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皇宮の花嵐  作者: 透明
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皇位継承編 噂

 


 国重邸へと戻って来た泉凪たち。


 何処か、邸の中の空気は重く、皆互いを見ては何か言いたそうにしていた。




 「お、お帰りなさいませ」




 そう言って、泉凪たちを出迎えてくれた夏目。


 だが、いつもの元気な様子とは打って変わり、何処か元気がない様子。



 そんな夏目を見て、泉凪は「どうしたのか」と思っていた時、近くにいた、他の使用人らが何やらコソコソと話しているのが聞こえて来る。


 そちらを見てみれば、その使用人らは夏目を見ており、泉凪が見ていることに気づくと、気まずそうに視線を逸らす。



 その異様な雰囲気から、何かあったことを悟った泉凪は、夏目に「何かあった?」と尋ねる。



 夏目は、一瞬視線を逸らすも「……どのみち分かることなので、お話ししますね」と言うと、泉凪たちを部屋へと案内する。







 「……清春さんと夏目さんが」




 夏目から、何があったのか聞いた泉凪たち。


 泉凪たちが、筒森と言う人物に会いに行っている間に、国重医院長が邸へと帰って来た。



 かと思えば、清春の事を神妙な面持ちで部屋へと呼び付けたのだ。




 『清春。夏目と恋人同士と言うことは本当か?』




 国重医院長は、机に肘をつき、清春を睨みつけてはそう問いかける。


 そんな国重医院長の言葉に、清春は言葉を詰まらせる。




 清春と夏目が、恋人同士なのは事実だ。


 だが、同性同士で恋人になるなど、認められておらず、そうと知れれば、決して認めてもらえないことは、目に見えている。



 その事をわかっていたから、清春と夏目は、誰にも言っておらず、二人きりで会う時も細心の注意を払っていた。


 はずなのだが、よりにもよって国重医院長に知られており、清春は驚きが隠せない様子。




 国重医院長は、清春の反応を見ては、深いため息をつくと『ただでさえ、変な目で見られていると言うのに……よりによって、我が息子がとは』と頭を抱える。




 『一時の感情に流されよって』




 そう言う国重医院長の言葉に、清春は『父さん! 私と夏目は本当に愛し合っているんです……! 一時の感情なんかではありません……!』と言い返す。



 そんな清春に、国重医院長は『尚更問題だ』と言い立ち上がると、清春の肩を両手で掴む。




 『お前は、医者としても優秀で将来、国重医院を引く継ぐ唯一の人間だ。そんな人間があろう事か、同性が好きと知れ渡れば、これまで積み上げて来たお前の信頼は落ち、お前の人生は終わりだぞ……!!』




 そう言う国重医院長に、清春は『違います、父上。私は同性だから夏目の事を好いているのではありません。夏目だから愛しているのです』と返す。



 その表情は、辛そうで。


 だが、清春の思いは、国重医院長には届かず『取り返しがつかなくなる前に別れるんだ。無理なら、無理矢理にでも別れさせる』と言い、国重医院長は部屋から出て行く。




 残された清春は『くそっ……!』と机に拳を当てるも、いまにも泣き出しそうな表情を浮かべている。



 その会話が聞こえていたのか、はたまた誰かが広めたのか、瞬く間に、清春と夏目が恋人同士だと言うことは、国重邸だけでは無く近隣住人までへとも広がっていったのだ。




 夏目から話を聞いた涼雅は「そっか。バレたのか」と呟く。


 そんな涼雅に、泉凪は「知ってたの?」と尋ねると、涼雅は「まぁ」と頷く。




 「それで、清春さんは?」




 先ほどから、清春の姿が見えず、泉凪が夏目にそう問いかけた時だった。


 泉凪たちが居る部屋の扉が開いた。



 かと思えば、清春が部屋へと入って来る。




 「清春様……!」




 夏目は、清春の姿を見ると、すぐに立ち上がり清春の元へと駆け寄る。


 清春の表情は、何処か曇っており、心配になるくらい顔が青ざめている。



 そんな清春に、夏目は「どうしたの? 国重様になんて言われたの?」と心配そうに尋ねる。



 すると、清春は小さな声で「……た」と何かを呟く。


 その声はあまりにも小さく、夏目は「なんて……」と聞き返そうとすると、清春はそれを遮るように「縁談が決まった」と言う。




 「え……?」




 清春は夏目から視線を逸らすように「国重医院で働いている、医師の娘さんだそうだ。私も会ったことがある」と呟く。


 そんな清春の話を聞き、夏目は「嘘、だよね……?」と聞き返す。



 だが、清春は「嘘じゃない。今し方、父さんが言ってきたんだ。お前も知ってるだろう? 一度決めれば、どんな手を使ってでも父さんはそれを成し遂げようとする」と言う。


 その清春の言葉に、夏目は「そん、な……」と声を震わすと、部屋から走って出て行く。




 「夏目さん!!」




 泉凪は、慌てて夏目の後を追う。


 部屋に残された涼雅たち。



 泉や凪、白夜はどうしたら良いか分からない様子で、突っ立っている。




 「おい。お前、本当にそれで良いのかよ?」




 俯きその場に突っ立っている清春に、涼雅がそう問いかけると、清春は「じゃあどうすれば良いんだよ!!」と声を上げる。




 「こうしないと、夏目を無理矢理違う奴と結婚させるって……それなら、自分がって……」




 そう頭を抱え、辛そうに言う清春。


 そんな清春を見た涼雅は泉たちに「清春のこと頼んだぞ」と言うと、部屋から出て行き、夏目と泉凪の後を追う。

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