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以下は、リルシェさんから聞いた、事の経緯の詳細、の俺なりの要約。
エルサニア王都に、ノミネスコさんという偉大な武術家がおられたそうです。
若くして武の真髄に目覚め、たゆまぬ鍛錬、厳しい修行の成果が華開き、
最強武術家の名声をほしいがままの大活躍な人生。
晩年は巡回司法省の特別武術師範として後進の育成に心血を注いだという、
その生涯の全てを武の道に捧げた、真に偉大なる武術家。
皆はノミネスコ老師と仰ぎ、敬い讃えていたとか。
そんな老師も歳月の波には勝てず、
惜しまれながら世を去ろうとしていたその時、
えーと、何やらいろいろあったようで、
結果的に若返っちゃった、と。
まあ、実に異世界って感じのめでたいお話しなのですが、
問題はその後。
全盛期である青年の姿を取り戻したノミネスコ老師、
いや、ノミネスコ師範。
どうやらアッチの方も全盛期になっちゃったらしくて。
教えを乞いに来た女性巡回司法官さんや、
エルサニア城勤務のメイドさんたちや、
エルサニア王都婦人会の若奥様たちや、
エルサニア王都近辺で冒険に勤しむ乙女冒険者たちに、
その……セクハラ三昧だったそうで。
もちろんエルサニア王都近辺は、言わずと知れたチームモノカの守備範囲、
つまりはナワバリ。
モノカさんもお仲間さんたちも、
乙女の敵と成り果てたノミネスコ師範を戒めようと果敢に挑んだそうですが、
何せ相手はリヴァイス最強の武術家とまで言わしめた超ベテラン武術師範。
晩年まで蓄えられ続けてきた豊富過ぎる武術経験が、
その人の人生における絶頂期であろう全盛期の肉体に入っちゃったわけで。
で、流石のチームモノカ一同も返り討ち、ってかセクハラの餌食に。
そこまではまあ、やんちゃが過ぎるよお爺ちゃんってな感じだったのですが、
あろうことかセクハラの矛先を向けちゃったそうですよ、
エルサニア王国君主、ツァイシャ女王様へと。
俺は未だお会いしたことはありませんが、
女王様ご本人はそりゃあもうご立派な方なのだとか。
毅然とした態度とか、誰しもが跪きたくなるようなお声だとか、
ゴージャスそのものなお姿だとか。
いえ、ゴージャスなのは着飾りっぷりでは無く、
中の人が、だそうです。
誠に遺憾ながら、俺は未だ未見なのですが。
えーと、脱線しました。
ノミネスコ師範のセクハラターゲットとされたツァイシャ女王様ですが、
もちろん大国の君主を守護するに相応しい警備体制に常時守られております。
エルサニア城を警備している精鋭部隊の衛兵さんたち、
いわゆるロイヤルガードな近衛騎士様たち、
そして、常日頃から女王様を密着警護しているのは、
エルサニアのみならずリヴァイス最強との誉れも高い、最高のボディガード。