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皇宮の花嵐  作者: 透明
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皇位継承編 懐かしく思う



 試験の開会式が行われる会場は、神力者たちのお披露目会が行われた宴会場で行われるため、国民らも開会式を一目見ようと、宴会場に集まっていた。




 「わぁ……何だか、少し宴会場が広くなった気がするけど、気のせいかな? ね、千景」




 黒色の束帯を身に纏った、地星家の当主、心大は会場内を見渡すと、すぐ近くにいる従者の千景にそう聞く。


 千景は「百年ほど前に会場を少し広くされるため、工事を行っていましたよ。忘れられたのですか?」と眉を顰め笑いながら答える。




 「そうだったっけ? 百年前の事、覚えてないよ〜」




 神力者の中で一番年下だった心大だが、髪も肩くらいの長さになり、大人っぽくなっているが、性格はあの頃と同様、穏やかなままのようだ。



 楽しそうに千景と話をしていると「心大」と心大を呼ぶ声がする。


 声のした方を振り返ると、心大は嬉しそうな表情を浮かべ「文月さん!」と名前を呼び、千景はお辞儀をする。




 そこには、風音家当主の文月と、何処かおどついている様子の、文月の従者の葉水ようすいがおり、心大たちに近寄る。


 


 嬉しそうに「文月さん、お久しぶりですね! 元気にしていましたか?」と話しかける心大。


 そんな心大の言葉に頷き「心大も。元気そうだね」と返す。




 「はい! とっても元気です!」




 そう返す心大。


 その隣にいる千景は、文月に「お久しぶりです。風音当主。」と挨拶をする。



 文月は「久しぶりだね、千景。元気そうで何よりだ」と言うと、未だ、おどついている様子の自身の従者の方を見ると「葉水」と名を呼ぶ。


 文月に怒られた葉水は「は、は、はい!」と背筋を伸ばし返事をする。




 「当主やその従者に会ったら、挨拶をしろと教えたはずだよ?」




 文月にそう言われると、葉水は「すすす、すみません……!」と謝ると「地星当主様と、従者様にご挨拶申し上げましゅっ……!」と挨拶するも噛む。


 そんな葉水に文月は「お辞儀」と注意すると、慌てて勢いよくお辞儀をする葉水。



 そんな彼を見て文月は一つため息をつくと、眉を顰めながら「すまない、心大。彼は従者になったばかりでね。甘く見てやってくれないか」と言う。




 「僕は全然大丈夫です! 気にしないでください!」




 心大はそう言うと、葉水の事を見ながら(……前の従者と雰囲気が全然違うな)と思う。




 文月の前の従者は、亡くなり、葉水は新しい従者。


 文月だけではなく、他の当主も従者を亡くした者はいる。


 数百年の月日を迎えるとは、そう言うこともあると言う事。


 一々、気にしていたらキリはないが、心大は少し感傷的になる。




 「他の当主らは、まだ来ていないのかい?」


 「そうみたいですよ? 僕が一番乗りでした」




 そう心大が言った時「二人とも早いね」と言う声がする。


 そちらを見てみれば、笑みを浮かべ手を振る水園家当主の千季と、その隣を歩く氷彩家当主の雪乃、そして二人の従者の姿があった。



 そんな千季たちを見た千景はお辞儀をし、そんな千景を見て葉水も慌ててお辞儀をする。




 「わぁ……! 千季さんに、雪乃さん! お久しぶりです!」




 嬉しそうにそう声をかけて来る心大に千季は「久しぶりだね」と返し、雪乃も「あぁ」と頷く。


 

 千季も雪乃も、大人っぽさに磨きがかかっており、時の流れを感じさせる。




 「二人とも一緒だったんですね!」


 「そこで丁度、雪乃君に会ったんだよ」




 千季はそう答えると、心大と文月を見て「二人とも、大人になったね」と笑みを浮かべ、雪乃も「本当だな」と頷く。




 「そりゃ、最後に会った日から数百年も経っているからね。そう言う君たちも、随分大人になったじゃないか」


 「まぁね。数百年も生きていればね」




 千季がそう言った時、千季は「あ、そうだ。」と言うと、すぐ後ろを立つ従者を見「紹介するよ。彼は僕の新しい従者のときだよ」と従者を紹介する。



 千季に紹介された、従者の時は胸に手を当て「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。千季様の従者の時と申します。以後お見知り置きを」とお辞儀をする。


 そんな時の隣で、雪乃の従者の光陽こうようも「当主の皆様、お久しぶりです。」とお辞儀をする。




 そんな二人を見た文月は、自身の従者に「あぁやってするんだよ。よく見ておきなよ」と言う。


 そんな文月の隣で、心大は心の中で(千季さんの従者も新しい人だ……)と呟く。




 「にしても、皆んなあんまり変わっていなくて安心したよ。」




 唐突にそう言う千季。


 そんな千季に文月は「普通、そこまで変わることはないだろう」とつっこむ。




 「いや、見た目の話じゃなくてね。中身が変わっていなくてよかったなって。」




 千季がそう言う隣で、雪乃は文月の事をじっと見つめると「そう言えば、文月は何処か変わったな。……背が伸びたのか」と言う。



 雪乃の言う通り、文月は背が少し高くなっていたのだ。


 雪乃の言葉を聞いた千季は「本当だ。言われるまで気が付かなかったな」と言う。



 そんな千季の言葉を聞き、文月は「何だって?」と聞き捨てならないと言った表情を浮かべる。




 「すまない、文月」


 「歳をとって目が悪くなったんじゃないかい?」




 そんな二人のやりとりを見て、苦笑しながらも、座学時代に戻った気がして、どこか懐かしく思う心大。


 その時、突如あたりが騒つきだした。

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