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その日、事件現場のホールに居合わせたのは、ほぼ女性のみ。
女王様からでは無く、ツァイシャさんの友人として招かれた乙女数名。
ホール内警備は"七人の戦乙女"との誉れも名高い近衛騎士様たち。
お世話係のメイドさんが数名。
そしてもちろん、少々野暮ったい冒険者服をお召しのツァイシャ女王様。
男性は、二名。
この場への同席を許された唯一の男性、
あまり感情を露わにしないという周囲の評価を吹き飛ばす激しい闘気をまとう、
恋人 兼 ボディガードのライクァさん。
そして、まごうこと無き招かれざる男性、
この場の乙女満員御礼な雰囲気を楽しんでいるかのような笑みを浮かべる、
エロ師範、ノミネスコさん。
お互い言葉も無く、真正面からぶつかり合った。
「一歩も動くことが出来なかったのは、近衛騎士としては失格だったのでしょう」
「ただ、武を志す者として、あの闘いは一瞬たりとも目を逸らしてはいけなかった、と今でも思います」
「不調法者ですので月並みな言葉ではありますが、まさに人智を超えた闘い、そのひと言に尽きます」
近衛騎士団長ベルネシアさんは語る。
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お互い極まった達人同士の闘い、
勝敗を決めるのは、想いの差。
ボディガードとして、ツァイシャ女王様のみならず、
その場に居合わせた全ての乙女たちを全身全霊で守護する覚悟のライクァさん。
滅私無我の境地。
あわよくば、ツァイシャ女王様のみならず、
その場に居合わせた全ての乙女たちを毒牙に掛けようとするノミネスコさん。
我欲放濫の極み。
その想い、まさに真逆。
結果は……ノミネスコさん、撤退。
そう、敗退では無く、自発的な撤退。
乙女たちを最後まで守り切ったライクァさんの勝利、という想い。
完全な決着を付けられなかった時点で勝敗無しの引き分け、という想い。
見事に逃げ切ったノミネスコさんの勝ち、という想い。
その場に居た者たちの想いは様々なれど、
ライクァさんは、何も語らなかったとか。




