第1話 幼馴染が進化しました その1
いつも通りの朝、寝起きの悪い俺は何回目かのアラームにうんざりしつつ、観念したかのようにノソノソと布団をめくって起き上がる。そしてノソノソと一階に下りて顔を洗って歯を磨く。
「遥人ー!お母さんもう出るから、鍵よろしくねー!」
「ふぁあい…」
何とも気の抜けた返事をして、歯磨きの続きをする。その後、リビングで1人朝ご飯を食べる。いつものようにまったりとした朝の時間……。とはいえ、高校生であるゆえ、いつまでもまったりとしてられない。ご飯を食べ終わったら、制服に着替えてサブバックを持っていざ出陣。
外に出ると、狙ったかのように声をかけられた。
「おはー」
黒髪をポニーテールにしている見た目大人しそうな女の子――下野遥。俺と名前がすごく似てるが、血縁関係ではない。ただの隣人で俗に言う幼馴染というやつだ。
学力も似たり寄ったりなので同じ高校に通っている。だからなのかこうして今日もなんとなく一緒に登校すると言うわけ。
「おは」
俺も手短に挨拶返し。そのままの流れで歩き始める。別に話に花が咲くわけでもなく淡々と時間が過ぎていくだけ……かと思われたが。
「ねーねー」
「ん?」
なんか面白い話でもあるのかと顔を向ける―――と、遥が掌を出してきて
ボゥ…!
なんか手の上に火が出た。……熱い。
「………」
「すごいでしょー」
なんか自慢げな顔をする遥。俺はただただ無言で、手の上で燃えている火を眺めていた。
「熱い。消して」
「あ、ごめん…」
遥は申し訳なさそうに火を消して手を引っ込める。ふぅ…熱かった…。
―――じゃなくて
『なんだ今の!?なんだ今の!??』
表面上は平静を装いつつ、内心驚愕しまくった。えっ!?火出したよね!?燃えてたよね!?えっ!?何のマジック!?にしても唐突すぎない!?一体どうしちまったんだよぅ!?
だが、表面上はクールを装う俺。我ながらポーカーフェイスの才能あるな。けど、もう一回見たくなった。
「も一回見せて」
「いいよー」
遥は快諾し、手を差し出して、またもや突然火を出した。うんやっぱり熱い。
「遥ってマジックできるくらい器用だったっけ?」
「んふふ…。これはマジックではないんだな」
「マジックじゃなかったらなんなん?」
「んー…、超能力ってやつ?」
ドヤ顔を見せる遥。なんかムカつく。先越された感がしてムカつく。今までどっこいどっこいだったのに、これじゃ大きく差を付けられたみたいで嫌だな。
「俺の許可なく超能力なんか身につけるなよ」
「許可制!?保護者かい」
「いや、違うけど…。えー…、俺もなんか超能力使いてぇー!」
今のところ使える気などまったくしない。……てか、マジどうやったんだ?なんか肉体改造でもしたの?
深まる謎に俺は頭を抱えるのだった。