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皇宮の花嵐  作者: 透明
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皇宮継承編 花嵐



 千代と呼ばれる女性は、皇宮側が各当主たちに用意した、泉凪の侍女長。


 泉凪も今日、開会式が行われる前に初めて対面したのだ。




 「泉凪様。開会式の方、お疲れ様でした。湯浴みをしてゆっくり休まれてくださいね」




 落ち着きがあり、穏やかな口調で、そう言う千代。


 そんな千代に泉凪は「ありがとう」と言うと、湯浴みを行うため、部屋から出て行こうとするも、立ち止まり泉と凪の方を振り返る。




 「私がいない間、悪さしないようにね。特に泉」




 泉凪にそう言われ、凪は「任せてください、泉凪様。こいつの事は私がきちんと見張っときますので、ゆっくり湯浴みされてください」と言う。


 そんな凪と泉凪に「二人とも俺を何歳だと思ってんのさ」と口を尖らせる。



 そんな泉を見てふふっと笑みを浮かべると「それじゃあ行ってくるよ」と部屋を出る。




 「いつまでも、泉凪様にとって俺たちは子どものままなんだろうな」




 泉凪を見送り、頭の後ろで手を組みそう言う泉に凪は「郷にいた時、ハナ師匠と一緒に悪さばかりしていたからだろ」と真顔でつっこむ。




 「お前だって、泉凪様の前では良い子ちゃんなだけで、俺と同じだろ」


 「一緒にするな」




 泉は「へいへい。」と言うと椅子にどかっと腰を下ろす。







 「いよいよ、明日から試験が始まるな」




 皇帝の執務室内にて。


 試験の内容の最終確認を行うために、執務室にやって来ていた、神官の空澄と大巫女の百合は、執務椅子に腰をかける皇帝の前に姿勢を正し立っている。



 そんな皇帝の直ぐ後ろには、仁柊の姿もある。




 「はい。試験の内容は、通年通りとなっているため、問題なく準備の方は進められています」




 空澄の言葉に皇帝は「そうか。巫女も神官もこの時期は大変だと思うが、頼んだぞ」と労いの言葉をかけると、空澄も百合も嬉しそうな表情を浮かべ「はい。」とお辞儀する。




 「今回の当主たちは皆、誰が皇帝に就いてもおかしくないくらい、優秀なものばかりだ。皇帝としては、喜ばしい事だが……時に強すぎる力が集まれば、災いを招く事だってある」




 皇帝の言葉に、空澄と百合は不思議そうな表情を浮かべ、仁柊は黙って皇帝の事を見つめる。




 「皇位継承の試験だが、陰でとある呼ばれ方で呼ばれている事は知っているか?」




 唐突に空澄と百合にそう問いかける皇帝。


 そんな皇帝の言葉に、二人は「……わかりません」と答える。




 「〝皇宮の花嵐〟」




 皇帝の言葉を聞き、驚いた表情を浮かべるも、意味がわかっていない様で「何故、その様に呼ばれているのですか?」と百合は尋ねる。




 「花嵐の意味は知っているな?」


 「はい……桜の花が咲く頃に吹く、強い風のこと……ですよね? その風によって花が激しく散る様を表しているとか」




 空澄の言葉に皇帝は頷く。




 「今から数千年もの前の話、見た目は子どもから大人になり、何百年と生き、知見を広げ、知性と風格をつけ皇宮に次期皇帝を決めるために、戻って来、次期皇帝に選ばれなかったものが、皇宮を後にする姿を見て、とある神官が〝リュウゼツラン〟と言う花の様だと言ったそうだ。」


 「リュウゼツランが開花するのは、数十年から百年に一度と言われている。その間、葉を広げ、株を成長させ、開花直前に花茎を高く伸ばす。

そして、開花をすれば数週間で枯れる。

まさしく、神力者たちの生を表している様な花だ。」


 「そして、いつからかリュウゼツランでは無く、神力者を花と例えるようになった。そして、そんな花達が、皇帝の座をかけ、約一年という、長すぎる生では短い間、時に傷つきあい、時に騙し合い戦う姿を激しく吹き去って行く嵐の様だと例えた」


 「そのことから、花嵐の言葉の意味も含め、皇位継承の試験の事を皇宮で吹く花嵐、皇宮の花嵐と呼ぶ様になったとか」




 初めて聞く話に驚く空澄と百合。


 そんな二人に「まぁ今は、騙し合いとかは無くなり、そう呼ばれていたのも数千年も前の話だが」と戯けた様にいう。




 「まぁただ、本人達にその気がなくとも、周りが勝手に嵐を起こそうと企てるものもいる。」




 そうボソッと呟く皇帝。


 そんな皇帝に「陛下……?」と心配そうな表情を浮かべる空澄と百合。



 皇帝は「ま、あの子達は強い。歴代の中でも当主同士仲がいいみたいだしな。まぁ、心配はいらんと思うが、試験期間中はよくあの子達のことを見ていてあげてくれ」と言う。




 「私もよく見ている」




 そう言って笑う皇帝に、空澄と百合は「お任せください」と胸に手を当てお辞儀をする。


 そんな二人に皇帝は「頼りにしておるぞ」と笑いかける。




 そして、初めの試験が行われる日を迎えた。

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