第14話 特訓することになりました その2
そしてやってきた土曜日。俺は集合時間の9時半の10分前くらいに家を出た。集合場所は家の前。弁当作ってもらってるし、ギリギリなのも忍びないと思って早めに待つことにした。
ほどなくして、隣の家のドアが開き、遥が出てきた。なんか違和感あるなと思ったら…髪下ろしてる。
「やほー」
「なんでまたイメチェンを?」
気になったので開口一番髪を下ろした理由を尋ねる。単純に結ぶ時間が無かったから?
「えへへ~、ちょっと気分転換。似合う?」
「なんて言うか…大人っぽい」
どうやら本当にイメチェンのようだ。中学からずっとポニテだったから新鮮だ。髪を下ろしたことでなんとなく大人っぽい雰囲気が出ている。大人っぽい雰囲気……そうか、リードを広げられてしまったか…。
結果的に敗北感を味わってしまった。これじゃあ端から見たらただのめんどくさい奴だ。…よし!リードとかそういうのは考えないようにしよう。
「どしたの?」
遥が顔色を窺うように覗きこんできた。…おっと、心の乱れが顔に出ていたか…。
「あ、いや、なんでもない」
「遥人もかっこいいよ」
「え…!?」
なんかいきなり褒められてびっくりしてしまう。完全に不意を突かれた。くそう…遥のやつ、心理的にも俺の上を行こうという算段か?そうはさせない…!
「遥も今の髪型のほうがかわいくて似合ってるぞ」
やべ…ちょっとキモかった?幼馴染とは言え、女の子を褒めるのは難しいな…。
――なんて思ってると、遥の顔が早くも真っ赤になっていた。
「と、特訓前にさっそく…」
遥はそう言うと、顔を背けて大きく息を吸った。
ゴオォォォ!!
そして真っ赤な炎を口から勢いよく吐き出す。瞬間的に辺りの空気が高温になるほどの凄まじさ。遥はそのまま息が無くなるまで炎を吐き続けた。
早速炎を吐いてしまうが、本当にこれをコントロールできるんだろうか…?
住宅街で練習するわけにもいかないので、とりあえず広い場所へ移動することに。それに万が一のために水があった方が良い。
広くて水がある―――となると、思いつくのはあの場所。数日前にカルガモの引っ越しで訪れたため池だ。
「あのカルガモたちまだいるかな?」
「でも、火を見たらビビるんじゃないか?」
「確かに…。あまり派手にやらかさないようにしよ…」
今のところド派手なのしか見てないが……、まぁとりあえずため池に行こう。