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「何だか、気が抜けちゃいましたねぇ」
確かに、妙に釈然としない、といいますか……
まあ今は、ノミネスコさんがきちんと罪を償うことを願うのみです。
「今回の一件の教訓は、"性癖に惑わされることなかれ"、ですよね」
「ウェイトさんにとっては、まさに反面教師のお手本とも言える案件でしたよ」
えーと、今もわんこみみぴくぴくなリルシェさんから言われても説得力が……
「もしかして、私がこの変装を解除した途端、ウェイトさんは姿をくらますのでは……」
大丈夫ですって、冒険者としての実力が上がってるのと同様に、
性癖コントロールの分野でも着実にレベルアップしてますから、
たぶん。
「……」
それにしても、キルヴァニア王国、ですか。
まさに獣人さんたちの楽園にして最後のもふもふフロンティア。
そしてそこへの架け橋となる国境には素敵なかっぱのお姉さま方が。
あー、無理して魔族領まで来なくても、天国は身近にあったのですね……
「コントロール、全然出来てませんよねっ」
「それってレベルアップじゃなくて悪化ですよぅ」
お後がよろしいようで……
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というわけで、世間を無駄に騒がせたアレな事件も無事に解決。
俺たちの魔族領での冒険も、新たな気持ちで頑張るぞってな感じです。
「つまりは、次なる冒険の地を求めてレッツラゴー、ですねっ」
えーと、どうしましょ。
ルスイさんは、コレイカ攻略にこだわらず冒険の旅を楽しんでください、
って言ってくれましたが。
「ウェイトさんは、どこか行きたいところとかありますか」
「もちろんぶらり旅も楽しいですが、このニルシェ王都にはまだまだ未知のアレコレがわんさかですよっ」
ふむ、未知のアレコレですか……
これまで出会えた素敵な異種族さんたち、
獣人さん、竜人さん、巨人族さん、純魔族さん、
ワーウルフ系、アラクネ系、アルラウネ系、
純血種さんも混血種さんも、皆さん素敵な人たちばかりでした。
そういえば俺ってアンデッド系の方々とは、まだ知り合えてませんね。
「むう、アンデッド、ですか……」
おや、ずいぶんと渋いお顔をなさる。
もしかして、アンデッドさんたちとは交流不可なのですか?
「いえ、もちろん交流出来ますよ」
「私たちの仲間でも、素敵なヴァンパイアさんたちが冒険者として大活躍しておりますし」
「ただ、魔族領内のヴァンパイア国家、タリシュネイア王国とは少々折り合いが悪いのです」
「それに、偏見の目で見るのは厳禁と分かってはいるのですが、私のこれまでの冒険者活動においてアンデッド関連のあれこれはあまり楽しいものだったとは言い難いのです……」
ふむ、優しいリルシェさんがこれほどまでに眉を曇らせるとは。
俺が邁進している異種族さん仲良し活動、略して"異種活"
全ての異種族さんとの健全な触れ合いを目指しているこの草の根交流活動は、
決して誰かを犠牲にするような歪なモノであってはならないのです。
いかに人外さん博愛主義な俺でも、
大切なパートナーに無理強いはしませんとも。
「……」




