当主継承編 火の神力
「おかしいな……」
皇宮内にある医務室、そこでは薬棚を開き中を見ている医者がおり、何処か顔を曇らせていた。
その時、入口の方で音がし「何だ?」と見てみる。
「どどど、どうされたのですか!?」
医務室に泉凪を抱え現れた悠美を見て、医者は顔を青ざめ慌てる。
そんな医者とは対照的に悠美は落ち着きながら「右腕を怪我しているみたいなんだが、弓引きを終え倒れそうになったんだ。もしかしたら何か他にあるかもしれない」と説明しながら泉凪を畳を重ね作られた病床に横にならせる。
泉凪は意識はあるようだが、痛むのか冷や汗をかき、苦しんでいる。
そんな泉凪を見た医者は「もしや……」と呟き、泉凪の右腕を見る。
「なっ……! これ、毒か……?」
泉凪の右腕は、全体的に腫れ上がり、傷部分から膿んでおり、先ほどよりも酷い状態だった。
悠美の問いかけに医者は頷く。
「大量の冷や汗に唇が紫になっていますし、この傷跡、間違い無いでしょう。よく、弓引きを終えるまで倒れませんでしたね。普通の人は直ぐに倒れますよ」
医者がそう驚いている時、突如「泉凪様は毒に耐性があられますので」と声がする。
振り返ると、冷静だが顔を曇らせた花都と心温がおり、医務室へと入ってくる。
「耐性とは?」
「今はそれはいいでしょう。それより、泉凪様の事、治せれるんですよね?」
花都の言葉に医者は顔を曇らせ、ゆっくりと口を開く。
「じ、実は恐らく泉凪様に使われたであろう毒の解毒薬だけが無いんです」
医者の言葉を聞き、悠美たちは顔を顰める。
「どう言う事だ?」
「ゆ、悠美様が来られる前、薬の補充を行おうと薬棚を見ていたのですが、例の解毒薬の棚を開けてみると、昨夜までは確かにあった薬草が跡形も無くなっていたのです」
声を震わしながら「恐らく泉凪様に使われたであろう毒は、神守の国にしか咲かないと言われている毒草で、その解毒薬しか効かないのです」と説明する医者。
「薬草は私が取りに行くとして、それまでに泉凪様が持つか……」
そう言って苦しむ泉凪を見る花都。
作られた拳にはグッと力が入っており、少し血が滲んでいる。
「他の解毒薬を投与するのは?」
心温の言葉に医者は「特殊な毒なので帰って悪化させるかと」と首を横に振る。
一体どうすればと皆が頭を抱える中、悠美が突如「私の火を使う」と言いだす。
「火を使うとは?」
「そのままの意味だ。私の神力である火を使い、傷部分を焼く」
その言葉に皆は驚き医者は「お言葉ですが、焼いたとて毒が消えることはありません」と止める。
「生憎、私も毒には耐性があり大抵の毒に対して私の火は、解毒する力を持っている。そんな私の神力を使い傷部分を焼けば完全にとはいかないが、薬草を取ってくるまでの時間稼ぎにはなる」
医者は悠美の言葉に戸惑うも、花都は「出来ることなら何だってしてください」と言い悠美は泉凪の右腕の傷部分に手を当てる。
その間、薬草を取りに行くため、花都は医務室から出て行く。
悠美は目を閉じ、集中する。
悠美の手のひらから僅かに炎がで、傷口に当たり煙が出る。
「ゔっ……!」
痛むのか呻き声を上げる泉凪。
そんな泉凪に「もう少しだ」と声をかける。
「……これで大丈夫だ」
火を当て終えると、傷口が塞がり、先ほどまで呼吸が荒かった泉凪だが、穏やかになっている。
医者はほっと息を吐く。
「完全に毒を消し去ったわけでは無いからな。後は、薬草を持って帰ってくるのを待つだけだ」
悠美はそう言うと医者が「私はこの件を陛下にお伝えしてきます。直ぐに、部下を呼んで参りますので悠美様方はお戻りになられてください」と言う。
だが、悠美は「いや、薬草を持って帰ってくるまで私が姫君を見とくよ」と椅子に座る。
「で、ですが……!」
「誰が彼女に毒を刺したか分からぬ状態だからな。安易に他人を近づけるわけにはいかない。それにそんな阿呆な真似をする輩はいないと思うが、刺客が来た時に私がいれば守れるだろう?」
そう煌びやかな笑みを浮かべる、悠美の話を聞き(悠美様も泉凪様からしたら他人では……?)と考えるも、その言葉を飲み込み「では、直ぐに戻って参りますので」と医務室を後にする。
そのやり取りを見ていた心温は(まさか、悠美が見とくと言うとは……どう言う風の吹き回しだ?)と不思議そうな表情を浮かべる。




