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皇宮の花嵐  作者: 透明
119/210

皇位継承編 大切な事

 


「氷彩様、最後のお題でございマス」




 雪乃は着々とお題に答えて行き、最後のお題までへと辿り着いていた。



 ウサギのような生き物に(やっとか……)耳を傾ける雪乃。




 「火翠様にとって皇帝になる上で、一番大切な事は何と答えたでショウ」




 最後のお題を聞き、眉を顰める雪乃。


 そんな雪乃の脳裏には、幼い頃から氷彩家で神力を持ち生まれて来た者たちに、言われ続けて来た言葉を思い出す。



 それはまるで呪いのようなもの。




 『皇帝になる上で一番大切な事とは、最善な策にどれほど目を向けられるかだ。火翠家が何百年にも渡り皇帝の座につく前、最後に皇帝の座についていたのは氷彩だった』


 『その時の皇帝は先程言った最善な策によく目を向け、立派な皇帝を務めたと言う』


 『今の火翠が独壇場の状態は良くない。火翠のやり方の平等に意見を聞くことも大事だが、平等にばかり意見を聞いていては、良い国を作る事はできない』


 『最善な策に目を向けてこそ、この国を良くできるのだ』




 最善な策に目を向けるのが良いのも、平等ばかり考えては良い国が作れないのも分かる。


 だからと言って、それら全てが悪いわけではない。



 皆が皆、良いと思える国を作るのは難しい事。


 それは皇帝も同じで、皇帝になる上で一番大切だと思う事は人それぞれ違う。




 「どんな者の声にも耳を傾け、常に国民に寄り添う事と答えたと思うのならば、氷彩様から見て左側の扉に、皆が幸せになれる事は前提とし、それでもやはり時には、苦しい選択をする責任を負う事と答えたと思うのならば右側の扉へとお入りくだサイ」




 ウサギのような生き物の言葉を聞き、雪乃は一瞬、何かを考え左側の扉へと近づく。




 (どんな者の声にも耳を傾け、常に国民に寄り添った政治をする事は現実的な事ではないかもしれない。)


 (幸も不幸も、正義も悪も人の数だけある。その全てに耳を傾け、皆が納得する答えを出す事は難しい事)


 (皇帝になり、争いもなく、皆が幸せに平等に暮らせる国を作ると言うのは綺麗事かもしれない)


 (けれど、上に立つ者がそんな綺麗事な夢を見なくてどうする。例え夢物語と笑われようが、馬鹿にされようが国を変えれるものが、上に立つものが綺麗事を言わなくなっては終わりなのではないのか。誰かが、例え綺麗事でも言わなければ、その夢は現実にはならないのではないのだろうか)




 雪乃はそう考えながら、左側の扉を開く。


 扉の向こうはとても穏やかで暖かく、思わず目を背けたくなるような場所。



 その先に、綺麗な蘇芳色の髪を靡かせた悠美が立っていた。




 「思ったより、早かったな」




 そう雪乃に声をかける悠美を見た雪乃は、答えた扉の先に悠美がおり、何処か安心したような表情を浮かべる。


 悠美が扉の先にいた。


 それは、綺麗事な夢物語を見ているのは、自分だけでは無いと言われているようで、嬉しく思ったのだ。




 「まぁ、思っていたよりはかからなかったな」


 「そうか」




 悠美はそう柔らかく笑うと、雪乃と二人で、競技場へと繋がっている扉を開く。







 「火翠様、氷彩様、おめでとう御座います。無事にお会いできたお二方に神守石を贈呈致します」




 競技場へと無事に戻って来た悠美と雪乃。


 二人に空澄はそう言い、百合は神守石を渡す。




 「……まだ、他の者たちは戻って来ていないのだな」




 悠美の言う通り、他の当主たちはまだ、競技場内へとおり、試験を行っているのだ。




 「もうすぐ、残り一時間を切るな」




 雪乃もそう言って、時計を見る。




 試験終了まで、残り一時間を切っている。


 だが、まだ他の二組が戻って来る様子はない。




 「よほど難しいお題を出されているのか? 私の時は、そこまで難しいとは感じなかったが」




 「最後のお題は、まぁ悩んだが」と言う悠美に、雪乃は「俺の時もそうだ。最後は悩んだが、他はさほど難しいお題ではなかった」と言う。




 「無事に終えれればいいが……」




 それからしばらく経ち、残り時間三十分を切ろうとしているも、一向に、他の二組が戻ってくる気配は無い。




 「泉凪様たち遅いな……」


 「大丈夫なんですかね? 心温さん」




 凪と泉は心配そうに心温な事を見る。


 凪と泉だけではなく、まだ戻って来ていない当主たちの従者も皆、心配そうな表情を浮かべている。




 (泉凪は大丈夫だろうか……)




 悠美は心配に、まだ開かない扉を見つめ、心の中でそう呟いた時。



 一つの扉が開いたのだ。




 「良かった〜! 戻って来れた!」




 そう言って競技場へと戻って来たのは、心大と千季、そして涼雅の三人だった。

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