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皇宮の花嵐  作者: 透明
192/205

皇位継承編 教えて



 翌日の午前九時ごろ。


 泉凪たちは、少年たちが住む地下の部屋の近くにある、誰も寄り付かず、使われていない部屋へとやってきていた。




 泉凪は、壁にもたれかかり、腕を組みながら「来てくれるかな」と言う。


 昨日、泉凪は彩に、少年たちをまとめる役だと言う、はるかと言う少年に、話があるから泉凪たちが今いる場所へと来てほしいと、伝えてと頼んだのだ。




 旅館を取り締まるのに、少年たちの協力があれば、より、早く取り締まることができると考えたからだ。


 


 「来なかったら来なかったで、私たちだけで頃合いを見て取り締まれば良いさ」


 


 そう言う悠美に、泉凪は「そうだね」と頷く。


 その時だった。



 扉の近くでガサッという音が、聞こえてきた。


 心温は「見てきます」と言うと、扉に近づき確認する。



 すると「来てくれたのか」と言う声がしたかと思えば、一人の少年が、どこか警戒しながら部屋に入ってくる。


 その少年は、先ほど泉凪たちが話をしていた遥と言う少年だ。



 そんな彼に、泉凪は「遥くん、だよね? 急に呼び出してしまって申し訳ない。けど、来てくれて嬉しいよ」と優しく声をかける。


 だが遥は、まだ警戒しているのか軽く頷くだけで、何も言わない。



 そんな遥に、泉凪は「私と彼は、君に会ったことがあるんだけど、分かるかな?」と悠美に視線やりながら言うと、遥はゆっくりと頷く。




 「よかった」




 そう笑う泉凪に、遥は「そ、それで話って何だよ……」と言うと、泉凪は「実は、彩ちゃんから君が少年たちを纏める役割をしているって聞いてね。そんな君に頼みたい事があって、今回来てもらったんだ」と言う。


 そんな泉凪に遥は「頼みたい事?」と怪訝そうな表情を浮かべる。




 「うん。もう直ぐ、この旅館は取り締まられるんだ。だから、ここで働く大人たちや客たちは皆んな、皇宮へと連れて行かれる。そうなった時に、女の子たちや君たちが危ない目に遭わないように、皆んなを非難させて欲しいんだ」




 泉凪の話を聞いた遥は「取り締まられる……?」と、訳がわからないと言った表情を浮かべる。


 だが、泉凪は話を続ける。




 「女の子たちや、君たちを傷つけたくないし、誰一人と残さず絶対に皆んな助けたい。そうするためには、君たちの協力が必要なんだ」




 そう言う泉凪の言葉を聞き、遥は「待って」と言うと、困惑したように言う。




 「もう直ぐ取り締まられるって? あんたらも客だろ? 何でそんなこと知ってんの? ていうか、何でそんなことあんたらが俺に頼むの?」




 そう尋ねてくる遥に、泉凪は言う。




 「ごめんね、名乗り遅れてしまったね。私たちは皇宮から、この旅館に潜入捜査に来ている、月花家当主の月花泉凪って言うんだ」




 そう言う泉凪に続け、悠美も「同じく、火翠家当主の火翠悠美だ。それから、彼らは私と泉凪の従者だ」と紹介する。


 泉凪と悠美の言葉に、遥は「当主って……神力者ってこと……? それに、皇宮からって……本当に?」と疑っているよう。



 それも無理ない。


 泉凪たちは今、身分を隠すため、仮面をつけ外見を変えているから、信じられないのも当然だ。



 泉凪は「あぁ、これが邪魔だね」と言うと、つけている仮面を少し外し、顔をのぞかせる。


 すると、黒色の髪は綺麗な桔梗色になり、美しく整った顔が見える。


 

 同じく悠美も、仮面を取ると、綺麗な蘇芳色の髪になり、これまた恐ろしく整った顔が見える。




 生で見た事がない遥でも、その特徴のある髪色と、美しい見た目で彼女らが神力者である事がわかる。


 泉凪は「これで信じてもらえたかな?」と言うと、遥は俯く。



 そんな遥に、泉凪は「遥くん?」と尋ねると、遥は言う。




 「何で今になってくんだよ!!」




 そう声を荒げる遥の表情は、怒りや悲しみが混じっている。


 そんな遥に驚きながらも、泉凪たちは遥の話に耳を傾ける。




 「俺たちはずっと、皇宮の人間が助けに来るのを待ってた!! けど、待っても待っても来なくて、姉ちゃんは……!!」




 そこまで言うと、遥はむせたのか咳き込む。


 そんな遥に、泉凪は「……ごめん、遅くなってしまって。私たちが来るのが遅かったせいで、君たちがたくさん傷ついてきた事はわかっている。だけど、遅くなってしまったけど、それでも私たちは遥くんや皆んなの事を助けたい。だから、遥くん君のことを教えて。ここに来るまでのこと、そしてここに来てからのこと」と言う。




 その表情や声は真っ直ぐでとても真剣で。


 だが、暖かく。



 思わず、自身の事を話してしまいたくなるような、そんな思いが出てきた。


 

 そして遥は、ゆっくりと今まであった事を思い返すように、話し始める。

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