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【読切】失った記憶の先に

作者: rolen

少し怖い要素もありますが全年齢のかたに読んでいただけると思います。

「それで名前はわかるの?」そう声をかけられて我に返った。「え、あの...」 名前?とっさに聞かれて驚いた。名前くらい...。けれど聞かれても自分の名前が思い出せない。なぜだ。誰でもわかることが出てこない。するとそこにいた女の子は優しく話しだした。


「私は北原愛。25歳デザイナーだよ。」北原愛さんはそう言って笑いかけてくれた。けれどそこまで言われても何がなんだかわからない。混乱していると「ごめん!肝心なこと話してないね。」北原さんはそう言うと大きく息を吸った。


そこから彼女の話した話は現実味のある話では無かった。夜中、マッチングアプリで出会った男性と食事をして帰っていた彼女は、家の前の道で私が倒れているのを見かけたと言う。12時を過ぎていたし、酒に酔って倒れていると思い放っておこうとしたが、彼女が言うに「でもね!顔がめっちゃかわいくて!!こんな子が変人なわけ無いと思って!」そうして彼女は近所の人に手伝ってもらい私を部屋に運んだのだという。


重要なのはここからだった、「でもさ、酒に酔ってる様子もしないし、何度揺すってもびくともしないから。」

怖くなった彼女は行動に出た「だめかなとは思ったんだけど財布がポケットに入ってたから見してもらったんだ」

しかし、「けどね、お金はほんのちょっとの小銭しかなくて、あ、あと歯医者のカードがあったんだった!」そう言ってカードを見してくれた。「ここに書いてあるのがたぶんあなたの名前なんだけど...」

そこには『堀結衣香』そう書かれていた。名前がわかったのはいいがこれだけしかないのでは手がかりにはならない。「思い出したでしょ?」そう言われたが全く思い出せない。「ごめん、分からない」素直にそう伝えた。「嘘、じゃあ本当に記憶喪失なのかな。」彼女は不思議そうに言った。


その後彼女とどうするべきか話し合った。「カードに生年月日書いてあったんだけどね、私と同じ25歳だったよ」しかし私に関する情報はそれ以外に出でこなかった。北原さんはこう言ってくれた。「私、明日仕事休みなんだ。だからさ、そんなに遠くないし二人でこの歯医者があるほうまで行ってみよう。」けれど「でも北原さんに迷惑だよ。私一人でどうにかするから。」そう言ったけど彼女は引き下がらなかった。「こんな可愛い子を一人にしておけない!大丈夫!どうせひまだからさ!あと!北原さんじゃなくて愛でいいからね!私も結衣香って呼ぶねっ」「ありがとう、愛。」


それから次の日。私達二人はその歯医者へ向かった。カードを見せこの人を知らないか?と愛が聞くと受付の人は「少し待ってください」といい、パソコンを触りだした。五分くらいして受付の人は「二年前ほどに前に受診されていますよ」と教えてくれた。愛が「通院していたんですか?」と聞くと「その一回きりです」と言われた。なぜこんなことをと聞かれたが愛は「気にしないでください!」といい逃げ出した。その後は私からの提案で少しその街を歩きながら聞き込みをすることにした。けれど有力な情報を得ることはできず、帰ることとなった。帰る前にその区にある警察署に寄った。私に関するなにかがないかと聞いたが答えは「ありませんでした。」という一言だった。


それから数日私と愛は一緒に暮らすこととなり、愛が働いている間私は家事をしながら電車でこの周辺を歩いてみたりした。けれど何一つ思い出すことはなく時間だけが過ぎていった。気づけばここにきてもう二週間が経ったその日は愛の休日で二人で気晴らしに遊園地に来た。ただ思わぬことにそこで話は進展した。


「結衣香〜」遠くから呼ばれている気がした。けれど気にすることなく歩いていると何度も呼ばれるもので愛と同時に「なんですか!」と言いながら振り返った。二人で笑っているとそこに女の人が来て、状況を理解した愛は「この人を知っているんですか?」と声をかけた。「そりゃ知ってるよ」と言うので愛は今までの流れを話した。


この人、三島佳奈は私の大学の同級生で二年前まで仲良くしていたらしい。「二年前からは?」愛がそう聞くと「彼氏と遠くに引っ越ししちゃったんだよね」と言っていた。「理由は?」と聞くと「わからないけど推測ならできるよ」わたしはすぐに聞かせてと言った「う、うんわかった」そういうと「結衣香さ、引っ越すちょっと前から悪質なストーカー被害にあってたんだよね。それがあった直後だからもしかしたらって思ってたんだよね」愛は「なんで理由を聞かなかったの?」と聞くと「実はこの話は結衣香本人が話してたんじゃなくてその場面を見た子の話なんだよね。だから聞きづらくてさ」と言った。それ以外には知っていることがなく互いに帰ろうとすると三島さんは私に抱きついた。「また遊ぼうね」と泣きながら。「うん!」と元気に答えるとニコニコしながら帰っていった。


すると次の日、三島さんから朝早くに連絡があった。それは突然すぎる話だった。


彼氏の居場所が分かったと。


三島さんはあの後大学の友だちたちに連絡をしてくれてなんとか私の勤め先を突き止めたそうだ。

そして話を聞いていくと彼氏のことを知っている人がいて、居場所を教えてくれたということで私達はそこへ向かうことにした。向かう電車の中、愛はすごく静かで、緊張しているのかなと思った。だって向かう先は、


着いた。そこには拘置所が建っていた。中へ入り面会の許可を取ることにしたが先に行った愛がすぐに話しをつけて来てくれてすぐに入れた。


そこには男の人が一人、ガラス越しに座っていた。「愛、」彼は私の名前ではなく先に愛の名前を読んだ。

「兄さん連れてきたよ。」


最初目覚めたときなんかよりももっと混乱した。「どういうこと!?」そう尋ねると、「一から話すよ。」と愛は言った。「ここにいる翔は私の兄なんだ。あなたの彼女でもあって。」私は会釈をして話を続けてもらった。「兄さんが拘置所にいるのは殺人未遂でね。引っ越し先にも付いてきてついには結衣香に手を出したストーカーを鈍器で殴っちゃたんだ。それで話はまとまるはずだったんだけどね、」


「俺が話す。」私の彼氏、北原翔は話し出した。「でもな、その男はストーカーじゃなくてお前の浮気相手だったんだ。」そう言われ私は驚きを隠せなかった。彼は続けた。「ストーカーというのはお前の友達がたまたま見たところがそう見えて広がっただけで実際はそうじゃなかったんだ。まあお前らからすれば説明にもなるし都合が良かったんだろうがな。」私は何も言えなくなった。呆然としたまま面会時間が終わり帰ることとなった。その後、愛とは一言も話せなくなった。


「ふぁぁ」朝起きると驚いた。昨日の話の影響が強かったんだろうか、記憶が丸々戻っていた。

愛に急いで報告すると「じゃあ一回兄さんの家に行こうか。荷物もあるし。」と言った。

しばらく電車に乗って駅から五分くらい歩いただろうか。その家は海辺にあるきれいなアパートだった。

着いて荷物をまとめているとき。「そういえば記憶ってなんでなくしたんだろ。そこの部分だけ記憶がないんだよね。」と私が言うと愛は言った「あのときは日和っちゃってさ〜」え、それって。


「ドンッ」


鈍い音が響いた。真実に気づく。三島さん、思えばすごく仲の悪いひとだったな。失った記憶の先には、考えるだけでもぞっとする未来が待っているんだと分かった。この未来を明日の私は気付けるだろうか。それとも明日は来ないだろうか。そんなことを思い、ゆっくり目を閉じた。

アドバイスや間違っている点があれば教えてくださると助かります。

もちろん感想を楽しみに待ってるからねっ★

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[良い点] ワクワクとさせるストーリーでよかった 情景がすぐ浮かぶような文章の書き方で、読んでいて楽しかった。 [気になる点] 読者に考えさせたい部分と考えさせなくていい部分をしっかり分けたほうが…
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