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皇宮の花嵐  作者: 透明
132/204

皇位継承編 見てしまったんです

 


 「……これは酷いね」




 畑の様子も見に行きたいと、初めに白雪村へとやって来た泉凪たち。


 目の前に広がる、酷く荒らされた畑を見て、眉を顰めそう呟く千季。



 同じく、荒らされた畑を見た泉凪も「これは、確実に人工的なものだね」と言う。




 「せっかく皆んなが、丹精込めて育てた畑を、こんな事にするなんて……犯人が許せませんね」




 そう呟く空澄。


 その隣で雪乃は「この事に初めに気付いたのは?」と村人に問うと、一人の男性の老人が「わしじゃよ」と出てくる。




 「いつものように、畑に仕事をしに来たらこんな事になっていたんじゃ」


 「その時、何か怪しい人を見たとかはありませんか? それとか、昨日、何か変わったことがあったとか」




 空澄の問いに男性の老人は首を横に振る。




 「手がかりは無しか」


 「雪原の方を見に行こう」




 一通り、白雪の畑を見て、今度は雪原の方の畑を見に行く。




 「……これまた酷いね」




 白雪の畑同様、雪原の畑も酷く荒らされており、泉凪はそう顔を顰める。




 「この事に初めに気づいたのはどなたですか?」




 雪原の方にも同じ質問をする空澄。


 そんな空澄の問いに、一人の若い男性が「僕です。朝、散歩をしにここを通ろうとしたら、荒らされているのが見えて……直ぐに知らせました」と言う。




 「一応、お聞きしますが、その時に怪しい者を見かけたりしたりしませんでしたか?」




 空澄にそう聞かれた若い男性は「いえ」と首を横に振る。




 「ここでも、手がかりは無しか」




 それから泉凪達は、畑をしばらく見た後、近くの井戸の前へと移動し、話をする。




 「銅像も畑も、犯人の痕跡も何もないし、手がかりもなかったね……」


 「わかったことと言えば、人工的な事だという事だけか」




 泉凪と雪乃の言葉に、千季達は頷く。




 「これは長くなりそうだね」


 「視察のうちに終わるかどうかですね」




 千季と時の言葉に、泉は「村の人たちに何か話を聞こうにも、直ぐにお互いの村の事を悪く言い出しますからねー」と頭の後ろで手を組み言う。



 泉の言葉を聞いていた、泉凪達と一緒に、井戸の前に来ていた香月が「白雪も雪原も、自分たちもお互いの事を罵り合ったり、酷い事をするくせに、相手にやられたら凄く怒るんだ。お互い様なのに」と呟く。



 そんな香月の言葉を聞いた千季は、井戸に腰掛けゆっくり言う。




 「自分たちは差別したりするくせに、自分がされたら激怒し、自分は被害者だと喚き散らかす。そんな虫のいい考えのやつはこの世に五万といる。それはもう、うんざりするぐらいにね。そしてそう言う奴らは勝手に被害者面をして、相手が悪いと怒り、攻撃してくる」


 「何百年経っても、一向に学びもしないで、人同士が争い合うことが終わらないのは、こう言うことの繰り返しだからだろうね」




 そう言う千季に、香月は「俺たちは争いなんかしたくないのに……」と俯く。


 そんな香月に千季は眉を八の字にしながら「巻き込まれる方は良い迷惑だよね」と言う。




 すると、香月は突然頭を下げたかと思えば「お願い! 兄ちゃん、姉ちゃん! 俺と一緒に犯人を探して!! じゃないと本当に争いが起きちゃう……!」と言う。



 その声は、手は震えており、必死さが伝わってくる。



 そんな香月の前に泉凪はしゃがむと、香月の頭に優しく手を置き「絶対に犯人見つけようね」と笑いかける。



 あまりにも優しい表情を浮かべ、優しい声で言うため、香月は涙を浮かべる。




 まだ幼い子が、争いが起きないために、起こさないために頭を下げるその光景を、決して忘れてはいけないと、泉凪たちは強く思ったのだった。



 

 もう一度、銅像の元へと行き、手がかりを探そうとした時だった。




 「あ、あの、すみません……」と突如、か弱そうな女性の声が聞こえて来たのだ。



 声のした方をを見てみれば、そこには一人の若い女性がおり、その表情はどこか強張っていた。


 そんな女性を見た香月は「梅姉!」と駆け寄る。




 「どうかしましたか?」




 泉凪は優しく、その女性に声をかけると、梅姉と呼ばれる女性は「私……見てしまったんです」と目に涙を浮かべながら言う。


 そんな女性に千季は「見てしまったって?」と問いかけると、女性は「ど、銅像を壊している人を……!」と言う。



 その言葉に、泉凪達は眉を顰める。

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