当主継承編 不穏な
「くそっ! 何だあれは!!」
お披露目会を終えた後の地星宮、晃の部屋の中。
何やら荒れている様子の晃は、従者に「何をぼーっとしている!! 茶を持ってこい!!」と当たる。
従者は「は、はい。只今……!」と声を震わせ慌ててお茶を入れに行く。
(体が痺れる程度の毒と言っていたのに、倒れるほどとは……くそっ!! 騙された!!)
そう机に自身の拳を叩きつける晃。
(これで、月花に何かあったら俺はどうなる……? 俺が指示したことは絶対にバレることはないと言っていたが、信じていいのか?)
どうやら、泉凪に毒を刺すよう命じたのは晃だったらしく、自身が命じたことがバレるのではないかと怯えている様子。
(ちょっと毒を刺し、弓引きを失敗させるつもりだったのに、何でこんな大ごとに……)
そう頭を抱える晃。
ちょうどその時、お茶を入れ終えた従者が戻ってき、晃にお茶を出す。
そして「そ、そう言えば月花様は大丈夫なんでしょうかね……?」と空気を変えようと試みる。
だが、その話題は晃の怒りをさらに買い「貴様!! 月花の名を俺の前で二度と出すな!! いいな? 次出したらお前をここから追い出すからな!!」と怒鳴られる。
「ももも、申し訳ございません……!!」
晃は淹れたてのお茶を一気に飲もうとし「あっちぃ……!!」と声を上げ「くそっ……!!」と乱暴に湯呑みを置く。
(とにかく、雇った女には大金を渡しているし、俺は直接関わっていない。雇った女の証拠も綺麗に消したと言っていた)
(大丈夫だ。堂々としていればいいんだ……!!)
晃は右の手の親指の爪を噛み、一点を見つめる。
◇
「まだ、月花の姫君に毒を刺した者は見つからぬのか?」
皇帝が住まう宮殿内の一室にて、丸く大きな窓から月明かりが差し込み、室内は青っぽく照らされる。
窓台に腰をかけ窓の外を眺める皇帝は、少し離れた場所に立つ仁柊に、そう尋ねる。
「はい……尽力しているのですが、これと言った証拠が出て来ず、困難している状況です。」
お披露目会での出来事から一週間ほど経つも、未だに泉凪に毒を刺した者を見つけられていない状態。
仁柊の言葉を聞き皇帝は「……そうか」と頷くと、仁柊の隣で同じく立つ大神官、藍良に「藍良の方はどうだ?」と尋ねる。
だが、藍良は首を横に振り「我々の方も全くと言って良いほど、何も手掛かりがありません」と言う。
「神力者が毒を刺されているんだ。何が何でも探し出しだせ。見つからないは話にならんぞ」
いつにも増して、声が低く真剣な面持ちでそう言う皇帝。
そんな皇帝を見、仁柊と藍良は息を呑む。
「さぁ! 重たい話はこの辺にして、今日は他に話があるのだろう? 何だ?」
先程までの背筋が凍る様な雰囲気とは一変し、いつもの様な調子の良い口調に変わる皇帝。
その温度差で風邪を引きそうになる仁柊と藍良だが、もう慣れているので切り替え、もう一つ皇帝に報告をしなければならないことを話す。
「陛下、視察を行う際の各神力者方の視察先と、組む相手が決定致しましたので表を持ってまいりました」
仁柊はそう言い巻物を皇帝に渡す。
「そうだったな。もうその様な時期か。すっかり忘れていた」
「いやー、歳は取るものではないなぁ。」と笑う皇帝。
仁柊は咳払いをし「陛下、ご覧になられてください」と言う。
「せっかちだな、仁柊は。言わなくてもちゃんと見るぞ……どれどれ。ほほぉ、これはこれは」
皇帝は巻物に書かれある事を見ると、片方の口角を上げ笑い「中々面白い組み合わせじゃないか」と意味ありげに言う。




