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皇宮の花嵐  作者: 透明
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皇位継承編 違和感



「……封印されていた割には、大した事がなかったですね」




 暗くなった雪原の山の中。


 先程、泉凪たちが妖を退治した場所に、二人の天狗の面を被った者がおり、一人の者が何もなくなった祠を見ながら「いや、封印されていたからですかね」と呟く。




 「いや。あいつは元々そこまで強くはない。初めにあいつの事を封印した奴が弱すぎただけだろ」




 そう言うもう一人の天狗の面を被った者に「貴方からしたら皆、弱いでしょう」とふふっと笑う、丁寧な口調の天狗の面の者。




 「残念だったな。あの神力者達のこと、始末するつもりだったのに」


 「いえ……今日のは様子見程度のものでしたので、今日の所はひとまず帰りましょう」




 丁寧な口調の天狗の面を被った者はそう言うと「後は頼みましたよ」と言うと、何処からか同じく複数の天狗の面を被った者達が現れ、雑に二人の天狗の面を被った者をその場に置く。


 その二人はぐったりとしており、もう息をしていないように見える。







 「あの後、あの祠の近くで二人の天狗の面を被った者の遺体が発見されたとは……」




 視察から戻ってき、一日が経ったある日。


 皇帝に、雪原の地で起きた事を詳しく説明するため、謁見室へと行っていた帰り道。



 先程、皇帝から聞いた話をする千季に、泉凪は「犯人が見つかって良かったと喜ぶべきか。あるいは……」と言うと、それに続け雪乃は「裏があると取るべきか」と言うと、千季も泉凪も頷く。




 「まぁ後は陛下に任せるしかないけど」


 「そうだね。でもまさか、神守石を三つも貰えるとはね」


 


 あれから泉凪たちは、視察中の村人達への対応、妖を退治した事から空澄に神守石を贈呈されたのだ。


 千季の言葉に雪乃は「まぁ、俺たちの雪原の地への視察がそもそも間違いだったらしいからな。あの地は元々、陛下のみが視察を行うことになっているし。両村のいざこざを対応した事も考慮されているのだろう」と言う。




 「まぁ、結局。万事解決には至らなかったが」




 自身の力不足を悔やむ雪乃に、千季は「まぁ、人種の問題なんてそう簡単に解決できる事じゃないでしょ。どっちが加害者で、どっちが被害者とかはっきりと決められることでもないしね。両村の村長が手を取り合ってくれただけマシと思わなきゃ」と言う。



 そんな千季の言葉を聞いてもなお、何処か浮かない表情を浮かべている雪乃に、泉凪は「大丈夫だよ。これから先は香月くんや深雪くん含め、子ども達がそれぞれの村を守り作り上げて行くんだから。あの子達なら大丈夫」と笑みを浮かべる。



 そう言う声は、眼差しは自信に溢れており、雪乃は何処か大丈夫なような気がしてくる。




 「あぁ、そうだな。」


 「うん」




 眉を顰め笑みを浮かべる雪乃に、自信満々に返事をする泉凪。


 そんな泉凪を優しく見つめる千季。



 泉凪はこの後、空澄と約束があり、他の二人もそれぞれ用があるため、別れようとした時だった。




 「泉凪! 千李さん、雪乃さん!」




 泉凪達の背後から、嬉しそうに泉凪達の名前を呼ぶ声が聞こえて来たのだ。


 その声を聞き、泉凪たちが後ろを振り返るとそこには、笑顔で手を振る心大とその隣に心大の従兄弟の若菜が居たのだ。




 「心大! それに若菜、久しぶりだね!」




 若菜は当主に選ばれなかったが、地星家の副当主をしているため、座学最終日以降会えておらず、久しぶりの再会に泉凪は嬉しそうに若菜にそう言う。



 そんな泉凪に若菜も「お久しぶりです、泉凪さん。それに千季さんに雪乃さんも」と穏やかに笑みを浮かべ言う。




 「皆さんお元気そうで安心しました」


 「あぁ」


 「若菜もね」




 泉凪たちに「三人で何処かに行かれるんですか?」と聞く心大。


 そんな心大に泉凪は「少し、視察のことで陛下に用があって、謁見室から戻っている所だよ」と言うと、若菜が「雪原の地に行かれたんですよね?」と尋ねる。


 

 そんな若菜に泉凪は何かを言おうとしたが、心大の「あ、聞いたよ! 大変だったんだよね!」と言う声に遮られる。




 それからしばらく、視察のことや若菜の話を聞き、泉凪が「あ、私そろそろ行かないと」と言う。


 そんな泉凪に千季が「そう言えば、空澄と約束をしていたんだったね」と言う。




 「空澄さんと?」


 「うん。何か用があるみたい。多分、花を育てるのを教えているから、その事に関してだと思うけど……そう言えば、若菜はどうして皇宮に?」




 泉凪の問いかけに、心大は少し言いにくそうにしながらも「晃兄さんが出て来るから、それの迎えだよ」と言う。


 その言葉を聞いた泉凪は「あぁ、今日だったね」と頷く。




 心大の実の兄、晃は数百年前、泉凪に毒を刺すように指示をした犯人とし、地下牢に入れられており、今日、解放される事になっているのだ。


 それに、家族が立ち会わなければならないので、若菜は皇宮へとやって来たそう。




 「それじゃあ、僕たちも行くね! また明日の試験で!」




 心大はそう言って手を振ると、若菜は会釈をし歩いて行く。


 そんな二人を見送る泉凪に千季は「大丈夫?」と心配そうに尋ねる。



 晃の事を気にしているのだろう。


 同じく雪乃も「心配する必要はないぞ。出て来たとて、あいつには一生見張りがつくからな。不快かもしれないが、泉凪が気にする必要はない」と言う。




 そんな二人に泉凪は「ありがとう。私は大丈夫、本当だよ。ただ、ちょっと違和感があって……」と言うと、二人は「違和感?」と問いかける。


 だが泉凪は「あまり、上手く言えないんだけどね」と言うと、空澄と約束をしていた事を思い出し、千季たちと別れ慌てて空澄の元へと行く。




 空澄に神宮へと来てほしいと言われ、神宮へとやって来た泉凪。


 すると空澄は真剣な表情を浮かべ「月花様に話しておきたい事があるのです」と言う。

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