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皇宮の花嵐  作者: 透明
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皇位継承編 見守りませんか



「この度は、息子がご迷惑をおかけし、申し訳ありません」




 泉凪たちが村人たちの元へと戻ると、深雪の父はそう深々と頭を下げ、泉凪たちに謝罪をする。


 そんな深雪の父に、雪原村の者たちは「全くだ」「約束を破り、山の奥深くに行くなんてこれだから白雪村の者は……」と口々に言い出す。



 それを聞いた白雪村の者たちも「お宅の所だって一緒じゃないか!!」「お互い様だろ!!」と言い返す。




 そんな両者を見た深雪は、ギュッと手を握り、俯く。


 その時だった。




 「深雪くんが危険を冒してまで、あの山に入った理由がまだ分かりませんか?」




 泉凪はそう言って、両者の間に入ったのだ。


 そんな泉凪に驚く千季たちは、黙って泉凪の話に耳を傾ける。




 「あなた方が、銅像の件で言い争い、再び争いを起こすと言い始め、それを止めるために深雪くんは願い事を叶えてくれると聞いていた、山の奥深くに行ったんです」


 「大切な家族や友達と、これからもずっと仲良く暮らせる様にと」




 泉凪の言葉を聞き、深雪は更に手に力を入れる。


 そんな深雪の背に優しく手を置く香月。




 「両村に因縁があるのは分かっていますし、それを忘れろとも、互いのことを許しあい、仲良くしろとも言いません」


 「ですが、これから未来を作って行くのは、他の誰でもない子どもたちです。そんな子どもたちは、互いに仲良くしたいと願い、互いに大切に思い合いっている。そんな子どもたちを見守りませんか」




 真っ直ぐ、村人たちを見つめそう言う泉凪に、口をつぐむ村人たち。


 そんな大人たちに、両村の子どもたちは大人たちの前に出て来ると「お願い! 皆んなで争わないで……!」と訴えかける。




 「お互いに嫌い合っているのも知っているけど、僕たちは皆んな大好きだし、これからも皆んな一緒に遊びたい。なにより、昔みたいに家族や友達が傷つくのを見るのはもう嫌なんだ!!」




 そう叫ぶ香月に、香月の父は「香月……」と名前を呼び、香月の母は目に涙を浮かべる。


 子どもたちは「お願いします」と頭を下げる。




 「これからは、互いがより良いと思える様、我々も更に協力する。だから、一度でいいから子どもたちの声に耳を傾けてやってくれ」




 そう言うと、皇帝は深々と村人たちに頭を下げる。


 そんな皇帝に、村人は動揺を隠せない様子。




 「あなた……!」




 子どもたちの言葉を聞き、頭を下げる皇帝を見た深雪と香月の母たちは、それぞれ父の背に手を添える。


 深雪の父は頷くと、香月の父の前に行く。




 「一度、何もかも置いて、子どもたちを共に見守らないか?」




 そう言って、香月の父に手を差し出す深雪の父。


 そんな深雪の父の手を、香月の父は取ると「いつからだろうな……村長になり、過去の様に子どもたちに辛い思いはさせまいと思っていたのに、結局は辛そうな顔をさせてしまっていた」と呟く。




 「お互い様だろ。これからゆっくりと変わっていけばいい」




 その光景を見た村人たちは、賛成の声を上げる者もいれば、中には当然否定的な声も上げる者もいた。


 それも無理もない。


 今まで、雪原憎し、白雪憎しと教えられてき、互いに傷つけ合い、傷つけられて来たのだから。



 だが、それを承知の上で両村の村長は、子どもたちを見守っていこうと決めたのだ。







 「この度は、ご迷惑をおかけし申し訳ありません。そして、子どもたちや村のこと、ありがとうございます」




 村人たちが帰った後、雪原、白雪の両村の村長は、泉凪たちに再度、謝罪をし感謝の言葉を述べる。


 そんな村長たちに皇帝は「これから大変だと思うが、我々もなるべく手を貸す。頑張って行こう」と言うと、村長たちは頷く。




 「これで少しは、子供たちの未来が良くなればいいけど……にしても、香月くんも深雪くんも凄いよね。まだ大人に守られる歳なのに、みんなを守る為に危険を顧みず、飛び出して行くなんて」




 楽しそうに、雪原、白雪村の子どもたちと遊ぶ深雪と香月を見て、微笑みながらそう言う泉凪。


 そんな泉凪の隣にいる千季は「だね……」と返すと、深雪と香月を見る。




 「感情に一直線で、本当に凄いよ」




 千季はそう言ったかと思えば「到底僕には真似できないな」と視線を逸らし呟く。


 そして、泉凪の視線を感じ、ハッとした千季は「ごめん、暗くなっちゃって。」と謝る。



 そんな千季のことを見つめる泉凪は、千季に「私は、どんな時でも一歩引いて、冷静に物事を見て行動できる千季も素敵だと思うよ」と言う。


 突如、そんな事を言われ千季は「え……?」と驚く。




 「前に……二回目の試験の後かな。文月が、私にね千季が気を遣いすぎる事に悩んでるみたいだから、泉凪から何か言ってやってほしいって言ってきたんだ」


 「文月が……?」




 千季の言葉に泉凪は頷くと「確かに、二回目の試験が終わってから、どこか様子がおかしいなとは思っていたけれど、文月から悠美と少し言い合いをしたって聞いて、千季と話したかったんだ」と言う。


 そんな泉凪に千季は「……ごめん。あの時、助けに行くと言った悠美の事を僕が止めていなければ、もう少し早く泉凪たちは帰って来れたのに」と申し訳なさそうに言う。



 泉凪が「謝らないで。千季も悠美も私たちのことを思っての行動だったんだから。誰も悪くないよ」と言うも、千季は納得がいっていない様子。


 そんな千季に泉凪は「……確かに、感情のままに行動できる人は凄いと思う。けど、それと同じくらい物事を冷静に見て動けるのも凄いことだと私は思うけどな」と言う。




 「それに、千季は嫌だって言うけど、千季のよく周りに気を遣えて、冷静に物事を見れる性格は、一緒にいる相手にとっては凄く安心すると思う。現に私も、千季といると凄く安心するんだ」


 「それは誰にでも真似することはできない。人のことをよく見ていて、気遣いができて、どんな時でも冷静な千季の良さだよ。きっと、千季と関わったことのある人なら皆んなそう思うんじゃないかな」


 


 泉凪の言葉に千季は、これまでのことを思い出す。


 それは、千季がまだ、周りの人の顔色を気にせずにいた時まで遡る。

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