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皇宮の花嵐  作者: 透明
156/206

皇位継承編 好いているんだろうか



 火翠宮、悠美の執務室。


 先程から、上下逆さまの書物の同じページをじっと見つめては、ため息をつく悠美。



 そんな悠美を心温は、書物を読みつつ、横目で見る。




 「なぁ、心温」




 突然、悠美に名前を呼ばれ、慌てふためきながら「ど、どうした? 悠美」と答える心温を悠美は、怪訝そうな表情を浮かべ見る。




 「何をそんなに驚いているんだ?」


 「い、いきなり悠美が話しかけて来るから……!」


 「話しかける時はいつもいきなりだろ」




 悠美に言われ、心温は「それもそうか」と頷く。




 「それで、どうしたんだ? 何か俺に用があったんじゃないのか?」




 心温にそう聞かれ、悠美は少し黙ると「泉凪は千季のことを好いているんだろうか」と言う、思いもよらない言葉が帰って来る。


 それに更に驚いた心温は「え!? そうなのか!?」と思わず大声を上げてしまい、悠美に「声がでかい」と睨まれてしまう。



 「す、すまない」と謝る心温に、悠美は「それに、私は好いているとは言っていない。好いているんだろうかと聞いているんだ」と言う。




 「あ、あぁ……それは分からないが、どうしていきなりそんな事を?」




 心温にそう聞かれ、悠美は「この前の試験の時、試験が失格になるかもしれないのに、泉凪は一切躊躇する事なく、千季を迎えに行っただろう?」と言う。




 「あぁ、この前の。月花様かっこよかったよな」


 「流石は泉凪だ。……じゃなくてだな、普段から泉凪と千季は仲がいいし、千季も何だかんだ言っていい奴ではある、多分」




 そう言う悠美に、心温は「そこはいい奴、でいいだろう? と言うか、それだけで好いているとは限らないだろう? 悠美の思い過ごしかもしれないし」と言うと、悠美は「泉凪と千季が戻ってきた時……」と話を続ける。




 「いつもの二人と雰囲気が違って見えたんだ。二人はいつもと変わらないように振る舞っていたけど、いつも泉凪を見ている私には分かる」


 「悠美……」




 悠美はそう言うと「もし、本当に泉凪が千季の事を好いているとしたら、私は素直に応援できるのだろうか」と呟く。


 そんな悠美を見て、心温は「まだ決まったわけではないだろう? そんなに気になるなら、月花様に聞いてみればいいだろ?」とケロッと言う。



 そんな心温に、悠美は深いため息をつくと「お前は何もわかっていないな心温。聞けるわけないだろう?」と呆れた表情を浮かべ言う。




 「何でだ? 俺にだったら普通に聞くだろ?」


 「お前だったらな。泉凪とお前では全く違うだろ」


 「酷いなぁ」




 悠美は唐突に立ち上がると「何だか心温と話をしていたら、こんな細かい事で悩んでいるのがバカらしくなってきたな」と言う。




 「心温、せっかくの休暇なんだ。町に出て何か食べに行くぞ!」




 そう言う悠美に、心温は「え!? 今からか!? 仕事はどうすんだ?」と聞くと、悠美は「そんなもの、後でどうにでもなる! ほら、さっさと行くぞ!」と部屋から出て行くので、心温も「待て! 悠美!」と後を続く。







 「泉凪ちゃん、泉くん、凪くん。お帰りなさい!」




 泉凪たちが月花の郷へと帰ると、郷の人たちは、泉凪たちを暖かく迎える。


 泉凪たちは、試験が始まってから、初めて郷へと帰ってきたのだ。




 「お〜! 泉凪! チビたちも一緒か! よく帰ったな」




 郷の人たちと、再会を喜んでいると、そう言う声が聞こえてきたと思えば、綺麗な桔梗色の長い髪を、高い位置に一つに束ねた男性が、泉凪たちの元へとやって来る。


 そんな男性に、泉凪は「師匠!」と嬉しそうに言うと、泉と凪も「師匠だ」と言う。



 三人の名前を呼んだのは、泉凪の師であるハナで、チビたちと言われた泉は「もうチビじゃないんですけど!?」とつっこんでいる。




 「私からすれば、十分幼子だ。」




 そう笑うハナに、泉は「泉凪様も師匠も、いつまでも俺たちのこと子ども扱いなんだからさー」と腰に手を当て、呆れたように言う。


 そんな泉を見て、ふふっと笑う泉凪。



 そんな泉凪に、ハナは「試験に視察に色々と疲れが溜まっているであろう? ゆっくりしていきなさい」と声をかける。


 泉凪は「そのつもりです」と答えると、ハナは「そうか」と優しく笑う。




 泉凪たちは、これから三日ほど、月花の郷で過ごす予定なのだ。

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