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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 傲慢



 「いやぁ〜、二十射皆中とは本当に月花様は凄いな」




 主人たちが測定をしている最中、従者たちは近くでその様子を見守っており、泉凪の弓の腕を見て心温は驚きながら呟く。




 「月花様は弓が得意なんですね」




 同じく隣で、測定を見ている花都に心温は話を振る。


 花都は「泉凪様の師も、弓が得意でその影響かもしれません。まぁ、本人の才能もあると思いますが」と笑う。




 「なるほど。例の狐の面を被ってると言うあの師匠か……是非、拝見して見たいものだ」




 〝狐の面を被った〟と言う言葉を聞き、花都は狐の面を被ったハナのことを思い出し、そういえば外の人に会う時いつも着けてるなと思う。




 「火翠の若様も二十射皆中だったじゃないですか。若様もお得意なんですね」


 「悠美、様は弓が趣味なようなものでして」


 「そうなんですね」




 心温と花都が話す声が聞こえていたのか、花都の隣にいる心大の従者、千景も話に加わる。




 「火翠の若様は何でも卒なくこなされる印象がありますよね。やはり、現皇帝陛下の血を引いておられるだけある」


 「確かに陛下も何でも完璧にこなされますね」




 千景と花都の話を聞き、心温は、ははっと笑い「そう、ですね」と少し言葉を詰まらす。







 「ねぇねぇ! 測定をされていた神力者様たちをご覧になった?」


 「もちろんよ! 火翠様の袴姿が美しすぎて目が開けられなかったわ〜」




 宮の庭を歩いていた宮女たちは、先程まで測定を行っていた神力者たちの話を、頬を赤らめながら楽しそうに話していた。




 「神力も剣の腕も高い上、弓の腕まであるなんて……何をやられても完璧だわ〜」


 「袴姿が美しいと言えば、水園の千季様は袴を着られる事により、いつにも増して色気が溢れ出てらっしゃったわ」


 「あら。私は風音の文月様が最高に素敵だと思ったわ」




 四人の宮女たちは、袴姿の神力者たちについて、熱く語っている。


 その中の一人が「でも何よりびっくりしたのが月花様よね」と言うと、他の宮女たちも力強く頷く。




 「袴姿がお美しすぎて私、倒れるかと思ったもの」


 「本当よね! 品性と知性が混じって……何だか火翠様と雰囲気が似てるわよね」


 「本当に! 女性だけど思わず惚れてしまいそうになったもの〜」




 興奮気味で話をする宮女たち。


 その時、「これはこれは、宮女たちではないか」と声が聞こえてくる。


 目の前には、晃と数人の神力者が晃を取り巻くように立っており、宮女たちは「し、神力者方にご挨拶を申し上げます」と慌てて頭を下げる。




 「何やら楽しそうに話していたようだが?」


 「は、はい……月花様について」




 宮女がそう言った途端、晃は「おぉ! 宮女らもか! 我々も月花の姫君について話していたところだったんだ」と言う。




 「いくら神力者とは言え、女のくせに生意気だとな」


 「……っ。」




 宮女たちの反応を見て、ニヤッと気味の悪い笑みを浮かべる晃。


 その様子から先程、宮女たちがしていた話を聞いた上でそのような事を宮女たちに言ったと言うことがわかる。




 「周りのものも、少し神力が強く弓や刀の腕が立つからと言って、もてはやすから図に乗るんだ」


 「男に守られることしかできないくせして、神力者として皇宮にいる事自体、身の程知らずなのだ。女は大人しくしていたらいいものの」


 「月花の姫君がまた、当主になれば郷は滅びるに違いない」




 そう言って晃とその他の神力者たちは笑う。


 宮女たちは聞いていて気持ちのいい話ではないが、身分が違いすぎるので注意をするのもできず、ただ俯きじっと堪えるしかない。


 その時だった。




 「先程から聞いていれば、耳が腐るような世迷言ばかりしか吐かないな」




 そう声がしたかと思えば、腕を袴の袖に入れ、立っている悠美がおり、呆れたように笑っている。


 そんな悠美に続け、隣にいる文月も「また君たちかい? 毎度毎度あきずに、横暴な態度を取れるものだよ」と呆れている。




 「これはこれは、火翠の若様に風音の若様ではないか。事実を話していたに過ぎないと言うのに、わざわざ話に入ってくるとは余程お暇なようだ」




 そう言って笑う晃たち。


 そんな晃たちに悠美は言う。




 「暇なのはどっちだ? わざわざ嫌いな相手の事を大声で話している、お前たちの方が暇に見えるが? そんなに暇があるのなら、もう少し弓の腕が上がるよう鍛錬でもしたらどうなんだ?」




 悠美にそう言われた晃は顔を真っ赤にし、怒り出す。




 「大体、女が男に守られることしかできないのは事実であろう? 実際、貴様らがこうして月花の事を庇っているではないか」


 「馬鹿か? 君は。ボクたちは月花の姫君が女性だから庇っているわけ無いじゃないか。不快な話を大きな声で話している者を注意するのは当たり前のことだろう?」


 「一体、何がそんなに月花の姫君のことが気に入らないんだい?」




 文月にそう問われた晃は体を震わせながら大声を上げる。




 「女の分際で神力者になってることが腹立つんだよ!! ちょっと何でもできるからって周りの奴らもちやほやしやがって!! 大体、女の神力者に何ができると言うのだ! 男よりも力が弱く、体力もないくせによ!!」




 感情的になりすぎたのか、耳まで赤く染め、息が上がり呼吸が乱れている晃。


 だが、そんな事を気にも止めず、悠美は「少なくとも、お前たちより月花の姫君の方が優秀で神力者に向いていると思うが?」と言い放つ。



 優秀で、次期皇帝候補に一番近い悠美にそう言われた事が、はたまた自身が見下している相手の方が優秀だと言われたことが、自尊心を傷つけられたのか、更に顔を真っ赤にさせる。




 「貴様ら揃いも揃ってこの俺を侮辱しやがって……!!」




 激昂する晃を見た宮女たちが「し、神官様たちをお呼びする?」と話していた時だった。




 「もういいでしょ、地星の一の若君。」




 そう言いながら呆れた表情を浮かべた泉凪が、悠美たちがいる向かい側から歩いて来た。


 そんな泉凪を見て文月は「泉凪」と呼び、悠美は黙って見つめる。


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