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皇宮の花嵐  作者: 透明
136/211

皇位継承編 祓うだけだ

 


 札が貼られた先へと足を踏み入れた途端、空気が一気に重くなり、辺りも一瞬で暗くなる。




 「流石、妖が封じられているだけあるね」




 泉凪の言葉に頷く千季と雪乃。


 すると千季が「そういえば、どうして封じているんだろうね? 祓ってしまった方が早いと思うのに……それくらい強いのかな」と、ふと疑問に思った事を口にする。




 「例の妖を封じた神力者は、力がそこまで無く、封じることしかできなかったらしいが、封じているおかげで、他の弱い妖がこの地に寄り付かなくなり、そのままにしているらしい」




 雪乃の話に「へぇ……」と自分から聞いたのに、さほど興味なさそうに返事をする。


 しばらく、妖気が流れ出る方へと歩いていると、一段と妖気が濃くなる場所に出て来た。



 その妖気の濃さに、思わず腕で口元を覆う泉凪たち。




 「恐らく、この先に妖が封じられているのだろうけど、そこに香月くんたちがいるとすれば、早く探し出さなければね」


 「あぁ。ただでさえ、一般人は妖気に当てられやすい上、子どもとなると下手をすれば命を落としかねないからな」




 泉凪と雪乃に続け、千季も「すぐに見つけられればいいけど」と言うと、濃い妖気が流れて来る方へと足を進める。




 しばらく行くと、少し開けた場所へとやって来、突如、山々には似合わないポツンッと立つ祠が姿を現す。


 それは辿り着いたと言うよりかは、まるで先ほどまで何もなかった場所に、姿を現した。そんな感覚を泉凪たちは覚える。




 「びっくりした……あれが例の妖が封じられている祠、だよね……?」




 同じく、突如姿を現した祠に動揺している、千季と雪乃も「そう、だね」「あぁ」と頷く。




 「見た感じ、近くに香月くんたちの姿がある様には見えないけれど……」




 そう辺りを見渡す泉凪たち。


 その時だった。




 「い、泉凪姉ちゃん……!」




 突如、泉凪の事を呼ぶ声が聞こえて来たかと思えば、先ほどまで姿が見えなかったはずの香月と深雪が祠の横に座り込んでいたのだ。


 いきなり姿を現した香月たちに驚く泉凪たち。




 「香月くん、深雪くん! 無事でよかった」




 泉凪がそう言って、香月たちに近づこうとした時だった。


 千季が「待って! 泉凪!!」と焦った様に泉凪を呼び止める。



 泉凪は足を止め「どうしたの?」と尋ねようとした時、ガタガタと祠が動き出したのだ。


 そして、泉凪たちが驚く暇もなく、祠から何かが飛び出して来たと思えば、香月と深雪の体は、黒い何かによって縛られてしまう。




 「香月くん! 深雪くん!」




 体を縛られ苦しそうにする香月たち。


 そんな二人の上に、顔に札が貼られた、下半身が無く、大きく恐ろしい化け物が現れる。



 その妖力の凄まじさから、例の祠に封じられていた妖なのだとわかる。




 「凄い妖気だ……」


 「何故祠の外に? まさか、封印が解けたのか……?」




 低く、頭に響く様な声で叫び声を上げる妖。


 その声に辺り一面が揺れる。



 そしてすぐさま、泉凪たちに向かい攻撃をしてくる妖。


 


 「毒だ!! 気をつけろ!!」




 雪乃はそう叫び、間一髪の所で泉凪と千季は攻撃を避けれた。




 「話の通り、神力者に強い恨みがある様だね」




 額に汗を浮かべながら、参ったと言った表情を浮かべながらも、笑みを浮かべそう言う千季。


 そんな千季に続け雪乃は「その上、封じられていたことにより、長年の恨みが力になり、話に聞いていた以上の強さになっている」と言うと「面倒だ」と吐き捨てる様に呟く。




 香月たちは大丈夫かと、視線をやる泉凪。


 香月たちは、苦しさと恐怖から震え、酷く怯えている。



 そんな二人を見た泉凪は(この妖は、神力者に凄く恨みを持っている。なら……)と考えると「千季、雪乃」と二人の名前を呼ぶ。



 泉凪に名前を呼ばれ、泉凪の方を見る二人。


 すると、泉凪が何を言いたいのか分かったのか、二人は頷くと、妖の身体に蔦が巻きつく。




 その瞬間、妖は身動きが取れなくなり、香月たちの身体に巻きついついた黒い何かは外れ、動ける様になり、二人は泉凪たちの元に走ってくる。


 そんな二人を受け止める泉凪。




 「二人とも、ここまで来た道は覚えているね?」




 香月と深雪に視線を合わせる様に、しゃがみ込む泉凪は、優しい口調で二人にそう問いかける。


 二人が頷くと泉凪は「合図をしたら、走ってここから離れるんだ。その時、決して振り返ってはいけないよ」と言う。



 泉凪の言葉に戸惑う二人。


 香月は「姉ちゃんたちは? 姉ちゃんたちも一緒に行くんだよね?」と問う。




 そんな香月の頭を千季は、優しく撫でると「二人が僕たちの言った通りにしてくれたら、僕たちも後からついて行くから大丈夫だよ。だから、僕たちが言った事、守ってくれるかな?」と言う。



 千季の言葉を聞き、二人は不安そうに頷く。


 そんな二人に雪乃は「これを連れて行くといい。この者たちが、二人を安全に連れて行ってくれるだろう」と小さな二体の足が生えた雪だるまを渡す。



 その雪だるまを見た千季は「何それ、雪乃くんが作ったの?」と興味深そうに尋ねる。


 だが、千季の言葉を無視し、雪乃は「私の神力を込めて作ってあるから、きっと守ってくれる。だから安心して行くんだ」と二人の頭を撫でる。




 「姉ちゃんたち、絶対戻って来てね……!!」


 「絶対だよ」




 そう言う二人に泉凪は「うん。約束するよ」と言うと、香月と深雪は雪乃から貰った雪だるまの後を続く様に走って行く。




 「あいつの狙いは僕たちだから、二人は無事に外に出れるだろうけど……こっちはどうしたものかな」




 巻きついた蔦を外そうとする妖。


 その蔦はもう少しで切れそうだ。




 「封じるのは、現皇帝しかできないと言っていたが……」


 「なら、話は早いね」




 雪乃の千季に続け、泉凪は「祓うだけだ」と言うと、二人は頷く。

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