたことがあるらしく、泉凪にとっても馴染みがある町。
「え〜俺、文月ちゃんとかよ」
一通り、各神力者たちの視察先や組む相手が発表され、座学も終え従者の座学が終わるのを待っている最中。
涼雅は寺小屋机に突っ伏しながら、そうぼやく。
そんな涼雅の隣でぼやきを聞いていた文月は「それはボクの台詞だよ。」と眉を八の字にし、ジトっと涼雅を見る。
「心大がいるのが幸いだね」
文月にそう言われ、心大は「が、頑張ります!」と意気込む。
「……皆んな、思いもよらない相手と組まされたね。雪乃くんもそう思わない?」
文月たちのやり取りを側で、見ていた千季は、両腕を着物の袖に入れ、隣にいる雪乃にそう問いかける。
雪乃は「私が相手なのが不満か?」と聞き返す。
「……雪乃くんと組めて嬉しいよ」
「今、間があったぞ」
「まさか」
そう笑う千季に雪乃は「まぁ、どうでもいいが」と返す。
「……まさか、火翠の若君と組むとはね。」
そう笑う泉凪に、悠美はニコッと笑みを浮かべ「そうだな。」と返す。
やはり、どこかぎこちなく見える二人。
「頼もしいよ」
「月花の姫君にそう言ってもらえるとは、光栄な事だな」
そう言って二人は笑う。
そんな二人を見た、悠美を迎えに来た心温は、眉を顰め入り口のところで立ち止まる。
「心温さん? 入らないんですか?」
花都は心温にそう声をかける。
心温は「あ、あぁ……」と曖昧な返事をし、部屋に入る。
「悠美、お疲れ様」
「泉凪もお疲れ様」
二人がそう声をかけると、泉凪と悠美は振り返り、悠美は「来たか。それじゃあ月花の姫君。私は先に失礼するよ」と言い心温に行くぞと声をかける。
「え? あ、あぁ」
先に行く悠美を見て、心温は(やっぱり……)と心の中で呟く。
◇
「なぁ、悠美」
火翠宮の庭で、木刀を振るい、鍛錬する悠美の名を心温は呼ぶ。
悠美は鍛錬を続けながら「何だ?」と心温の話に耳を傾ける。
「どうして、月花様にだけ冷たい態度をとるんだ?」
唐突にそんなことを聞かれ、悠美は鍛錬をする手を止め、心温の方を振り返る。
そして「別に冷たくした覚えはないが」と言う。
悠美の言葉を聞き、心温はこれまでの悠美が泉凪と話している時の姿を思い出し「そうなのか?」と尋ねる。
「いや、違うな!! 確かに月花様にだけ冷たいぞ! お前は人当たりが良く見せるのが上手いから、他の人には分からないだろうが、俺には分かる!!」
そう声を張り言う心温に、悠美は呆れた表情を浮かべ「仮にも主人に向かって言う言葉か」と呟く。
だが、そんな言葉は心温に聞こえておらず「お披露目会の時、あんなに必死に月花様を手当てしていたから、思い違いかとも思ったが、やはり月花様に対してだけ冷たく思える」と言う。
「そんな事はない」
「いいや! 幼い頃からお前と一緒にいる俺が言うから間違いない」
そう鼻息を荒げながら言う心温。
そんな心温に悠美は「……本当に冷たくしているわけではないが、一つ、心当たりがある」と言い、心温に話し始める。
そんな悠美の話を心温はただ黙って聞いている。
その日から一週間経ち、神力者たちが視察に向かう日となり、心温は悠美を見送りに来ていた。




