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皇宮の花嵐  作者: 透明
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皇位継承編 神々

 


 文は『泉凪へ』と言う文字から始まり、当主や力が強いものだけが、使う事ができると言う力について書かれていた。




 『当主や力の強いものが使える力、それはたった一度だけ、心の底から愛している相手が、目を覚まさなくなってしまった時、口付けをすれば、月光花の力で助ける事ができると言うものだ』




 美しい字で綴られる文字を読む泉凪。


 『心の底から愛している……』と呟くと、文の続きを読む。




 『絶対に心の底から愛している相手でないと、その力は作用しない』


 『父は母を助ける時、その力を使う事が出来た。父にとって母は、心の底から愛している相手だったんだ』




 そう書かれた、父と母の話を見、泉凪は思う。


 心の底から愛している相手にだけ、使う事ができると言う力。



 父は母にその力を使ったと書かれてあった。


 それはとても素敵な事だ。



 けれど、自分がもし心の底から愛していると思う人物が現れ、その人物が死の間際に立たされた時、その力を使おうとして使えなかったら?


 そうなった時、きっと酷く傷つくし、相手のことを酷く傷つけるだろう。




 ただでさえ、人を好きと言う気持ちが分からないのに、そんな力を私に使うことはできないだろう。




 泉凪はそんな事を考えながら、再び文に目を通す。




 『それから、薬も飲み続ければ毒となるように、月光花の力も毒となる陰の力がある。それは、幻覚、呪いと言う力だ』


 『発動条件は色々とあるが、その力の持ち主が酷く恨みを持った時や、酷く怒りを覚えた時に、その力は発動する。それはごく稀だが、そうなった時は』


 「毒を飲め、か」




 泉凪はそう呟くと、窓の外を眺める。


 そんな泉凪の頭の中には、とある女性が満面の笑みを浮かべ『泉凪ちゃん!』と名前を呼んでいる。



 その瞬間泉凪は、どこか悲しそうな表情を浮かべ「鈴……」と呟く。







 辺り一面煌びやかで、窓から差し込む光が、部屋の中を明るく照らし、何とも神々しく見える場所。



 そこには、狐の面を着けた六人の髪の長い者たちが、机を囲むように座り、食事をとっていた。




 「いよいよ、試験も終わりを迎えるそうだな」




 一人の、青朽葉色の髪をした者がそう言うと、隣に座る藍白色の髪をした者は「もうそんな時期か。時が経つのは早いな」と頷く。




 「我々が力を授け、何千年と経つが、年々強い子たちが生まれておる。今回の皇帝もどの力を持つ者がなるか楽しみだ」


 「あぁ。いい加減、火翠にも飽きたからな」




 そう言う紺青色の髪の者と、灰茶色の髪の者。


 そんな二人に対し、白銀色の髪の者は「どうせまた、火翠がズルをするのであろう。面白くない」と言うと、「どうにかならんもんなのか」呟く。



 その言葉に、紺青色の髪の者は「こればかりはな。我々は、下のことに口を出せぬことになっておるしな」と言う。




 「火翠に力を授けたのはお前だろう。どうにかしろ」




 白銀色の髪の者は、蘇芳色の髪の者に言うと、蘇芳色の髪の者は「人同士のいざこざは知らぬ」と言う。



 その言葉を聞き、白銀色の髪の者は深くため息を吐くと、辺りを見渡す。


 そして「そう言えば、花神はまだ戻らぬのか」と言う。




 「下の世界でやることがあるとか言って、ずっと戻って来ていないな、彼奴は」


 「やる事って……数百年もの間一体何をしているのやら」


 「我々からすれば、数百年だとそんな大した年数ではないからな。」




 藍白色の髪の者の言葉に、皆は頷くとそれぞれ食事を続ける。







 第五試験が終わってから、二日の休暇を挟み、試験が始まってから三度目となる視察を行われようと、再び、視察先を発表するべく、神力者たちは門の前へと集められていた。

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