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皇宮の花嵐  作者: 透明
125/212

皇位継承編 らしくない



「水園当主様、月花当主様、そして氷彩当主様のお三方には、神守の国の最北端にある、雪原せつげんの地に行って頂きたいと思います」




 最後に残った、泉凪、千季、雪乃はともに神守の国最北端にあり、氷彩家が統治する雪原の地と言う場所へと視察に行く事になったのだ。


 

 雪原の地は名前の通り、辺り一面、雪景色でとても寒い地域で、滅多にそこに住む者達以外、近寄らない場所だ。




 雪原の地と聞き、泉凪達だけではなく、他の当主や従者達は騒つき出す。



 それも無理ない。


 雪原の地は、二つの村で分けられており、その村同士のいざこざが絶えない場所で、何かと問題が起きる場所。



 その問題と言うのも、かなり慎重に対応しなければならない物で、普段、視察を行うのは皇帝陛下なのだが、何故か当主である泉凪たちがその場所へと行く事になったのだ。




 「雪原の地か……これは慎重に視察を行わなければいけないね」




 視察先を聞き、そう呟く泉凪に、隣に立つ千季は顎に手をやり「今回の視察は大変そうだね」と笑みを浮かべる。


 そんな千季を見た雪乃は「全く大変そうに見えないが。」とつっこむ。




 「雪原の地と言えば、村同士の事で揉めているんですよね? 陛下も手に負えないとかで……そんな所に視察だなんて、大丈夫なんでしょうか……?」




 心配そうに泉凪たちを見てそう呟く心大。


 そんな心大に文月は「まぁ、問題ないから視察に向かわせるわけだし、それに、視察をしに行くだけなら大して何も起きないよ」と言う。




 「それより、君は自分のことを心配したらどうだい? 今回君と一緒に行く相手は涼雅なんだよ?」




 そう言う文月に涼雅は「何だよ、その言い方〜。俺と組めて嬉しいよなぁ? 心大ちゃん!」と心大の肩に手を回す。


 心大は苦笑いを浮かべながら「は、はい……」と返事をする。




 「……何か問題を起こせば、置いて帰って来てもいいんだよ」


 「文月ちゃん、ひでぇー」




 そう三人がやり取りをしている隣で、心温は悠美に「月花様と一緒じゃなくて残念だな」と耳打ちする。


 残念がると思ったが、悠美は「あぁ」と返すと「雪原の地へと視察か……よく父上が許可を出したな」と言う。



 そんな悠美に驚く心温は「……月花様と一緒じゃなくて、寂しがると思ったのに」と言うと、悠美は眉を顰め「私を何だと思っているんだ? 視察は視察だ。公私はちゃんと分けているに決まっているだろう?」と言う。




 「そ、そうか。すまん」


 「それより、雪原の地の視察についてどう思う?」




 悠美の問いに心温は「ここ最近は、問題が起きたとも聞かないし、大丈夫だろう。それを分かっていて、陛下も許可なさったんだろう」と答える。



 そう言う心温の言葉に「そう、だな……」と曖昧な返事をする悠美。



 その時「火翠様、風音様、牛車のご用意が出来ました」と言う神官の声がし、文月が「悠美」と声をかける。


 悠美は「あぁ、行こう」と頷き、心温は悠美に「俺と葉水くんは馬で追いかけるから」と耳打ちする。




 今回の視察は、今までの視察と違い、従者たちも視察へと同行する事になっているのだ。




 「泉凪様」




 泉凪たちが牛車の用意が整うのを待っていると、そう泉凪の名前を呼ぶ声が聞こえて来た。


 泉凪は声のした方を見て「空澄」と名前を呼ぶ。



 泉凪の名を呼び、泉凪たちの元にやって来たのは神官の空澄で、空澄は「今回、泉凪様の班に同行させて頂く事になりました。どうぞ、よろしくお願いいたします」とお辞儀をする。



 空澄の話を聞き、泉凪は「私たちの所は空澄が同行してくれるんだね」と嬉しそうに言う。




 今回の視察は、従者も同行する他、神官も一人同行する事となっている。


 当主らが視察を行なっているのを見て、評価するためだ。




 仲が良さそうに話す泉凪と空澄。


 そんな二人を見た千季は「二人、仲が良いんだね」と驚いたように言う。




 千季の言葉に空澄は「仲が良いだなんて滅相もありません……!」と首と手を振る。


 そんな空澄に「そんなに否定されたら傷つくなぁ」と言う泉凪。



 空澄は「も、申し訳ありません……!」と慌てて謝るも、泉凪は「冗談だよ」と笑う。




 「泉凪様には、一度。花を育てる事でお世話になったんです。それから、私の事をよく気にかけてくださるようになって、色々とお話しさせて頂く機会も増えたんです」




 そう嬉しそうに話す空澄の言葉を聞き、雪乃は「泉凪は花を育てるのが得意だからな」と頷く。




 「そうなんです! どんなに調べながら育てても、全く芽を出さなかった花が、泉凪様に教えて頂いた通りに育てたら、すぐに芽を出したんです。さすが、月花家の当主であられるなと感服いたしました」




 そう泉凪の事を褒める空澄に「褒めすぎだよ」と笑う泉凪。


 そんな空澄の話を聞いた雪乃は「それは凄いな」と驚く。



 その時、千季が「牛車の用意が出来たみたいだよ」と話に割って入る。


 そんな千季に雪乃は「何だ? 話に割って入るとはらしくない」と言い、その言葉に千季はハッとし「ごめん。感じ悪かったね」と泉凪と空澄に謝罪する。




 「いえ……! 視察前なのに、少し話をしすぎましたね」


 「そうだね、千季が謝る事ではないよ。」




 泉凪はそう言うと「早く牛車に乗ろう」と歩いて行く。



 そんな泉凪の後ろ姿を見て、千季は「……何焦ってるんだ。まるで子どもじゃないか」と眉を顰め、拳をギュッと握り、自分の行動を悔いている様子。



 ついて来ていない千季に気づいた泉凪は振り返り「行こう、千季」と千季を呼ぶ。




 「……あぁ」




 千季はそう返事をすると、泉凪たちの元へと行く。


 こうして、当主となり初めての視察が始まった。

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