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皇宮の花嵐  作者: 透明
191/209

皇位継承編 見られてる気がする

 


 旅館の廊下を歩く泉凪と悠美。


 泉凪はふと足を止め振り返る。



 すると、小さな人影のようなものが、曲がり角に隠れるのが見える。


 

 突然足を止める泉凪に、悠美は「どうした?」と尋ねると、泉凪は「うん……実はね」と言う。




 「何だか朝食の時からずっと、見られてる気がするんだよね」




 そう言う泉凪に、悠美は「見られてる!? 誰にだ!? 何もされてないか…!?」とすごい勢いで言う。


 そんな悠美に泉凪は「大丈夫だから、落ち着いて」と落ち着かせる。




 「ほら、昨晩、悠美と止めに入った時にいた、一つ結びをしている少年いたでしょ?」




 泉凪の話に、悠美は「あぁ……」と昨晩の出来事を思い出す。


 そして、突如固まったかと思えば「……そう言えば、昨晩はすまなかった。何か、変な事を口走ったことだけは覚えているのだが、あまりはっきり覚えていなくて、だな。その……」と気まづそうに目を逸らす悠美。



 そこまで言った悠美に対し、泉凪は「安心して。何もしてないよ」と言う。




 「そ、そうか。その……ほんとすまない」


 「酔っている悠美は面白かったよ」




 そう言って笑う泉凪に、悠美はホッとする。




 「一つ結びをしていた少年なら覚えている。彼に見られているのか?」




 悠美に聞かれ、頷く泉凪。


 泉凪は、今朝、彩と話をする前にあった事を、悠美に話し、その後の朝食の配膳に少年がやってき、じっと見られていた事、そしてずっと何やら後をつけられている事を話す。




 「なぜ、泉凪の事をつけているんだ? 何か言いたいことがあるのか?」


 「分からない……彩ちゃんは、今朝話したこと夜に少年たちに話をするって言っていたし、その件で私に用があるわけではなさそうだけど」


 「まさか、私たちの正体に気づいたとか?」




 そう言って、顎に手をやる泉凪。


 そんな泉凪に、悠美は「まぁ、バレていたとしても、問題はないだろ」と言うと、泉凪は頷く。




 そして、再び後ろを振り返ると、少年は泉凪の事を見ていたのか、サッと隠れる。




 「しばらく様子を見ていようか」


 「そうだな」




 それから一日中、少年は泉凪の後をつけ、ずっと泉凪の事を見ていた。


 見ているだけで、話しかけてくるわけでもなく、何をするわけでもなく。




 ただ、ひたすら泉凪をずっと見ていた。







 「はる、何処行ってたの?」




 少年たちが生活をしている、地下の部屋。


 そこは薄暗く、ゴミのようなものが溢れかえっている。



 そこに、一人の一つ結びをした、少年が戻ってくると、部屋にいた少年はそう言って一つ結びをした少年に駆け寄る。


 はると呼ばれる少年は、どうやら今日一日中泉凪の後をつけていた少年だった。



 はると呼ばれる少年は「ちょっとな」と言う。


 その時「はる!」と呼ぶ、少女の声が聞こえてきた。



 はるは、声のした方を見ると「彩! お前、ここに来たら怒られるだろ……!」と駆け寄る。




 「大丈夫だよ。バレないように来たから!」




 そう言って笑う彩。


 それは、綺麗に着飾り客の相手をしている時とは違い、年相応の表情をしている。



 そんな彩に、はるは「バレないようにって、用があるなら俺らが行くって言ってんのに。どうしたんだ?」と聞くと、彩は頷き「伝えたいことがあって」と言う。




 「今朝助けてくれたお客さんいるでしょ? いずみさんって言うんだけど、はるたちと話をしたいんだって! だから、もし話をしてくれるなら明日の朝九時にここの部屋の近くまでくるから会おうって」




 そう話す彩の言葉を聞き、はるは「はぁ? 話がしたいって、彩信じたのか? 絶対罠に決まってるだろ! 俺たちを呼び出して、絶対なんかしようとしてるだろ!」と言う。


 だが、彩は「そんな人じゃないよ。はるも知ってるでしょ?」と言い、はるは今朝のことを思い出す。




 「でも、所詮はここの旅館を利用してる奴だぞ」


 「そうだけどさ。とにかく、伝えたからね!」




 彩はそう言って、部屋から出ようとすると、はるは彩に「何か彩、楽しそうだな」と言う。


 すると彩は「うん。よく私の話を聞いてくれるんだ。お父さんとお母さんの話も楽しそうに聞いてくれるの」と言うと、階段を駆け上がって行く。




 そんな彩を見届けるはるに、隣にいる少年は「どうするの?」と尋ねるも、はるは「行くわけないだろ!」と布団に潜る。

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