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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 距離ー2ー



 『男に守られることしかできないくせして、神力者として皇宮にいる事自体、身の程知らずなのだ。女は大人しくしていたらいいものの』


 『月花の姫君がまた、当主になれば郷は滅びるに違いない』




 丁度、泉凪と一緒に話をしていた千季は、聞こえて来た声に腹が立ち、止めに入ろうとした。


 だが、そこで一瞬我に帰る。




 (女は男に守られるしかないとほざくあいつらの事だ。このまま僕が止めに入ったら更に泉凪の事を悪く言うのでは……?)


 (ならば、神官を呼び納める方が、泉凪にとって一番良い方法なのでは?)




 そうこう考えているうちに、悠美と文月がやって来、止めるタイミングを逃した千季は、神官を呼びに行く事にした。



 実際、千季の思った通り、悠美たちが止めに入ったことにより、泉凪が女性だから悠美たちが庇ったと戯言を言った晃だった。




 そうとは知らない文月が、千季に怒るのも無理もない。


 だが、千季は弁明しようとはせず「あぁ、そうだね」と文月の言葉に頷く。




 「なっ……!」


 「僕も、自分のことが心底嫌になるよ」




 そう言って自嘲気味に笑う千季。


 

 幼い頃から何でも器用にこなし、神力も他の水園の人間や神力者たちより強かったため、周りの人は千季をもてはやし、期待した。


 一方で、千季が少しでも失敗したりすると、周りの人間は失望した顔を見せてくる。


 そんな環境で育ち、自然と周りの空気を読み、常に自分が周りに何を求められているのかを感じ取り、振る舞っていたため、いつでも冷静に、他人にとっての最善の行動を取る事を考える癖がついてしまい、感情的に行動することが出来無くなってしまった。



 冷静に物事を考えられることは決して悪いことではない。


 ただ、そのせいで千季は他人との距離を縮める事が出来ずにいるのだ。




 そんな自分が昔から、心底嫌いな千季。


 文月が怒るのは正しいと、言い返す気にはなれない。



 どこか、様子がおかしい事に気づいた文月は「……どうしたんだい? らしくないじゃないか」と尋ねる。




 「いや……あの場に文月や火翠の若君がいてくれて良かった。」




 そう言い残し、千季は弓道場を後にする。


 一人残された文月は一射も当たっていない、的を見つめる。







 「わぁ……! ここが神守山……!」




 座学三日目。


 その日は、皇宮内にある神守山しんしゅざんへと、やって来ていた神力者たち。



 青々とした草木が生い茂り、静かで穏やかな空気が流れる神守山は、神力が流れており不思議な植物や生き物がいる。


 神力が流れている事により、神力を持つ神力者たちからすれば、とても心が落ち着き過ごしやすい場所となっている。




 神守山には、神力者や霊力を持ち得る神力者の従者や神官、巫女しか入る事が出来ない上、許可がないと入れないため、神力者たちは皆今回初めて神守山に来、皆どこか浮かれている様子。



 心大もまた、そのうちの一人で初めて来る神守山に目を輝かせながら「見て! 泉凪! 見た事ない生き物がいるよ!」と目にしたもの全てを泉凪に報告する。


 そんな心大にまるで幼子みたいだなと笑う泉凪。




 「師匠が言っていた通り、穏やかでなんだか落ち着く場所だね」




 泉凪の隣でそう言い、空気を吸い込む花都。


 泉凪は「そうだね」と頷く。




 その時、背後から「泉凪」と呼ぶ声がした。




 「あぁ、千季か。おはよう」




 泉凪の事を呼んだのは千季だった。


 だが、いつもの柔らかい雰囲気の千季ではなく、どこか思い詰めた様な雰囲気をしていた。


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