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皇宮の花嵐  作者: 透明
13/202

当主継承編 出逢い

 「これはこれは、火翠の若君。」




 泉凪に声をかけられた悠美は足を止め「……誰かと思えば、月花の姫君ではないか。久しいな」ときらっとした笑みを浮かべる。




 「……えぇ。」


 「ひ、火翠の若様! お、お久しぶりです!」




 泉凪と悠美が挨拶を交わしているのを見、心大も挨拶をする。


 だが、先ほど泉凪たちと話している時とは違い、どこか緊張している様子だ。



 そんな心大にも悠美は「地星の若君も。久しいな」と微笑む。




 「二人も今から外へ?」


 「えぇ、まぁ」


 「そうか。相変わらず、仲が良いんだな」




 悠美の言葉に心大は「は、はい!」と元気よく返事をすると、悠美はふっと笑みを浮かべ「私は先に失礼するよ」と拝謁室から出て行く。


 そんな悠美の後ろで心温は、泉凪と心大にお辞儀をし、後を追う。




 「火翠の若様と滅多に話すことがないから緊張したぁ〜……」




 緊張して、顔が熱っているのか、熱を覚ますかのように手で扇ぐ心大。


 そんな心大の隣で、泉凪は遠くなる悠美の後ろ姿を見つめ呟く。




 「……やはり私は、火翠の若君に嫌われているらしいな」


 「え?」




 泉凪は「いや、何でもないよ。私たちも外に出ようか」と拝謁室から出る。


 そんな泉凪の後ろ姿を心大は不思議そうに見つめる。







 「はぁ……やっぱり、人が多いところは疲れるね」




 あれから泉凪たちは、宮へと案内してもらい、泉凪は椅子に腰を下ろす。


 その様子はとても疲れているように見え、花都は「お疲れ様、泉凪」と声をかける。




 「花都もね」


 「お茶を淹れようか」


 「頼むよ」

 



 花都がお茶を淹れている間、泉凪は部屋の窓を開け、外の景色を見る。




 神力者たちは、それぞれ家の名前がついた宮殿で暮らすことになる。


 泉凪がいる宮は月花宮で、これまで沢山の月花家の神力者たちが過ごしてきた場所。


 

 各家の名前がつくだけあり、宮の中や周りは各郷の雰囲気に近い作りになっている。


 泉凪は深く息を吸う。




 「月光花げっこうばなの匂いがする」


 「ほんと?」




 花都はお茶を淹れる手を止め、泉凪の隣に並び、深く息を吸う。




 「本当だ。月光花の匂いだ」


 「師匠が言っていた事は本当だったんだね」




 そう言う泉凪はどこか驚いている様子。



 月光花とは、月花家の名前の由来となった花。


 月の光を浴びる事で咲くとされている月光花は、月花の郷にしか咲かないとされている。


 だが、月花宮には月光花が咲いているのだ。




 泉凪は、昔、ハナに聞いた話を思い出す。




 『月光花は、月の光と月花の郷の土や水でしか咲かない。だから、月花の郷でしか見ることができない花なんだ』


 『だが、皇宮にある月花宮だけ唯一、月花の郷以外で咲かすことが出来る。月花宮には月花の郷の土が使われているから、そこに苗を植え、月花の人間の神力を分けてやれば咲かすことが出来る』


 『だから月花宮には、月光花が沢山咲いているはずだ。まぁ、月花の郷ほどではないが』




 ハナの話を思い出す泉凪に、花都は「師匠が言うことだから、また嘘かと思っていたよ」と眉をひそめ笑う。




 「師匠の日頃の行いだね」




 そう言って泉凪と花都は笑い合い、淹れたお茶を飲みながら、師匠や郷の皆んなの話に花を咲かせる。


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