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はい、説得失敗。
リルシェさん曰く、
今の俺は、あの頃とは比べ物にならないほど成長しており、
『道連れ』の"均質化"によるデバフ効果は期待出来なくなっていること。
それと注目すべきは、今の俺だからこそ出来る荒事の際の立ち回り。
足手まといにならないよう俺なりに工夫してきた独特のポジショニングと、
闘いの場から一歩引いて観察することにより磨かれた状況把握・判断能力は、
あのコレイカダンジョンでのキッツい冒険の日々が功を奏して、
最強ソロ冒険者ルスイさんも認めるほどのものとなっていること。
要は、ハンパな強さのままでいるよりも、
サポート職としての修練をがっつり続けた方がいいんじゃね?(意訳)ですね。
「私が納得出来る状態にウェイトさんが仕上がるまで、何があろうと絶対に逃しませんからねっ」
「さあ、しっかりとした結論も出たことですし、明日も張り切って鍛錬三昧ですよ!」
そんな嬉しそうにしっぽぶんぶんされても……
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そんな感じで普段通りな俺たちですが、ニルシェ王都への旅は順調です。
ただ、ちょっとだけ普段通りでは無い行動も。
正確には、ダンジョンを出てからのリルシェさんの行動に変化アリ、ですね。
コレイカ深層攻略中はダンジョンに潜りっぱなし。
リルシェさんの魔導具『Gふなずし』での外部との魔導通信は、
ほぼ通信途絶状態。
つまり、ダンジョンの外にいる皆さんとは魔導通信不可だったのです。
その反動でしょうか、今は熱心にお仲間の皆さんと魔導通信し放題。
あんな感じで……
「なるほど、モノカとカミスさんがそんなことまで……」
「えっ、サイリさんとヴァンパイアさんたちが……」
「うわっ、フォリスさんと精霊さんたちも……」
「アランさん……(絶句)」
……うん、気にならないって言ったら嘘になります。
ってか、めっちゃ気になるのですが。
いえ、盗み聞きしてるわけではないのですよ。
通常『Gふなずし』で魔導通信する際は魔導具本体に向かって話し合う、
いわゆるハンズフリーモードなのですが、
リルシェさんの変装用わんこみみはインカム的なアイテムでもありまして、
通信相手の声が着け耳しているリルシェさん本人にしか聞こえない、
という設定にも出来るわけで。
つまり、俺の方に聞こえるのはリルシェさんの楽しげな話し声のみ。
当然、その内容がすっごく気になるわけで。
あの着け耳、装着者の感情を反映してぴくぴくぺたりと動いちゃう、
めっちゃイカす魔導具なのですが、
素敵な見た目以外にもなかなかに罪つくりなアイテムなのですよ……
「……すみません、ふたり旅の最中にひとりで魔導通信ばかりしているのはマナー違反でしたね」
「では、淋しい思いをさせちゃったウェイトさんには、お詫びとしてたっぷりと密着鍛錬を!」
そんな嬉しそうにしっぽぶんぶんされても……