1プレイ目
【ログイン歴・ゲーム内時間2日目】
[基底界・ワンダーの町]
周囲には数多の幻代人と、そこそこの基底人。
プレイヤー達の多くは自分とは異なる様々な多様な装備を。しかしどこかちゃちで見応えのない装備を着けている。
自分と同じ初心者装備を着けているプレイヤー達は、辺りをキョロキョロ眺めたり、或いは会話しながら散策している。
その中で、明らかに豪華さの違う装備を身に付けた高身長アバターの麗人がこちらに歩いてくる。
「やぁ、せー。こちらでも可愛いな君は」
ついでに話し掛けてきた。待ち合わせ相手なのだから当然だけれども。
「しかしゲーム内時間とはいえ丸1日の遅刻とは如何なものかな? 事情は聞いているけども。マイペースな君らしいね」
話しながら、べったりとくっついてくるのを躱しつつベンチから立ち上がる。
「遅れたのは悪い。けど可愛いは止めてくれ。現実もこのアバターも男なんだ……これでもな」
立ち上がってもなお、そこまで変わらない視界。
「ならなんでそんな可愛くて小さいアバターなんて構築したんだい? 私は好きだから一向に構わんがね。むしろそれがいい」
「面倒だからランダムで作った。特に違和感も無いっての凄いよな、このゲーム」
普通の没入型ゲームでは、設定の身長にリアルとの差があると、その分ズレが大きくなるらしい。
しかしこの通称<すこしふしぎわーるど>では、リアルと大きく異なる体型でも普通に動くことが出来るのだ。これはゲームの売りの1つらしい。一部のプレイヤーには残念なことに、性別までは変更出来ないそうだが。
「ランダムの割りに随分とまた、良い感じの男の娘になったものだね。リアルと身長含めてそんなに変わらないけど」
「それを言うなし」
成長期が過ぎかけてるのに、伸びない身長のことを持ち出すのは戦争だぞこいつ。自分はにょきにょき伸びよってからに。
「それで? せー。君のネームは何て読むんだい? それとも記号は読まないタイプ?」
「これか? これは、〈せいさん〉って読むんだよ一応。生産するプレイヤーが欲しいって言ってたしな」
「確かに言ったけどさ……。それでネームにまで入れるかね。課金アイテムでリネームは可能だけどさ。第一なんでそれでさんって読むのさ。せいは分かるけど」
おっと、申し遅れたな。
ぼくのプレイヤーネームは〈聖⚙〉。
<すこしふしぎわーるど>リリース第四陣の新規プレイヤーである。
「太陽のマークだから、さん、で良いんだよ。同一ネーム不可みたいだったし、記号つければネーム通るかなって」
生産キャラでせいさん。
ネタネームだけどそこそこ気に入っている。
「それ、太陽っていうか、歯車じゃない?」
「……あれ?」
気に入って……いるのだ。