04
案内してくれている獣人衛兵さんのふりふりしっぽを追いかけながら、
どデカいお城の中、やたらと天井が高くて幅広な通路を、
リルシェさんからがっしりアレされながら、
しずしず進む、俺。
何故足取りがしずしずなのかは、前述の通り。
「そんなに具合が悪いのですか?」
「何でしたら、謁見の延期を……」
いえ、お気になさらず。
たぶん顔色の方は上気しっぱなしでしょうし、
どうせならこの状況、楽しんだ者勝ちかな、と。
「ウェイトさんも、ようやく覚悟が決まったようですね」
「それでは正々堂々、胸を張って参りましょうっ」
いえいえ、だいぶやましいですよ、今の俺。
明らかに正々堂々とは真逆。
ってか、かなり不審者っぽいかも。
でも、案内してくれている衛兵さんのチラ見してくるまなざしが、
挙動不審者への警戒では無く、
威風堂々乙女と釣り合わない相方への残念目線でも無く、
何だか妙に生暖かいのですが……
そうこうしてるうちに、案内されたお部屋へ入室。
---
ずいぶんと簡素なお部屋ですな。
想像していたのは"謁見の間"ちっくなゴージャス大広間でしたが。
だってここ、王都のお城だし。
すっごくお偉いお貴族さまとの謁見だし。
「ニルシェ王国は、基本的には質実剛健実質重視」
「魔族領各国の調整役としての国家の成り立ちから、全てにおいて実力重視主義であることが国の根幹」
「王国を名乗る以上、対外的な役割を担う王家には伝統と格式を演出する必要があり、当時の魔族界の名家から選び抜かれた貴人たちが国の象徴としての王家を担当」
「建国当初から王家らしさを追求し続けて、今では他国王家が規範とし学ぶほどの見事な王家に」
なるほど、何事にも一生懸命なお国柄ってことですね。
「一方、実務を司るニルシェ王国評議会の面々は、縁故や世襲などとは一切無縁の国内から選りすぐられた実力者にして切れ者揃い」
「なまけ者や国を乱す者は、爵位も任期も関係無しに首をすげ替えられるというサバイバル執政」
「本日お会いするツァル侯爵家のショセ様は、そんな実力一辺倒な評議会で親子二代どころか建国当初からの永きに渡りトップの座を譲らなかった伝統ある名家に恥じること無き真の実力者」
「くれぐれも失礼の無きよう」
……リルシェさん、
流石の俺でも今さら逃げ出したりしないつもりですが、
ここに来てそれほどのプレッシャーはいかがなものかと。
「いえ、さっきまでのウェイトさんが、やたらと肘をくいくいしてくるので少々意趣返しを」
誠に申し訳ございません……
「お噂通りの方ですね」