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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 憩いのひと時

 


 四方八方、吹き抜けた畳の部屋に囲まれた宴会場、そこには選ばれた国民らが神力者たちを一目見ようと集まっていた。




 「ねぇ、見て! 束帯そくたい姿の神力者様たちは本当にお美しいわ〜」




 そう一人の女性は頰を赤くし、うっとりとした表情を浮かべ、中央の宴会台に座る神力者たちを見る。



 神力者たちは皆、お披露目会では黒の束帯を着用することが義務付けられているため、皆、黒の束帯に冠を被っている。


 その姿は美しく絵になり、女性に続けるように、他の者たちも「神々しい」「何て美しいの」と口々に言う。




 「せっかくの宴の場だと言うのに、泉凪と席が離れてしまい、つまらないな」




 そう言いながら目の前に置かれた内側が赤く、外側が黒く染められた宗和膳そうわぜんに乗っているお猪口を手に取り、中に入っているお酒を一口飲む。




 「席の順番って一体、どう言った順番なんですかね?」




 そう呟きながら辺りを見渡すのは、千季の隣の席になった心大。


 そんな心大に千季は「さぁ……適当なんじゃないかな」と返す。




 「泉凪の近くじゃない上、従者は別の席に座らなきゃいけないだなんて、不安だなぁ……」




 お披露目会の宴会台には神力者以外の者は立ち入ることは許されておらず、心大の言う通り、従者たちは宴会台から少し離れたお座敷に座っているのだ。




 心大がそう呟いたと同時に、宴会場に泉凪と花都が入ってくる。




 「あ、花都さんは濃い桔梗色の狩衣だ」




 心大の言葉を聞き、千季は「月花家の従者だからね」と頷く。



 従者たちは狩衣かりぎぬを着用されることが決められており、狩衣の色も各家の色のものと決められている。




 「一度にこんなにも大勢の人に見られることは初めてだから緊張しちゃうな」




 泉凪はそう言いながら、宮女に案内された場所に腰を下ろす。


 そして、隣にいるものに「火翠の若様もそう思わない?」と声をかける。



 声をかけられた悠美はニコッと笑みを浮かべ「そうだな」と返す。


 そんな二人のやりとを聞いていた、泉凪の右隣に座る雪乃は「全く緊張しているようには見えぬが」とつっこむ。




 「ふふっ……お二人とも、表情を表に出されないのが得意なのですね」




 そう、笑う悠美の左隣に座る若菜。


 そんな若菜に泉凪は「火翠の若様ほどではないよ。ねぇ?」と悠美に話を振るも、悠美は「はて、何のことやら」としらを切る。




 その時、辺りが一段と騒がしくなり、見てみると皇帝陛下が宴会場へとやってき、一際豪華な宴会台に腰を下ろす。


 その斜め後ろに従者である仁柊も腰を下ろす。




 宴会台には神力者しか上がれないことになっているが、皇帝陛下の従者だけは特別に上がれることになっている。


 また、皇帝陛下に束帯の着用の義務はなく、皇帝は着物を着用している。




 皇帝陛下が着席したのを合図に、お披露目会が始まった。


 初めに、お披露目会が何事もなく終えれるよう、数人の巫女が神楽を披露する。



 そして、巫女が神楽を終えると、皇宮が認めた楽団や舞手まいてらがそれぞれ、音楽や舞を披露する。




 「こんなにも楽しい宴の場で、最後に弓を引くからとお酒を飲むのを禁じられるとは……中々酷なことだね」




 舞を見ながらそう呟く泉凪。


 弓引きに選ばれたものは、お披露目会が終わる直前に弓を引くため、お酒を飲むことを禁じられており、泉凪たちは先ほどからお茶を口にしている。



 だが、お茶では物足りないのか、泉凪は不満そうだ。




 「酒に酔って恥を晒すよりかはいいだろ」




 そう言って水を一口飲む雪乃。


 そんな雪乃に泉凪は「……そう言えば、雪乃はお酒が飲めないと聞いたが?」と問う。




 その話を隣で聞いていた悠美は「ほぉ……? 飲んでも酔わなさそうな顔をしているのに飲めないんだな」と言う。




 「……何処からの情報か知らぬが、私は飲めるぞ」


 「そうなの? 千季が言っていたからそうかと」




 泉凪がそう言った時、若菜がクスッと笑いながら「私も、氷彩の若君はお酒が飲めないと記憶しております」と言う。




 「な……!」


 「ほら。若菜が言うなら本当でしょ」


 「あぁ、そうだな。」




 三人にそう言われ、雪乃は「そこまで言うなら今度、晩酌をする時宮に招待する。そこで飲めることを証明して見せよう」とムキになる。


 普段、仏頂面な雪乃がムキになっているのが珍しく、泉凪たちは「それは楽しみだな」と笑う。


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