4プレイ目
【ログイン歴・ゲーム内2日目】
[基底界・クランスペース・姫貴邂会]
「失礼な物言いをしてしまい、大変ご迷惑をお掛けしましたわ」
金髪ドリルごと地面にめり込ませながら、綺麗な土下座を決めるお嬢様。
プレイヤーネームをスワン、という彼女は最初、アヤメさんに貴方なんて相応しくないだの、男なんてだのまぁお決まりの言葉を吐いてくれたワケだが。
アヤメによる冷静にしてブチギレな追い詰めと、他2人のプレイヤーによりなんとか土下座で収まったのである。
いやぁ、殺気通り越して鬼気を巻き散らかしていたアヤメを見るのは久々だけど恐ろしいものだね。しかも抱えたまま下ろしてくれないし。
「スワンお嬢様をお止め出来ず、私からも謝罪致します」
綺麗な最敬礼を見せるメイド服のプレイヤーネームはカレン。コッテコテのメイド服。そして所作。アヤメの素性を考えるに、この2人はガチの主従なのだろう。その割りには、ゲザ決める主人と頭下げるだけの従者ではあるが。
「いえいえ。謝罪を受け取ります。頭を上げてください。きちんと説得してなかったアヤメも悪いので」
「私も怒ってしまって済まないね。私はせーのことになると抑えが効きにくくてね。シアも助かったよ」
「ホントですよアヤメねえ様。お気持ちは分かりますけど。
改めまして、こちらでは初めまして。そしてお久し振りです。せいにい様。こちらでもそう呼んで大丈夫ですか?」
「もちろん。君のことはどう呼べばいいかい?」
アヤメのアバターとは逆に、ぼくよりも少し大きい程度の体躯。ただし一部を除く。
可愛らしい系統のアバターであり、他のゲームの追随を許さない描写力により凄まじい愛らしさは有るものの、現実にはまだ追い付いてないようだ。
ゲームの美形補正ですら負けるほど紫陽花ちゃんは可愛いのだ。
「こちらではオルテンシアというネームです。シアと呼んで下さい。せいにい様」
アヤメよりマシだけど、そのまんまなネーミングだなぁ。
アヤメ共々、フェイス殆ど変わってないし、リアル知ってる奴ならすぐリアルバレするぞこれ。リアルバレしたところで何か問題が起こるのか、というのは別問題だが。
「こちらでもよろしくねシアちゃん。このゲームではぼくが随分と後輩になるから、色々と教えてもらっていいかな?」
「勿論です! シアに出来ることなら何でも言ってくださいね!」
何でもってのはあんまし言わない方が良いよシアちゃん。ほんとに何でもしてくれちゃいそうだけど。
「私にも存分に頼ってくれよ? せー。あと今居るのは、フレアか」
「……やぁ。よろしく」
今クランスペースに居るプレイヤーの、挨拶してない最後の1人。
フレアというネームの彼女は、一言で表すなら赤い魔女だろうか。
コッテコテの魔女ルックに、燃えるような赤い髪と、どこか眠たげな印象の赤い瞳。
黒をベースに赤いラインをあしらった魔女ローブは強い存在感を発している。
なお、先程起きたスワンとアヤメのトラブル中も我関せずとばかりに杖とUIを弄くっていたのも印象的だ。
「アヤメに生産職として呼ばれた聖⚙です。セイでも、セイサンでも、歯車野郎でもご自由にお呼び下さい」
「……ん、じゃあよろしくね歯車野郎」
「それ採用するんだ……」
ネタを真面目に拾われても困ってしまうのだが。
「ジョーダンだよ。よろしくハグ。
……あたしには敬語とかめんどーなの要らないから。代わりにこっちもこの口調だけど、おけ?」
「ハグルマは採用してるんだ。分かった。よろしく頼むよ」
「じゃ、そゆことで」
というとまたUIを弄り始めた。中々にマイペースなプレイヤーだな……。
「いやせー。君も中々大概だからね?」
「そうか? ああアヤメ、他のメンバーは?」
「まだ何人か居るけど、メインどこはこのメンツだし、追々で良いさ」
よし、それなら。
「じゃ、ぼくはワンダーに戻って当初の予定どおり順繰りに行くぞ? クランスペースの方に手を入れるのはもっと慣れてからな」
「ああ。ノルマとかもないから、せーのペースで色々とやらかしてくれるのを楽しみにしてるよ」
「やらかし前提かよ。それじゃあシアちゃん、みなさん一旦失礼いたしますよ」
さて、これから本格的に聖⚙の生産活動を始めましょうかね。