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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 神力者集結ー2ー

「久しぶりだな、雷林の若君。会えて嬉しいよ」




 そうニコッと笑みを浮かべると、近くにいる宮女たちは、自身に向けられたわけでもないのに「キャーッ!!」と黄色い歓声を上げる。




 「挨拶はいらねぇよ! 俺と勝負しろ! 火翠!!」




 目をぎらつかせ、勝負を挑む涼雅に悠美は「今から座学が行われるというのに……勝負はまた今度しよう」と優しく言い聞かせる。


 だが、涼雅は言い出したら聞かない性格をしており「やだね! 勝負してくれないなら座学なんかやらねぇ!」と食い下がる。



 そんは涼雅に悠美は困ったと言う表情を浮かべる。




 「座学はやらない、か。そうなったら、私はどんどん強くなり、いくら勝負をしても雷林の若君は私に勝つことはできないだろうな」




 手を顎にやり、淡々と話す悠美の言葉に「はぁ? 何だよそれ! 何で俺が負ける事になってんの?」と眉を顰める。




 「雷林の若君が座学を行わない間、私は座学に出るだろう? そうしたら、更に力をつける事ができるが、座学を行わない雷林の若君は何もしないで過ごすため、力をつける事が出来ない。そのような状況で勝負をすれば、私が勝つのは一目瞭然だ」




 悠美はフッと笑みを浮かべ「それでもいいのなら、座学には参加しないでも構わないが」と涼雅に言う。


 悠美の話を聞いた涼雅は「火翠が強くなるかはわからないじゃん」と頭の後ろで手を組む。




 「なら試してみるといい。それで、私ばかり勝ってしまっても文句は言えないよ?」




 悠美に挑発された涼雅は「うわ、なんかすっげーむかつく! いいんだな? 俺が座学に参加したら、火翠のことなんか簡単に負かすことができるぞ! それでもいいんだな!」とムキになる。




 「あぁ、構わない。私が負けることはないからな」


 「むかつく!!」




 そう言いながら涼雅は、悠美から離れて行く。


 その後ろ姿を見届けながら、悠美は一つ小さくため息をつき「面倒だ」と誰にも気づかれないくらいの声で呟く。



 その様子を隣で見ていた、悠美よりも背が高く、深い緑色の髪をした男性──従者の心温しんおんは「悠美様。顔に出ていますよ」とこれまた他のものに聞こえないくらいの声量で、悠美に言う。



 すると悠美はきらっとした笑みを浮かべ「何のことだ?」と返す。


 あまりにも変わる表情に、心温は「怖いぞ、悠美」と若干引く。



 だが、悠美は更に顔をきらつかせた笑みを浮かべ「え? 何がだ?」としらを切る。




 「……その表情すればいいと思ってるだろ。俺には通用しないからな。」




 確かにその表情は、他のものが見たら思わず頬を緩めてしまいそうな表情だ。


 だが、心温にそれは通用しない。




 それでも「何の事かさっぱりわからないな」ときらっとした笑みを浮かべ続けている。


 そんな悠美に何を言っても無駄と判断した心温は「……そんな事より」と話題を変える。




 「神官たちは遅いな。もう、来てもおかしくない時間だが」


 「……まだ一人来ていないからじゃないか」




 そう、どこかぶっきらぼうに答える悠美。


 心温は驚いた表情を浮かべ「え? もう全員揃ったと思っていたが……まだ揃ってなかったのか?」と辺りを見渡す。




 「あ、本当だ。月花様が来られてないな。よく分かったな、悠美。従者、官人含めたら人数は三十は超えるのに」


 「……うるさい」


 「え?」




 何故か突如、むすっとした表情を浮かべ、そっぽを向く悠美に困惑する心温。


 一体何なんだ?と眉間に皺を寄せ心温は、突如むすっとした理由を頭の中で必死に考える。



 その時、辺りが一際騒がしくなり、心温の「お、噂をすれば何とやらだな」と言葉に悠美は心温の視線の先へと目を向ける。




 そこには、花都と一緒に周りの人たちの視線を集めながら、拝謁室へと歩いてくる泉凪がいた。


 ただ歩いているだけなのに、その様は絵になり、周りの者たちは「あの美しい殿方は何処の家の方かしら?」と騒ついている。




 「あなた知らないの? あのお方は月花家の泉凪様よ!」


 「え? 月花家ってことは、女性!? 男性ものの着物を着ていらっしゃるからてっきり、美しい殿方かと……」




 官人らの言うとおり、泉凪はその中世的な美しい顔と、女性にしては高いスラリと伸びた背に、男性ものの着物を着ていることから、一見男性に見えるのだ。




 「……何故かやけに視線を感じるけど、何でかな?」




 視線は感じているものの、何故そんなに見られているのか分かっていないのか、泉凪は少し後ろを歩く花都に問いかける。


 そんな花都は「えぇ……本気で言ってるのかい?」と困惑する。




 「え、本気だけど?」


 「……そうか。どうしてだろうね」




 そう言えば、泉凪はそう言った話題には疎かったな。と考えるのをやめ、説明をするのも花都は諦める。

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